動物看護士・トリマー執筆
執筆者:山之内さゆり先生
動物看護士・トリマー
マルチーズは皮膚が弱い犬種として結構有名だったりしますが、皮膚疾患のひとつとして指間炎にも悩まされやすい傾向にあります。
指間になると炎症やかゆみで舐めることが多くなり、それが原因でさらに悪化してしまうことも…。
そこで、今回はどうしてマルチーズが指間炎になってしまうのか?その原因と治療・予防法についてお教えしたいと思います。
サラサラな毛のタイプもいればふわもこな毛のタイプもいるマルチーズですが、どちらの毛のタイプでも真っ白で雪のような姿がとても愛らしいですよね。
しかし、指間炎になるとかゆみで足先を舐め続けてしまうので、真っ白の毛が茶色に変色してしまったり、ひどいと脱毛してしまうこともあります。
では、なぜマルチーズは指間炎になってしまうのか?考えられる原因をいくつかご紹介していきましょう。
定期的な爪切りやお散歩で爪が短い状態を保っていればいいのですが、爪切りができなかったりお散歩の時間が少なかったりすると、あっという間に爪は長くなってしまいます。
爪が長くなるとフローリングで滑りやすくなりますし、しっかり足を踏ん張ることができずに関節を痛める危険性が高くなるだけでなく、爪を脱臼してしまう可能性も少なくありません。
爪が脱臼してしまうと根元から爪が抜けるような状態になるのですが、完全に爪が取れてしまう場合と中途半端に取れてしまう場合とあり、その取れた部分が痛くて舐めてしまいます。
すると、患部の炎症や雑菌の繁殖などが起こり指間炎を引き起こしてしまうのです。
また、爪の脱臼とまではいかなくても爪が伸びすぎることで指や肉球に食い込んでしまい、同じように指間炎なる場合もあります。
いずれにしてもただ単に爪が長いというだけではなく、長いことでさまざまな危険が起こる可能性が高くなることを十分理解するようにしましょう。
マルチーズの指間炎で多い原因のひとつとして、足裏のケガや小さな傷といったものがあります。
お散歩のときに何かを踏んでしまいそれが傷となって足を気にするようになったり、トゲのようなものが刺さって気にして舐めるなどです。
お散歩など日常生活でできてしまった傷やケガはどうしようもないかも知れませんが、犬用のソックスや靴も売られているので、小さい頃から慣れさせておくと対策になるので良いと思います。
お散歩以外でもトリミングの際に足裏バリカンや足先の毛を全部剃る足バリをした際に、バリカンが深く入り過ぎて傷つけてしまうことがあります。
また、傷ではなく純粋にバリカン負けを起こすことで皮膚が炎症を起こし、舐めて悪化し指間炎になるといったことも少なくありません。
バリカンの傷についてはトリマーの腕によるところが大きいですが、バリカン負けについては体質的なものも関係してきます。
もし、トリミングでバリカンを使った部位を舐めるなど気にしている様子があれば、今後はバリカンは使用せずハサミでトリミングしてもらうことをおすすめします。
マルチーズはストレスを抱えると足を執拗に舐めてるといった行動に出ることがあります。
ストレスの場合はお散歩不足や生活環境の変化など、肉体的ストレスや精神的ストレスの両方の面でストレスとなっている原因を突き止めて、ストレスを解消してあげることが大事です。
ただ、何がストレスの原因となっているかをすぐに突き止めるのは難しいと思いますので、もかしたら?といった小さな可能性から少しずつ試してみるようにしましょう。
マルチーズをお散歩に連れて行ったときや足が汚れてしまったときなど、多くの飼い主さんは部屋の中を汚さないためとマルチーズの衛生管理のために足を洗ったり濡れタオルで拭くということをします。
それが悪いわけではないですし清潔に保つことはとてもいいのですが、問題は洗ったり濡れタオルを使った後です。
足の裏や指の間が湿ったままということは雑菌が増えやすい環境であることを意味するため、必ずドライヤーを使って湿りをしっかり取る必要があります。
もし、ドライヤーを使っている時間がない、難しくてできないということであれば塗れていないタオルでホコリを落とす程度にするか、ウェットティッシュにとどめてあまり湿らせず、すぐに乾くような状態にしてあげるといいでしょう。
指間炎を引き起こすアレルギーとして考えられるものが、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎といったものです。
食物アレルギーはアレルゲンとなる食べ物(タンパク質)に体が反応することで、かゆみ・炎症・湿疹などアレルギー症状を起こすといったものです。
また、アトピー性皮膚炎はダニやハウスダストなど皮膚が外部刺激に非常に弱いとなる状態であるがために、湿疹・炎症・かゆみといったものを引き起こします。
このアレルギーを解決するためには、アレルゲン物質を取り除くということがまず第一になるのですが、食物アレルギーであれば比較的簡単に解決することができます。
というのも、食物アレルギーであれば動物病院で処方される食物アレルギー専用の処方食を与え、そうでないドッグフードやおやつは与えないといった『アレルギーとなる可能性のある食事の排除』をすることで可能となるからです。
しかし、それに比べてアトピー性皮膚炎は薬でコントロールをしながら皮膚のバリア機能を高めつつ、アレルゲンとなっている可能性のあるものを排除して生活環境から改善していく必要があります。
そのため、症状の大きさにもよりますが症状がゼロという状態にするにはなかなか大変というのが現実です。
ただ、体質改善・生活環境の改善をすることで症状が軽減・改善され薬を使うほどではないといった状態になることも多いのも確かです。
マルチーズの指間炎は小さな傷やケガ・アレルギーやストレスなどいろんなことが原因となるので、治療法もその原因に合わせた方法を取る必要があります。
