動物看護士・トリマー執筆
執筆者:山之内さゆり先生
動物看護士・トリマー
胴長短足のダックスフンドはヘルニアになりやすいということをよく聞くと思いますが、実は指間炎にもなりやすい犬種でもあります。
指間炎は正しく処置すればすぐに治る皮膚疾患ですが、なかにはなかなか治らず心配と不安を抱えている飼い主さんも少なくありません。
そこで、今回はダックスフンドの指間炎が治らない原因と、万が一のとき市販の軟膏で何が使えるのかについてご紹介していきます。
ダックスフンドは比較的皮膚が弱い傾向にあり、さまざまな皮膚トラブルを起こしやすい犬種です。
特にアトピー性皮膚炎や食物アレルギー・皮膚の乾燥といったトラブルが多く悩まされているダックスフンドは多く、そのひとつに指間炎もあります。
正しく処置・治療すればすぐに治る指間炎ですが、なかなか治らないと悩む飼い主さんはもしかしたら別の原因があるのかも知れません。
そもそも使う薬が合っていなければ改善するはずもなく、場合によっては悪化することもあります。
もし薬を使って2~3日様子をみても改善している様子が見られなければ、改めて動物病院へ連れて行くようにしましょう。
指間炎は肉球の間や指の周りにかゆみや炎症が起こるものですが、爪が脱臼していたり伸びすぎて食い込んでいたりなど、爪の異常が原因で起こしている場合があります。
もし爪の周りに症状がみられる場合は爪に異常はないか確認してみましょう。
塗り薬を使って治療していても薬が浸透する前に舐めてしまえば意味がありませんし、薬を塗っていないときでも舐めている時間が多ければやはり治りは遅くなります。
塗り薬は5分ほどで浸透するまで最低でも5分は舐めてしまわないように様子を見て、症状がひどい場合はエリザベスカラーを使うなどして舐めない工夫をしましょう。
エリザベスカラーは動物病院で買うことができますし病院によっては言えば貸してくれるところもあります。
また、クリアファイルを使って手作りすることもできるので、見ることができない間も患部を舐めてしまわないようにしましょう。
ダックスフンドの指間炎を引き起こす原因のひとつとしてアレルギーがあります。特に食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など患っているダックスフンドは多く、それらのアレルギーを治療しなければなかなか改善されません。
もし、指間炎だけでなくワキやお腹、口周りなど他にかゆみや炎症・湿疹など異常がないかを見てみて、そうしたものがあれば合わせて治療するようにしましょう。
足の湿気が多い状態だと雑菌が繁殖しやすく指間炎を発症・悪化させてしまうことがあり、当然治療中であっても治りが悪くなってしまいます。
ここでよくあるのが、足を清潔にしようとお散歩から帰ったら足を洗ったり、濡れタオルやウェットティッシュなどを使って足を拭くこと。
洗ったり拭いたりすること自体は悪くないのですが、問題はその後です。
足を洗う、ウェットティッシュや濡れタオルで拭く、といったことをしたあとは必ずドライヤーで乾かしたりタオルドライをして水気を取らなければなりません。
この後のケアをしっかりしないがために、指間炎の治りが悪くなったり悪化したりといったことが起こります。
スムースのダックスフンドであれば足の裏の毛を気にする必要はありませんが、ロングのダックスフンドは足の裏の毛をカットする必要があります。
ただし、指間炎のときに足裏の毛をカットする場合はバリカンではなくハサミでカットするようにしましょう。
バリカンを使ってしまうと炎症を起こしている皮膚に刺激がいったり、バリカン負けを起こしやすいためおすすめできません。
また、指間炎になっていない場合でもバリカンの刃で傷がついてしまうと、その傷を気にして指間炎になることもあるため注意しましょう。
ダックスフンドが指間炎になってしまったら動物病院で適切な薬を処方してもらうのが大前提ですが、動物病院にすぐ連れて行けない場合はせめて市販の軟膏を使って一時的でも処置してあげたいと思いますよね。
ただ、市販の軟膏となると当然人間用の薬になるため安易になんでも使うことはおすすめできませんし、場合によっては悪化させる可能性もあることを念頭に置く必要があります。
