獣医学部生執筆
皮膚は体の中でもっとも大きな臓器で、多くの大切な機能を果たしています。たとえば体の表面を被って保護することだけでなく、体内の水分や温度を調節することや、病原体の侵入を防ぐことも皮膚の大切な役割です。また、痛みや温度、圧力を感じる器官でもあります。その皮膚が様々な原因で刺激されると、皮膚は炎症を起こして痒みや抜け毛を引き起こし、正しい機能を果たせなくなります。また、そのとき傷ついたところからウイルスや細菌が侵入しやすくなるのです。
皮膚病には「疥癬症」「ノミアレルギー性皮膚炎」「皮膚糸状菌症」「膿皮症」「脂漏症」「食物アレルギー」「脱毛症」などがあり、原因としては、免疫力の低下に伴う「寄生虫」「真菌」「細菌」の感染や「アレルギー」「食生活」「ストレス」「紫外線」などが挙げられます。
まぎらわしいものとして、春から夏にかけて猫は抜け毛が多くなりしきりに体を舐めることがありますが、それは皮膚病というより季節的な換毛と考えられます。寒い時期に保温の役割を果たしていたたくさんの毛が、暖かくなると必要な量を残して抜け落ちるためです。
皮膚病は直接猫の命にかかわるというわけではありませんが、進行するほど治療には長期間を要し、治療困難になることさえあります。合併症を防ぐため、そしてなにより不快さを取り除いてあげるためにもなるべく早い対処が大切です。
猫の種類によって罹りやすい皮膚病というのもあります。たとえば、ペルシャ猫は皮膚糸状菌症に、シャム猫は食物アレルギーに、アビシニアンやソマリは脱毛症になりやすいと言われています。
また、一般的に免疫力の低い子猫や高齢猫、毛玉のできやすい長毛種の猫、自身で十分なグルーミングのおこなえない肥満の猫では皮膚病になる傾向が高くなります。
猫が皮膚病になると、「痒み」「抜け毛」「皮膚の赤み」「吹き出物」「フケが多い」「体が臭い」といった症状がみられます。このような症状が単独あるいはいくつも重なって、突然あるいは徐々にあらわれてきます。
これらの症状は飼い主の目で見て気づいてあげられるものも多いため、普段から様子の変化に気を配りましょう。また、猫の皮膚に起こる異常の多くは人にも病気を起こす可能性があるため、十分な手洗いや他のペットへの配慮など注意が必要です。
炎症を起こしている部分には軟膏やクリーム、パウダーなどが処方され、痛みが強い場合には抗炎症剤を用いて炎症を沈めます。抗生物質の飲み薬や軟膏を用いることもあります。また、寄生虫が原因のものに対しては、虫の駆除薬や殺菌液を用いて体から虫を取り除くことがメインとなり、同時に寄生虫用の薬剤で生活環境の消毒もおこないます。そして、ストレス性のものや食物アレルギーに対しては、まず原因を取り除く方法を考えます。
これらの治療法はいずれも比較的安価なものが多いのが特徴です。しかし、皮膚病が進行すればするほど長期間の治療が必要となり高額になる場合もあります。予防のために、定期的にノミ・ダニ駆除薬を投与する、衛生的に飼育する、室内飼いに徹するなどの方法が有効です。
※この記事は麻布大学獣医学部のご協力により作成いたしました。
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