まずは指間炎の炎症を抑えてかゆみを取ってあげることが大事。そのために抗炎症剤を使用するのですが、使う薬は外用薬だったり内服薬だったりその時の症状に合わせて違ってきます。
マルチーズは指間炎になるとかゆみなどで気にして舐めてしまうので、口の雑菌などばい菌が入って二次感染を起こす可能性もあります。
また、菌が増殖してさらに悪化することもあるため抗生剤を使ってそうした菌による悪化を防ぐのです。
抗生剤も外用薬なのか内服薬なのか?それとも両方なのか?といったことは、症状などによって違ってきます。
専用の薬用シャンプーを使って炎症を鎮めたり殺菌をして悪化を防ぐといったことも有効ですが、薬用シャンプーというとシャンプーなのでどうしても簡単に考えがち。
特に薬用シャンプーという名前で市販でも売られていることがあり、「これでもいっかな?」とつい安さと手軽さを重視してしまう飼い主さんも少なくありません。
しかし、薬をシャンプーという形にしただけで成分は薬なので独断で使用することはもちろん、市販で売られているものは薬ではなくその成分をちょっと混ぜただけのものなので、下手に手を出すと指間炎の症状を悪化させてしまいます。
そうならないようにするためにも、必ず診察のうえ処方してもらった薬用シャンプーを正しく使用するようにしましょう。
指間炎の原因となる疾患として食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を紹介しましたが、もしそうした疾患を患っているのであれば合わせて治療する必要があります。
どんなに指間炎だけを治療したとしても、そもそもの部分が解決できていなければすぐに再発し完全に治療することはできません。
雨漏れをしているのに屋根を修理せず天井だけガードしても意味がないように、目先の治療だけをしても意味がないのです。
ですから、必ず大元となっている原因を治療してその結果指間炎も落ち着くというふうにしてあげてください。
マルチーズは皮膚が弱い犬種なので、比較的指間炎にもなりやすい傾向があります。
そのため、指間炎を予防する方法としておすすめなのが免疫力・抵抗力を上げてあげることです。
もちろん、ストレスやお散歩・トリミングのときにできてしまう可能性のある傷やケガといったものもできる限り防ぐ必要はありますが、免疫力・抵抗力といった体の機能自体を強くしてあげることで、指間炎の症状の悪化や原因となる病気の発症率を下げることが可能です。
また、もし指間炎の原因となる病気にかかってしまっても免疫力・抵抗力が高ければ治りも早くなります。
では、どのようにしたら免疫力・抵抗力をアップすることができるのかご紹介しましょう。
体は食べたものでできている、健康な体づくりは食事から、といった言葉を聞いたことがある人は少なくないと思いますが、健康で元気に過ごすためには食べるものが大事なのはマルチーズも同じです。
ですから、元気で強い細胞を作り免疫力・抵抗力をあげるためにも、まずは毎日の食事を気を付ける必要があります。
ただ、ドッグフードと一口に言ってもいろいろな種類があり、どれを選べばいいのかわからないという飼い主さんは少なくありません。
そのため、いくら質の高いもの良質なものを選びましょうと言われても、どこでそれを判断すればいいのか分からないというのが実状だと思います。
しかし、実は簡単に良質なドッグフードか質の悪いドッグフードなのかを見分ける方法があるのです。
それが、1kg当たりの値段と原料の表示内容です。一般的に高いものは品質が良く安いものは品質が悪いと言いますよね。
それが目に見えて影響しているもののひとつがドッグフードなのですが、質の高い原料を使っているドッグフードは値段が高く、質の悪い原料を使っているドッグフードは値段も安くなります。
また、質の悪い原料を使っているドッグフードは多くの場合人間が食べることができないようなものを使っているため、原料の表示もあいまいな表示にしてあることがほとんど。
例えば、良質なタンパク質を使っていれば豚肉・鶏肉・大豆・サーモンなど明確な表示がされていますが、これが質の悪い原料になると肉類・鳥類といったように曖昧な表示となります。
このことを踏まえてドッグフード選びを意識すれば、少なくとも粗悪なドッグフードを選んでしまうといったことはなくなるでしょう。
毎日の食事にプラスワンでサプリメントを使うのもおすすめです。
サプリメントにもいろいろな種類がありますが、体の免疫力・抵抗力を高めてくれることを目的としたサプリメントを選びます。
そして、サプリメントは食事と言われているように、こちらも良質な原料を使ったものを選ぶようにしましょう。
サプリメントを選ぶ際は動物病院で相談してみるのもいいですし、自然に育てられ多くの栄養素を含んだアガリクスのサプリメントもおすすめです。
また、ドッグフードを変えることができない場合や合ったドッグフードを探すのが大変といった飼い主さんも、サプリメントだけでもプラスするだけで大きく違ってくるので、まずはサプリメントから始めてみるのもいいと思います。
今回、マルチーズが指間炎になる原因と治療・予防法についてお伝えしました。
そして、マルチーズが指間炎にならないようにするためには物理的な刺激から足を守るだけでなく、毎日の食事やサプリメントを利用して免疫力・抵抗力をあげてあげることがとても重要です。
いきなり全てのことを買えるのは難しいし大変だと思いますが、できることから少しずつ意識していくだけでも違ってくるので、ぜひ試してみてください。
執筆者:山之内さゆり先生
トリマー、動物看護士
約10年間動物病院でトリマー兼動物看護士として勤務。
現場で得た知識と経験を情報として発信し、飼い主さんとペットが幸せに暮らせるためのお手伝いをしていきたいと思います。
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