獣医師執筆
森のいぬねこ病院グループ院長
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属
西原 克明(にしはら かつあき)先生
夏になると、特に注意していただきたいのが、キャットフードの管理です。
ほとんどのドライフードは、開封後も常温保管が可能ですが、保管方法によっては、早くに劣化してしまいます。そしてその劣化の一番の原因となるのが、暑さや湿気です。
一般的に猫は、食べ物に対する旨味を『脂肪』で感じることが多いとされています。そのため、キャットフードの多くは猫に美味しく食べてもらうために、表面に油脂をコーティングしています。
しかし、油脂は空気に触れると酸化してしまい、その酸化した油脂が体にとって非常に有害となり、猫の体調を崩す原因となります。そして、その酸化反応は、気温が高ければ高いほど、早く進んでしまいますので、夏場の高温時には、キャットフードの劣化が進みやすくなるのです。
また、湿気が多い時には、キャットフードが水分を含んでしまい、非常に雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。もちろん雑菌繁殖したキャットフードは、食中毒など猫にとって大変危険なものとなります。
これら気温や湿気対策として、キャットフードには添加物が使用されています。
しかし、近年のプレミアムフードのブームによって、添加物の使用を最小限に抑えてあるフードも多く、その場合は、やはり酸化や雑菌繁殖が起こりやすくなってしまいます。そのため、温度湿度の管理を含めた、より厳密な品質管理が必要になります。
以上のことから、夏場はなるべく短期間で使いきれるサイズのキャットフードを利用するようにしてください。
普段の飲み水もやはり暑い時期は雑菌が繁殖しやすくなりますので、こまめに取り替えてあげるようにしてください。
猫は一ヶ所よりも複数ヶ所に水飲み場があった方が、よりしっかりと水分摂取ができるため、尿石症や慢性腎臓病などの管理で、おうちの中に複数ヶ所の水飲み場を用意されている方も多いと思います。
そうすると、ついついお水の取り替えを忘れてしまったりすることもありますが、やはり夏場は衛生上、最低でも1日2回、できれば1日3回、お水を取り替えるようにしてあげてください。
夏は猫も熱中症や衛生上の問題が起こりやすくなります。特に真夏だけでなく、梅雨時期や初夏、初秋など、気温がそこまで上がらない時期も注意が必要です。
日頃からの温度や湿度の管理、キャットフードやお水の衛生管理を徹底し、夏場のトラブルを未然に防ぐようにしてあげてください。
執筆者
西原 克明(にしはら かつあき)先生
森のいぬねこ病院グループ院長
帯広畜産大学 獣医学科卒業
略歴
北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。
所属学会
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会
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