獣医師執筆
森のいぬねこ病院グループ院長
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属
西原 克明(にしはら かつあき)先生
梅雨から初夏にかけて、季節の変化とともに、動物病院では皮膚のトラブルで受診をする犬や猫が多く見られるようになります。
そこで今回は、梅雨時期に多く見られる猫の皮膚病についてお伝えします。
梅雨時期のジメジメした季節になると、皮膚のコンディションが落ちている猫では、皮膚病にかかりやすく、体を痒がったり、脱毛や湿疹のようなものができることが多くなります。
これは、湿気が高くなると、細菌や真菌(カビ)が増えやすい環境となり、それが悪化要因になって、皮膚のコンディションを悪化させていると思われます。
もちろん、健康な猫では、そのような環境中の微生物によって皮膚病になることは非常に稀ですが、何らかの原因で非常にデリケートな皮膚を持つ猫では、細菌や真菌の影響を受けやすくなると考えられています。
こういった微生物の感染による皮膚病は、猫に強いかゆみを引き起こしますが、猫が体を掻いたり、あるいは舌で痒い場所を舐めたりすると、その行動自体がが、さらに皮膚のバリア機能を悪化させるという悪循環を作り出してしまいます。
そのため、猫が体を痒がりだしてから、時間が経ってしまうと、その原因が分かりづらくなることもありますので、体を痒がっている場合は、なるべく早く動物病院を受診するようにしてください。
最近ではしっかりと室内だけで暮らせるように工夫をされている飼い主の方が増えましたので、外に出る猫は減ってきているのですが、それでもやはり、暖かくなって外に出ることで、外の猫からの伝染病にかかってしまうケースは見られます。
外でうつる病気の中でも、最も多いのは、ノミの寄生です。このノミ寄生は、今でも外で暮らす猫では一般的に見られますし、ノミ自体が引き起こす痒みの他に、ノミに対するアレルギーを持つ猫では、「ノミアレルギー性皮膚炎」が見られることもあるため、外に出る猫が体を痒がる場合は、必ずノミの感染を疑う必要があります。
ただし、ノミは定期的に駆除薬を投与することで、その寄生を防ぐことができますので、動物病院処方のノミ・マダニ駆除薬を定期的に使用されている場合は、ノミのリスクは非常に低くなります。
また、疥癬や耳疥癬と呼ばれる「ダニ感染」は、猫に非常に強い痒みを引き起こします。この疥癬や耳疥癬は、痒みのある皮膚病の中でも、かなり強い痒みが見られる病気で、しかも伝染力も強く、簡単に他の猫にうつってしまいます。
しかも、これらの病気で感染するダニは「ヒゼンダニ」と呼ばれ、マダニとは異なる種類ですので、いわゆる「ノミ・マダニ駆除薬」の中には、ヒゼンダニに効果がないものもあります。そのため、しっかりとノミ・マダニ駆除薬を使っていても、疥癬や耳疥癬に感染してしまうこともあるため、注意が必要です。
万が一、感染を認めた場合には、ヒゼンダニに効果のある駆除薬を投与します。ただし、駆除薬の処方には動物病院の受診が必要なのですが、院内感染を防ぐためにも必ず受診前に動物病院に電話で連絡を行い、院内感染を防ぐための指示をもらうようにしてください。
また、ヒゼンダニは非常に伝染力の強い寄生ですので、同居猫がいる場合は、必ず同居猫にも駆除薬を投与する必要があります。さらには、猫の生活空間全体を、隅々まで掃除機をかけてホコリを限りなくゼロにするなど、衛生環境の整備も徹底するようにしましょう。
このように、外に出る猫が体を痒がっている場合には、細菌やカビの感染だけでなく、ノミやダニの寄生によって痒みが引き起こされる場合があります。
また、外に出る猫では、寄生虫感染だけでなく、喧嘩や交通事故による外傷の可能性もあり、軽い外傷であれば、一見、体を痒がっているように見えることもありますので、必ず痒がっている場所を目で確認し、傷がないかどうかなども確認することが重要です。
最近になって、猫でも詳しいアレルギーの検査ができるようになりました。以前から、猫にも様々なアレルギーがあることはわかっていましたが、どの程度のレベルかまではわからず、実際に皮膚のかゆみとアレルギーとの関係性がいまいちわかっていなかったのですが、検査技術の発達によって、今では猫でもアレルギー性皮膚炎が多く見られることがわかってきています。
梅雨時期の猫の痒みの原因の一つに、細菌やカビの感染があるのですが、これらの微生物は、通常は猫の皮膚に害を加えることなく、共生しています。
しかし、何らかの原因で皮膚のバリア機能が低下することで、感染を引き起こすと考えられているのですが、その「何らかの原因」の一つがアレルギー性皮膚炎によるものと思われます。
アレルギー性皮膚炎では、人間や犬と同じように、体のあちこちを痒がるようになります。特に猫の場合は、掻くという行動よりも体のあちこちを舐めたり、噛んだりする行動が目立ちます。
アレルギー性皮膚炎の治療は、二次的な微生物の感染を治療しながら、痒みを抑えるステロイド剤や抗アレルギー薬を使用したり、皮膚のコンディションを整える保湿剤、あるいはアレルギー検査に基づくアレルギーを引き起こす物質の回避(特定の原材料のみを用いた食事など)などが行われます。
