愛玩動物飼養管理1級執筆
執筆者:國澤莉沙先生
愛玩動物飼養管理1級、ホームドッグトレーナー1級、小動物看護士
シーズーは中国が原産国の犬であり、古くから宮廷内などで裕福層に可愛がられていた愛玩犬です。
その大きな瞳と美しい菊の花のような毛並みからクリサン・セマムドッグと呼ばれ、人々に親しまれてきました。
愛玩犬としての歴史が長いシーズーは人懐っこい性格と被毛が抜けにくく、手入れしやすい点から日本でも根強い人気のある犬種になります。
シーズーは飼育しやすく、賢い面でも魅力的な犬ですが食欲が旺盛ですぐに肥満体型になりやすいので注意が必要です。
皮脂の分泌もほかの犬種に比べると多く、皮膚炎にもなりやすい面があります。特に垂れ耳であるシーズーはマラセチア外耳炎にも気をつけたい犬種になります。
シーズーのマラセチア外耳炎について紹介していきます。マラセチア外耳炎にお困りの方は参考にしてください。
皮膚のトラブルは動物病院の受診理由としても多いですが、中でもマラセチア外耳炎はポピュラーな皮膚炎であり、重症化すると治るのに時間がかかり、繰り返すことのある皮膚炎です。マラセチア菌は常在菌で真菌の一種です。
身体の抵抗力がなんらかの原因で低下し、耳の中で異常繁殖をおこしてしまい、炎症してしまうとマラセチア外耳炎になります。
通常はバランスを取っているので悪さをすることはありませんが耳道内に湿気がこもると菌が増えやすく、特に夏場や梅雨時期は要注意です。
耳道内でマラセチア菌が大量に繁殖してマラセチア外耳炎になると、べっとりとした黒い粘度の高い耳アカが出るようになります。奥まで炎症が進行してしまうと難聴や斜頸といった症状が見られます。
激しいかゆみを伴うので耳を激しく掻いてしまうと、傷口から二次感染を起こしてしまい膿や出血が見られます。炎症が酷くなると下痢や嘔吐などの症状が見られるようになり、命の危険もあるので早めに対処が必要です。
さらには、激しいかゆみのストレスから衰弱してしまうこともあり、注意が必要です。最もこわいのは、三半規管や脳まで炎症が侵攻して歩行異常や眼振が起きて神経症状が出てしまい障害が残ることです。
マラセチア外耳炎は全犬種かかる可能性があるポピュラーな皮膚炎ですので、さまざまな原因があります。特にマラセチア外耳炎の原因になりやすいものを紹介します。
シーズーははタレ耳がチャームポイントですが、たち耳の犬種よりも耳道内が蒸れやすく、菌が繁殖しやすい状況にあります。
湿気を溜め込みやすい環境にあり、シーズーは被毛も耳内もオイリーになりやすい子が多いので、皮脂などの菌が繁殖するのに必要なエサが豊富にあります。
日に一度は耳をめくって換気するようにしましょう。コットンで優しく周りを拭き取るだけでも効果がありますよ。
マラセチア外耳炎は皮膚のバリア機能が低下してしまい、身体の免疫力が低下するとかかりやすくなります。
甲状腺機能低下症や他の皮膚炎にかかると身体の菌のバランスが崩れやすくなり、マラセチア外耳炎になることがあります。
アカラスなどが寄生すると、皮膚を攻撃されて傷ができてしまうためマラセチア菌が大量に繁殖してしまう原因にもなります。
ブラッシングは愛犬の健康状態を知るためにはとても大切なケアです。毎日行うことが重要であり、ブラッシング不足になると皮膚の新陳代謝が悪くなり、いつまでも古い被毛や角質が排出されずに不衛生な状態になり菌が増殖します。
さらに毛玉は菌の温床になってしまうのでさらにマラセチア外耳炎の原因になります。耳の周りには毛玉が出来やすいので、特に丁寧に観察してブラッシングしましょう。
シーズーはカット犬種ですので、耳掃除の他にも耳周りの被毛をカットしてもらい、換気をよくしましょう。月に一度はトリミングサロンを利用するとお金はかかってしまいますが皮膚の健康チェックができますよ。
マラセチア外耳炎になってしまった時の主な治療方法を紹介します。その子によって治療方法は異なるので、早めに動物病院を受診して獣医さんと相談しながら治療していきましょう。
マラセチア外耳炎の治療は異常繁殖してしまったマラセチア菌を少なくして耳道内の菌バランスを正常にすることがポイントです。基本的には薬液を使用して耳掃除をして耳垢を除去します。
ノルバサンイヤークリーナやエピオティック洗浄液といった薬液を使用して耳をもんでマッサージを行い耳道内の耳垢を浮かせて拭き取ります。耳道内に傷がある場合には、抗生物質の外用薬を塗り込んで治療を行います。
耳掃除はコツがいるので、獣医さんにお願いするかしっかりと指導を受けてホームケアをしてあげるようにしましょう。またバランスの良い食事を心がけて低下してしまった免疫力を高めることも大切です。
・身体の免疫力を高めるためには?
