獣医学部生執筆
たいていの人にとっては何でもなくても、特定のものを食べるとじんましんがでたり、吐いたりしてしまう人がいます。これは食べ物へのアレルギーによるものです。本来は体に害のあるものを取り除くはたらきをする「免疫反応」が、とくに害のないものに対しても過剰にはたらいてしまうために起こります。人間と同じように、犬や猫などのペットも食物アレルギーになることがあります。
食物アレルギーでは、食べ物のなかに含まれる成分に対してアレルギー反応を起こします。卵や牛乳、小麦粉、さらに肉の中にもアレルギー反応を起こすとわかっているものがあり、原因となる食べ物はさまざまです。劣悪なペットフードや、保存状態の悪い食べ物も原因になることがあるため注意が必要です。
猫では多くの場合、アレルギーを引き起こす成分の入った食事を、継続してくり返し与えることが原因となって発症します。
猫ではとくにかかりやすい品種というのはありません。すべての品種の猫にかかる可能性があるといえます。
食物アレルギーは、食べ物を食べたあと1〜数時間以内の短いあいだに症状があらわれます。ふつうは顔面に「かゆみ」がではじめ、「赤み」や「発熱」、「小さなブツブツ」がみられるようになります。まれに「下痢」や「嘔吐」なども同時にみられることがあります。
症状はまもなくおさまりますが、同じ食べ物を与えるたびに再び発症します。何度も発症し悪化すると、顔面だけでなく全身にも症状が広がります。犬や猫が食後に顔やからだをしきりに掻いたり、かゆがったりすることがあれば、早めに獣医さんに相談しましょう。
原因となっている食べ物が特定できれば、与えないようにすることが最もよい治療法です。獣医さんの指導のもとで、ある食べ物をとりのぞいた食事で症状が消えた場合には、その食べ物をアレルゲンと判断します。このような食事を与えているときには、他の食べ物はいっさい与えてはいけませんし、長い期間がかかるため、アレルゲンの特定には飼い主さんの協力が必要になります。
アレルゲンを特定できない場合にも、食事をアレルゲンとなるようなものが含まれていない低アレルギー食に変えます。低アレルギー食は市販されているものもあり、気軽に買うことができます。また、薬を使った治療はあまり効果がありません。
食物アレルギーを防ぐために飼い主さんができることは、つねに質の良い食事を与えてあげることです。食事だけでなくおやつも、手作りのものや、信頼できる安全な商品を選ぶように心がけましょう。また、定期的に食事の内容を変えて、いろいろなものを食べさせてあげることも効果的です。
※この記事は麻布大学獣医学部のご協力により作成いたしました。
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