愛玩動物飼養管理士執筆
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー
大谷幸代先生
なんだか最近体をかゆがることが多い?抜け毛が増えた?と感じることはありませんか?
実はかゆみや脱毛には重大な原因が関係していることがあります。
中でもマラセチア菌が関係する症状は、一緒に暮らす飼い主にも悪影響を及ぼすことがあるので、見過ごすことが出来ません。
愛犬の様子がいつもと違う?と気になる時は、早めに動物病院で検査を受けましょう。
マラセチア菌による皮膚炎が起こると、数秒おきに体を掻いたり、皮膚から血がにじむほど強くかきむしることもあります。
脱毛もよくみられる症状で、地肌がすけて見えるほどの薄毛になることも珍しくありません。
初期症状であれば、単なる抜け毛?ブラッシングやシャンプーをさぼってしまってから?と考えることもありますが、徐々にあまりの状態に病気だ、治療が必要だと気が付くでしょう。
この症状は生後間もない子犬、親犬から離れた直後の子犬、高齢な犬によくみられる症状です。
実はつらい痒みや脱毛を引き起こす原因となるマラセチア菌は健康な体にも生息する常駐菌です。
愛犬が健康で免疫力も安定している状態であれば、まるで症状が気になることもありません。
犬は健康を維持する上で、あえて体に一定の菌をもっているのでご安心を。
ただこの菌は、
・持病の悪化
・体調不良
・加齢
・栄養バランスの乱れ
・ストレス
・不衛生な生活環境
など様々な理由が原因となり、急激に増加することがあります。この増加が起こることで、同じ菌が病気の原因へと変化してしまうのです。
マラセチア皮膚炎を発症するタイミングで最も目立つのは
・生後3カ月前後
・ペットショップから購入した直後
・保護犬の引き取り直後
です。
大抵の場合、それまでの生活環境が大きく関係しています。
子犬の繁殖を手掛けるブリーダーの犬舎の中には不衛生であったり、日当たりの悪い環境も少なくありません。
ペットショップも同様で、衛生面は十分に配慮をしているものの、日光が当たらないことで発育に悪影響を及ぼすこともあります。
これは保護犬も同様です。
マラセチア菌が増殖する原因そのものを特定することは出来ないものの、「ストレス」が関係していることは誰の目から見ても明らかでしょう。
マラセチア皮膚炎はカビの一種であるマラセチア菌が関係しています。
治療法は「カビ」を正常値まで鎮静化させることです。
決してカビを全滅させる必要はありません。カビが一定数を下回ることで、本来の健康な状態に徐々に近づくことが出来ます。
この治療のために
・薬用シャンプー
・サプリメント
・飲み薬
などが用いられます。
治療期間中は、週に数回もしくは毎日薬用シャンプーで洗います。薬用シャンプーは塩素系消毒の効果があり、カビへの殺菌効果があります。カビは体の表面に増殖しているので、体の表面のケアを念入りにすることが効果的な方法です。
その上でサプリメントをあたえ、自己免疫力を引き出す手伝いをしてあげましょう。
動物病院から処方される飲み薬の多くは、かゆみ止めや傷口化膿止めのためです。
獣医師の指示のもとで、薬用シャンプーで洗浄を続けることで、数か月~半年ほどでカビの数値は正常に近づくでしょう。
ただ一旦抜けてしまった被毛が一から生え揃うまでにはさらに長い時間がかかります。
被毛の発育には体の中からパワーが必要になるので、サプリメントで効率的に栄養を補給してあげましょう。
マラセチア皮膚炎を発症している期間は
・他犬との触れ合い、接触
・トリミングショップの利用
・ペットホテルの利用
・ドッグランの利用
・高齢者や乳幼児との触れ合い
・タオルや寝具の共有
などは控えましょう。
マラセチア菌はカビの一種ですから、密な接触で感染が拡大することがあります。
健康な大人であれば気になる症状も現れないことが多いものの、高齢者や乳幼児は手肌に赤みや湿疹が起こることもあるので注意しましょう。
家庭では
・ブラッシングやシャンプー後の抜け毛はビニール袋に入れ密閉し処分する
・タオルや愛犬のベッドやマットは洗濯機を使わずに、別洗いとする
・愛犬と同じ寝具で眠らない
・愛犬との過度な接触を避ける
・雨上がりやシャンプー後に生乾きのままにしない
日ごろの「つい・・・」が病状の悪化につながることが多々あります。早期の完治を目指すためにも、毎日の習慣を見直してあげましょう。
脱毛によって外見が変ってしまうと、周囲の目も気になり、つい外出を控え気味になってしまうでしょう。
毎日の散歩はもちろんレジャーに出かけることも少なくなります。
でもマラセチア菌の対処には適度な日光浴も効果があると言われています。適度に日差しを浴びることで、皮膚が良い刺激を受け、細胞が活性化するからです。もちろん新陳代謝も向上する上に、愛犬のストレス発散にもつながります。
病気を発症すると、家族もつい気分がふさいでしまうでしょう。
でも洋服を着せたり、時間帯や行き先を検討することで、出来る限りストレスフリーでいられるよう心掛けてゆきましょう。
動物保護団体で里親家族と出会い、家族になったハンナちゃんは12歳のシニアな女の子です。
これまでの生活環境は決して望ましいものではなく、狭いケージの中で長年過ごしていたそうです。
ハンナちゃんは保護された時点ですでに脱毛、痒みがあり、痛々しい状態でした。
でも数多くの犬猫が共同で暮らす保護団体の施設では十分なケアが出来ない上に、ストレスもたまるだろうという事で、引き取り後に治療をすることを前提で新しい家族に迎え入れられました。
ただハンナには強い痒みがなかったので、家族も脱毛は加齢?ストレス?栄養失調?と当初は考えていたそうです。
でも数か月たってもまるで改善が見られないことから、動物病院で検査を受けたところ、マラセチア皮膚炎だとわかったそうです。
それからは、飼い主さんと一緒にシャンプーコースの利用に週3回足を運んでくれた上に、食事は栄養満点な手作りご飯に切り替え、積極的に外出が出来るようにと洋服もたくさん買い揃えたそうです。
外出先では他犬にマラセチア皮膚炎を映してしまわないようにと、気にかけながら、日向ぼっこなどのんびりとした時間を過ごすいるそうです。
高齢なこと、発症期間が長い上に、治療開始が遅くなったことなど様々な理由があるので、急速な回復は見られませんが徐々に表情も明るくなり、体つきも丸みを帯びてきているので、今後時間をかけてゆっくりと完治を目指してゆきます。
マラセチア菌は常に体に存在する菌の一種ですから、完全に除去することはできません。
逆に言えば、過度に神経質になり、愛犬に触れることを躊躇する必要もありません。
ただ何らかの理由でマラセチア菌が増えてしまうと、深刻な症状につながります。
マラセチア皮膚炎を予防するためには、日ごろから
(シャンプー後は生乾きにならないようしっかりと乾燥する)
チワワのシャンプーは自宅で済ませているという方が大半でしょう。
そのような場合であっても数か月の一度はトリミングショップを利用することも病気予防には効果的です。
抜けのこってしまっている抜け毛や皮膚の汚れをしっかりとプロの技術で取り去ることで、皮膚の状態を良好に保つことにつながるからです。
もし愛犬に痒みや脱毛など気になる症状があるときは早めに動物病院を受診しましょう。
【大谷幸代先生】
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー
学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。
© 2024 ケーエーナチュラルフーズ株式会社