動物看護士・トリマー執筆
執筆者:山之内さゆり先生
動物看護士、トリマー
プードルがなりやすい皮膚疾患のひとつに指間炎があります。指間炎は比較的すぐに治りやすい皮膚疾患ではありますが、ときになかなか治らないと悩み心配する飼い主さんがいることも。
そこで、今回はプードルの指間炎がなかなか治らないのはなぜなのか?その原因と万が一のとき市販の軟膏は使えるのか?についてご紹介します。
プードルの指間炎を治療しているにもかかわらずなかなか治らないと、どうしてなおらないのか?治らない原因は何なのか?すごく心配になりますよね。
少しでも良くなっていればいいのですが、治る様子が見られないとかゆみで舐めている姿にかわいそうでいたたまれなくなります。
しかし、なぜ治療しているのに指間炎がなかなか治らないのか?その原因としていくつかのことが考えられます。
指間炎だけを見るとその場所さえ治療したら大丈夫と思いがちですが、実はそうではなく指間炎を起こしている原因が別にあったりします。
その原因のひとつがアレルギーです。アレルギーには食物アレルギーやアトピー性皮膚炎といったものが多くの原因としてありますが、指間炎を起こす原因として特にみられるのが食物アレルギーです。
もし食物アレルギーだった場合は、食事療法を行うことで薬に頼らなくても症状が改善しかゆみに悩まされることなく過ごせます。
また、食物アレルギーでない場合でも食事アレルギーに対応して作られた処方食は予防としても使うことができ、しかも皮膚のことを考えて作られているので日常食にするのもおすすめです。
指間炎を起こす原因で小さなケガも多く、一見気付きにくいようなケガや目には見えないようなケガがきっかけとなって、舐めたり雑菌が入ったりして指間炎を起こすことがあります。
ただ、動物病院で指間炎を起こしたら抗生剤の薬を処方してもらえるはずなので、ケガによる菌の繁殖などは防ぐことはできます。
しかし、それでも治らない場合は薬を塗ってない場所(気付ていない場所)に傷があり、そこを気にして舐めることで指間炎が治らないといったことが起こっているかも知れません。
もし治りが遅い場合は指間炎が目立っているところだけではなく、足の指や肉球の間など隙間なくくすりを塗ってみましょう。
トリミングに連れていくと必ず足裏の毛をカットしますし、プードルは足バリ(足先の毛をすべてカットする鳥足のような状態)をすることもありますよね。
しかし、その際に使用するバリカンでバリカン負けを引き起こし指間炎になってしまうこともありますし、すでに指間炎になっているのにバリカンを当ててしまったことで悪化することも少なくありません。
ですから、指間炎になっていたりバリカンをかけると足を舐めるといった様子が見られるのであれば、バリカンではなくハサミで可能な限り短くカットするといったところにとどめておくことをおすすめします。
せっかく薬を塗ってもすぐに舐めてしまうなどして取れてしまっては意味がありません。一度薬を塗ったら5分間は舐めたりして薬が取れないようにし、しっかり浸透させるようにしてください。
塗っても気にしない子は気にしませんが、たいていの子は気にして舐めてしまうので舐めない工夫が必要になります。
プードルなら小さいのでくすりを塗った後は抱っこしてあげるといいでしょう。また、寝ている間に薬を塗ると気付かれないので舐める心配もなくおすすめです。
指間炎は適した治療をすることで比較的すぐに治すことができる皮膚疾患ですが、たとえ適した処置や治療をしたとしても、プードル自体の免疫力や抵抗力が下がっていたらなかなか改善されないこともあります。
もちろん、使ている薬や原因に対して治療・対処が正しければ徐々に改善されていくのですが、その改善スピードが遅くなかなか治らないといった印象に。
しかし、免疫力や抵抗力が高いとそれだけ薬に対する反応も良く自己治癒能力も働いて治りも早くなるので、普段から免疫力・抵抗力を高めてあげることも大切です。
免疫力・抵抗力を高める方法としておすすめなのが、専用のサプリメントを使って毎日の食事と一緒に与えてあげること。
サプリメントにもいろいろありますが、動物病院で相談してみてもいいですし高品質のアガリクスを使ったサプリメントを試してみるのもいいですね。
サプリメントは薬ではないので特別な疾患でない限り飲み合わせなどを気にすることもありませんし、比較的手軽に与えることができます。
ただ、薬ではない分効果の実感がすぐに出るわけではありませんので、即効性は求めず「なんとなく以前よりも調子が良い気がする」と感じたら効果が出ていると思ってもらってもいいでしょう。
プードルが指間炎になったらまずは動物病院に行くことが大事です。しかし、どうしてもすぐに行けなかったりすると、せめて今よりひどくならないように自宅で対処できる方法を知りたいですよね。
そして、その方法のひとつとして市販の軟膏を塗って症状を緩和・抑制しようといった考えですが、市販の軟膏を使うことはあまりおすすめはできません。
というのも、動物病院で処方されている薬は基本的に動物専用の薬で体重や症状に合わせて調合しているものですが、人間用となると動物に使ってはいけない成分が含まれている場合もあり安全とは言えないからです。
しかし、どうしても使いたいのであれば幅広い万能薬としておなじみのオロナインならまだ使ってもセーフです。
オロナインの主成分はクロルヘキシジングルコン酸という抗生物質ですので、指間炎による雑菌の繁殖や二次感染といったものを抑えることができます。
また、子供からお年寄りまで幅広く使えて成分自体も強いものではないので、一時的な対応策としては使ってもいいかも知れません。
ですが、あくまでもすぐに動物病院に行くことができない場合の一時的な対処法としてなので、決してオロナインで完治させようということは考えないようにしてください。
先述したように、指間炎の原因はいろいろありもしその根本となる原因に対処しなければ意味がありません。
根本の原因があることで何度も指間炎を繰り返してしまうだけでなく、オロナインで完治させようとした結果原因自体が悪化することも否定できないため、必ず動物病院で診察・治療をしてもらうようにしましょう。
プードルはあまり皮膚が強くない犬種なので、指間炎に悩まされている飼い主さんは少なくありません。
そして、一見ただの舐めすぎで指間炎になったように見えてもその裏にはアレルギーなど別の原因が隠れていることも多いため、何度も繰り返したりなかなか治らないといったときは一度大元の原因がないか探ってみましょう。
また、市販薬はあくまでも人間用であり応急処置にすぎないので、使うのであれば指間炎を発症しすぐに動物病院に行けないときの一時的な対処として使ってください。
そうしたうえで、普段から免疫力・抵抗力を高い状態にしてあげれば指間炎の治りも早く、病気にもかかりにくい元気な体でいられるので、病気に悩まされない毎日を過ごせるようにしましょう。
執筆者:山之内さゆり先生
トリマー、動物看護士
約10年間動物病院でトリマー兼動物看護士として勤務。
現場で得た知識と経験を情報として発信し、飼い主さんとペットが幸せに暮らせるためのお手伝いをしていきたいと思います。
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