身体の免疫力をアップさせるためにはサプリメントなどを上手に与えて、栄養バランスの取れた食事を与えることがポイントです。毎日の食事だけでは補えない栄養を手軽に摂取できます。
特に皮膚に良い効果が期待できるオススメなサプリは「アガリクス茸」を使用した商品です。アガリクス茸には老廃物を吸着して身体からの排出を助ける効果が高いとされています。皮脂を溜め込みやすいシーズーにもぴったりの栄養素です。
また、身体に必要なビタミン・ミネラル・酵素が豊富に含まれており、免疫力の向上に効果が期待できます。豊富な栄養素は全年齢のわんちゃんに有効です。
愛犬のシーズーがマラセチア外耳炎になったときに気をつけたいことを紹介します。お家でのケアの参考にどうぞ。
皮膚炎を発症しているときには免疫力が低下しているため他の病気を併発する場合があるので、注意が必要です。特にマラセチア外耳炎は他の皮膚炎と併発しやすい面があります。治療とともに飼育スペースを清潔に保ってあげることが重要です。
飼育スペースに愛犬のフケや抜け毛があると菌が繁殖しやすくなります。飼育スペースの掃除、消毒を徹底して清潔に保つようにしましょう。飼育スペースの消毒には次亜塩素酸水が有効です。
次亜塩素酸は人のウイルス除去にも使用されているものですが、次亜塩素酸と水しか使用していませんので、わんちゃんが舐めても安心です。
マラセチラ外耳炎はかゆみが強く愛犬にストレスがかかりやすい皮膚炎です。掻かないようにエリザベスカラーなどを使用すると特にストレスから下痢や嘔吐、食欲不振などになってしまい、治りも遅くなります。
できるだけ愛犬のそばにいてあげてたくさん声をかけてあげましょう。なにより飼い主さんとのコミュニケーションは愛犬にとっての癒しになりますよ。
耳掃除を嫌がる子も多いので、おやつなどを使用して上手に行います。愛犬のベッドなどにはお気に入りのおもちゃや毛布をセットして愛犬が落ち着ける環境を作ってあげましょう。
マラセチア皮膚炎のため耳を脚で掻いてしまうと傷ができてしまい、二次感染になる可能性もあります。同時に気をつけたいのは目の損傷です。
シーズーは瞳が大きく、目の疾患が多い犬種でもあります。さらにマラセチア菌がついた脚で目を掻いて傷つけてしまうと最悪炎症を起こし、失明してしまいます。
シーズーは我慢強く辛抱ができる犬種ですが、目が見えにくくなってしまうとストレスがかかってしまいます。目は非常に重要な器官ですからエリザベスカラーなどをうまく活用して愛犬の目の周り、耳道内を保護するようにしましょう。
マラセチア皮膚炎にかかってしまった時の対処方法を紹介してきましたが、できれば日常から予防をしてこれらの皮膚病を避けたいものです。日頃からできるマラセチア皮膚炎の予防についてご紹介します。
日常のケアに耳掃除を取り入れて耳道内に湿気がたまらないように換気してあげることが重要です。
ブラッシングでは耳周りの毛玉対策をしっかりして、新陳代謝を活発にして古い被毛を落としやすくします。
また、日頃から耳掃除をしていれば愛犬の耳の健康チェックもしやすく少しの異常にも気づくことができるので、早めに対処することが可能です。
マラセチア外耳炎は重症化すると完治するまでに時間がかかりますが、早期発見することで愛犬のストレスを軽減して完治させることができます。
マラセチア外耳炎にならないためには皮膚の黄金バランスを整えることが大事です。一度マラセチア外耳炎や他の皮膚炎になると、再発しやすくなります。
もともと皮膚が弱い愛犬は獣医さんに相談しながらノルバサンシャンプーやサルファシャンプーを使用して薬浴でケアしてあげると皮膚炎の予防になります。
シーズーの被毛はオイリーになりやすく、フケやかゆみもでやすいので、薬浴について相談し、獣医さんの指示通りに行います。
シーズーは小型犬であり、耳道内も小さいので耳掃除もしにくいものです。無理やり耳掃除をしてしまうと傷ができてしまい、そこから炎症をおこしてしまうこともあります。
決して無理はせずに動物病院やトリミングサロンを利用して耳を清潔に保ちます。今では爪切りや耳掃除のみを安価でしてくれるコースもありますので、うまく利用して愛犬の耳の中を清潔に保ちます。
食事もなるべく添加物を使用していない自然な味付けのものを選んであげると、皮膚が脂っぽくなるのを防ぐことができます。そのためにはバランスの良い食事を心がけて下さいね。
シーズーがマラセチア外耳炎になってしまった際の対処方法について紹介しました。マラセチア外耳炎はかかると激しく掻いたり、独特のベタベタした耳垢が出るため見た目にも痛々しいですよね。季節になると繰り返す外耳炎でもあるので早めに対処してあげたい病気です。
炎症が侵攻すると目を傷つけてしまい、失明する危険もあります。マラセチア外耳炎は早期発見できればすぐに回復することが可能になります。
繰り返しやすい外耳炎ですので、日頃の換気と状態チェックが鍵になりますね。シーズーを飼育している方、マラセチア外耳炎にお困りの飼い主さんの参考になれば幸いです。
執筆者:國澤莉沙先生
愛玩動物飼養管理1級、ホームドッグトレーナー1級、小動物看護士等の資格を所持。
つくば国際ペット専門学校・ドッグトレーナーコースを卒業後、つくばわんわんランドの飼育員として5年間勤務。現在は主婦として、育児をしながら動物系の記事を執筆しております。猫・犬ともに大好きです。
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