獣医師執筆
日本動物愛護協会 常任理事 獣医師 須田沖夫先生
犬のワクチンは伝染病、特にウィルス性感染症の予防のために開発されました。
感染症は寄生虫(内部、外部)、細菌、リケッチア、ウィルスなど多種多様な病気です。
犬ではウィルス性疾患の一部にワクチンが開発され、利用されています。
50年前はウィルスに感染し、発病し、治療しても死亡する個体が多く、そのため平均死亡年令も若かった。現在、寄生虫の駆虫剤、細菌の抗生物質、ウィルスのワクチンの種類の増加と普及などで30年間で死亡年令は3倍くらい延長しています。
接種時期は、犬の場合母乳が免疫力を持っている場合、初乳、母乳を飲んでいると仔犬は2ヶ月令から免疫力が低下するので、生後2、3、4ヶ月にワクチン接種をすることが必須です。その後も1年くらいで免疫力は低下するので、毎年のように接種したほうが安全です。また、中高年令になると特に免疫力が低下するので、毎年接種した方が安心安全です。
散歩、美容、トリミング、ドッグラン、ホテル、旅行などは各種感染の可能性が高まりますので、ワクチンや駆虫剤の投与を定期的に実施することが犬にとって大切なことです。
感染症に感染し発症してからでは治療に時間も経費もかかり、後遺症を起こしたり、治らずに死亡することも多くありますので、ワクチン接種を定期的に、確実に実施した方が人と犬との関係は良くなります。
ワクチンメーカーやペットフード協会の資料によると、日本の犬猫のワクチン接種率は欧米に比べ低率で、犬は25%、猫は10%との報告があります。
犬は7疾患にワクチンがあります。
犬ジステンパーは高熱を発したり、元気、食欲がなくなり目ヤニ、鼻汁の呼吸障害、嘔吐、下痢の胃腸障害、さらに脳神経などの後遺症も見られる死亡率の高いウィルス感染症です。
犬パルボは激しい嘔吐、下痢から食欲がなくなり急激な衰弱し、脱水症状が進むと短期間に死亡します。吐物、下痢便から伝染性の強いウィルスを排泄するので、死亡率の高いウィルス感染症です。
犬伝染性肝炎は発熱、腹痛、嘔吐、下痢が見られ、食欲、元気がなくなり、目が白く濁る事もあります。子犬の場合、症状もなく突然死亡することもあります。
犬アデノウィルス2型感染症は発熱、食欲不振、クシャミ、鼻水、乾性の咳や肺炎にもなる呼吸器疾患です。別のウィルスの混合感染により症状が重くなると、死亡率が高くなるウィルス感染症です。
犬パラインフルエンザウィルス感染症は風邪と同様の呼吸器症状が見られ、二次感染が起こると症状が悪化し、死亡することもある伝染性の強いウィルス感染症です。
犬コロナウィルス感染症は仔犬の場合、嘔吐と重度の水様性下痢を起こし、重度の脱水症を起こす。成犬の場合は軽度の胃腸炎の場合が多いが、パルポなどと混合感染すると重度化することが多いウィルス感染症です。
犬レプトスピラ感染症はレプトスピラ症に感染しているネズミ、野生動物や犬の尿にレプトスピラ菌がいるので、その尿で汚染された水や土を介して、口や皮膚から哺乳類(人間も含む)に感染します。
発熱、嘔吐、出血、脱水を起こし、元気や食欲が減退し、重度化すると死亡します。
レプトスピラはいくつかのタイプがあり、イクテロヘモラジーとカニコーラの2種がワクチンに入っています。
以上の症状から解るように嘔吐、下痢便、鼻汁、クシャミ、目ヤニ、尿など感染している犬猫の排泄物の中に感染源のウィルス等が混じっているので、上記の物に触れたり、症状のある動物に接触をしないようにし、さらに手や服なども十分に洗浄、消毒が必要です。
ワクチン接種は健康状態が良く、妊娠、授乳期でなく、寄生虫感染のない時に投与する。
副反応として発熱、元気・食欲減退、下痢、嘔吐や注射部位の痛み、発熱、かゆみなどみられることもあるので接種後2~3日は安静に。
アレルギー反応で顔面腫脹、掻痒は数時間後、アナフィラキシー反応ショックは30分後以内にまれにみられます。
ウィルスには治療の特効薬がないので、予防のため上記の病名のワクチンを定期的に、確実に接種することで飼犬、そして飼い主ら人間への感染・発症予防ができます。
動物病院に相談し、家庭犬の健康維持に努めることが飼い主さんの責務です。
*公益財団法人 日本動物愛護協会 常任理事 獣医師 須田沖夫先生 に記事を作成して頂きました。
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