そのことを十分に注意・理解したうえで使うのであれば使ってもらいたいのですが、指間炎の一時的な応急処置として使うならオロナインが使用できます。
オロナインにはクロルヘキシジングルコン酸という抗生物質が主成分として配合されていますが、これが指間炎からくる雑菌の繁殖や二次感染を抑えてくれます。
オロナインであればどの家庭にもだいたい置いてありますし、強い薬ではないため一時的な応急処置として使用する分には問題ありません。
また、かゆみや炎症を抑えようとステロイドの入った市販の軟膏を使うのはおすすめしません。
ステロイドは抗炎症成分としては優秀なので強い痒みがあるときは重宝するのですが、ステロイドと一口に言っても強さに違いがあります。
そして、その強さを調整して一般的に処方されるものなので、独断で使うのは体への影響としてよくないのです。
ですから、一時的に指間炎をよくしてあげたいといった意味で使うのであればオロナインにとどめておいて、必ず動物病院に連れていくようにしましょう。
ダックスフンドの指間炎の応急処置としてオロナインを塗った後はもちろん、動物病院で処方された薬を塗った場合も必ず5分間は薬を舐めたりして取れてしまわないように注意してください。
犬は何かいつもと違う感じがすると気にするので、どうしても薬を塗ったりするとその部分を舐めてしまいます。
舐めること自体炎症を悪化させるのでよくないのですが、まず薬が浸透する前に舐めて薬が取れてしまうとせっかくの薬の意味がありません。
もちろん、飼い主さんもこの部分は気にしている人が多く軟膏を処方した際に「舐めてしまうんですけどどうしたらいいですか?」「もし舐めてしまったら薬が浸透しないいんじゃないですか?」といった質問はよくいただきます。
しかし、薬は5分で浸透するので5分だけしのげばあとは舐めてしまっても問題ありません。
また、舐めたことでダックスフンドの体に異常が出る心配があるのでは?といった不安をもつ飼い主さんもいらっしゃいますが、この点に関しては少量なので特に問題はないと言えます。
オロナインは赤ちゃんからお年寄りまで使えるほどやさしい量で配合されているので、多少舐めてしまっても心配する必要はありませんが、もし人間用の強い薬を独断で使ってそれを舐めてしまったとなると大丈夫とは言い切れません。
確かに、動物病院で処方されている薬にも人間用の薬を使うことがありますが、それは体重と症状に合わせて適正量を獣医師が配合しているからできることです。
しかし、人間用を動物にも使っているから大丈夫と素人判断で使ってしまうと、成分が毒となって嘔吐や下痢など体に異常をきたしたり、悪化させてしまう可能性もあります。
また、ダックスフンドの指間炎だからこの薬!と単純に考えるのではなく、その時の身体の状態や基礎疾患の有無によっても変わってくるため、必ず動物病院に連れて行って診察をしてもらい、適した軟膏や薬を処方してもらうようにすることが大事です。
ダックスフンドの指間炎が治らないとすごく心配になりますし、かゆそうに舐めていたり痛そうにしている様子を見るとかわいそうでたまりませんよね。
特に動物病院で診察して薬をもらったはずなのになかなか治らないとなると、なんで治らないのか原因が分からず、さらに不安になるのも当然です。
すると、薬が合わないんじゃないか?と試しに市販の薬を使ってみようと思ったりすることもあるかも知れませんが、そうではなく治らないと感じた時点で動物病院に改めて連れて行って診てもらうようにしましょう。
そうすれば、なぜ治らないのか原因の究明と解明にもつながりますし、原因がわかれば適切な薬を処方しなおすこともできます。
また、市販の軟膏を使うのであればすぐに動物病院へ行けないときの一時的な応急処置としてオロナインを使うことはできますが、継続して使うことはおすすめしませんので注意してくださいね。
執筆者:山之内さゆり先生
トリマー、動物看護士
約10年間動物病院でトリマー兼動物看護士として勤務。
現場で得た知識と経験を情報として発信し、飼い主さんとペットが幸せに暮らせるためのお手伝いをしていきたいと思います。
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