皮膚がデリケートな猫が、ジメジメした時期に感染しやすいものの一つに真菌、いわゆるカビがあります。猫の皮膚の真菌症はほとんどが「皮膚糸状菌症」と呼ばれるもので、真菌の中でも糸状菌と呼ばれるカビが感染しています。
猫の皮膚糸状菌症は、特に免疫力が低下している子猫や高齢猫で見られますが、中には猫エイズの感染などで免疫力が低下している成猫でも見られることがあります。子猫では、ほとんどが顔や耳に感染し、痒みの他にフケ、脱毛などが見られますが、成猫や高齢猫、あるいは子猫でも体のあちこちに発生する可能性があります。
猫の皮膚糸状菌症の診断は、ほとんどが顕微鏡で直接、糸状菌を確認しますが、中にはより精密な検査として培養検査を行い、糸状菌の存在を見逃さないようにしています。
治療は、ほとんどが抗真菌薬というカビに対して効果のある薬剤を投与します。抗真菌薬は飲み薬と塗り薬、あるいはシャンプーなどに含まれているものもありますが、皮膚糸状菌症は、見た目の皮膚病変だけでなく、目に見えないレベルで全身に感染している可能性が高いため、通常は飲み薬を使用します。
また、糸状菌をコントロールするだけでなく、免疫力が低下している原因に対してもアプローチし、根本的に治療することも重要です。しかし、猫のエイズ感染は完治させる治療方法はありませんし、子猫では、成長して自然に免疫力が高くなるまで時間をかける必要があります。
さらには、成猫や高齢猫では、免疫力が下がってしまう原因がわからないことも多く、免疫力を高めるための、確実な治療方法がないというのが現状です。
猫の皮膚のコンディションを維持する方法として、室内飼育、予防の徹底、日常的なブラッシング、健康診断、デンタルケア、食事管理などがあります。
前述の通り、外に出ることでノミやヒゼンダニなど、皮膚病を引き起こす寄生虫感染や、ケンカや交通事故など外傷のリスクが非常に高くなりますので、皮膚病だけでなく猫の安全確保のためにも、室内で暮らせるように工夫することが重要です。
また、万が一、外に出てしまった時に備えて、ノミ・マダニ駆除薬の定期的な投与を行うようにしてください。たとえ脱走する心配がなくても、外で暮らす猫がノミを運ぶリスク、あるいはマダニが庭先や鳥などから侵入する可能性もありますので、完全室内飼育の猫でも予防を徹底することをお勧めします。
ほとんどの猫は、毛が非常に密で、ほとんどの皮膚が毛に埋もれて見えにくくなっています。そのため、猫の皮膚病の早期発見が難しく、かなり進行してから動物病院を受診するケースがほとんどです。そのため、日頃からブラッシングをこまめに行い、皮膚も一緒にチェックするようにしましょう。
皮膚病の中には、全身的な病気の症状の一つとして、皮膚病が見られるケースもあります。そのため猫の全身状態をチェックし、病気を早期発見するための健康診断は欠かせません。
実は、歯周病や口内炎など、口の中に異常を持つ猫では、その痛みから、毛づくろいがあまりできず、毛玉ができたり、フケが溜まって皮膚のコンディションが落ちたりすることがあります。そのため、毛玉が増えている猫では、歯茎が赤かったり、歯石が溜まっていたり、あるいは猫が口を気にする仕草をしているなどの口の中に問題が見られるような症状がある場合は、デンタルケアを行うことで、皮膚のコンディションも改善することがあります。
フケが多いねこや、毛がべたつく、あるいは体臭が強い猫では、食事を変えることで改善することがあります。はっきりしたメカニズムはわかりませんが、アレルギーや脂漏症などを隠し持っている猫では、それらの病状に合わせた食事管理で、皮膚のコンディションも改善することが多く見られます。
また、不飽和脂肪酸や、アガリクスのようなサプリメントも、皮膚のコンディションの改善に役立ちます。特にキングアガリクス のように学術データが非常に豊富なサプリメントは、猫の皮膚糸状菌症などのケアにも役立ちますので、大変お勧めできるサプリメントです。
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気温と湿気が高くなると、細菌やカビが増殖しやすくなり、デリケートな皮膚を持つ猫では、皮膚のコンディションが悪化しやすくなります。また、暖かくなると外に出る猫では、他の猫と接触する機会が増え、ノミやダニなどの寄生虫に感染するリスクが高くなります。
日頃から、皮膚のお手入れや、体調全般の管理など、猫の健康管理をしっかりと行い、病気に負けない体づくり、そして病気を早期発見できるような日常のケアを心がけてあげてください。
執筆者
西原 克明(にしはら かつあき)先生
森のいぬねこ病院グループ院長
帯広畜産大学 獣医学科卒業
略歴
北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。
所属学会
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会
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