動物看護士・トリマー執筆
執筆者:山之内さゆり先生
動物看護士・トリマー
ふわもこなカール毛が特徴的なトイプードルですが、ある日突然「なんか毛が薄くなっている?!」と驚くことがあるかも知れません。
もしトイプードルの毛が薄くなってきたら、それは脱毛症の可能性が。
そこで、今回はトイプードルの脱毛症の原因と治療・予防におすすめの方法をお教えしたいと思います。
ふわふわもこもこが可愛くていろんなカットスタイルを楽しみたいといった飼い主さんは多く、人気犬種ランキングでも不動の1位に君臨し続けています。
しかし、可愛いカットスタイルを楽しむためにも必須である毛が薄くなったり、完全に脱毛してしまったら焦りますよね。
ただ、もしトイプードルが脱毛症になってしまってもその原因が分かって治療法があればそこまで問題でもありません。
困るのはその脱毛症の原因が不明だった場合です。
実は、プードルの脱毛症の多くはアロペシアXと言われるもので、アロペシアとは原因不明という意味があります。
つまり、プードルの脱毛症は原因不明のアロペシアX脱毛症のことが多く、その原因は不明とされているのです。
しかし、アロペシアX以外にもプードルが脱毛を起こす原因がありますので、そちらも一緒にご紹介しましょう。
プードルが脱毛を起こすアレルギーには、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、ノミアレルギー性皮膚炎といったものがあります。
それぞれアレルギーを引き起こす原因は違いますが、いずれも痒み・炎症を伴いひどくなると毛が薄くなり、脱毛を引き起こすことも少なくありません。
犬はストレスを感じると手足をひっきりなしに舐めたりしっぽなどの毛をむしったりすることがあります。
執拗に舐めたり自分の毛をむしることで脱毛してしまい、そのまま毛が生えなくなってしまうことも。
見た目にも悲しい気持ちになってしまいますが、それ以前に脱毛してしまうほどのストレスを抱えているとこうことを理解し、適切に対処してあげるようにしましょう。
内分泌系疾患を患うとホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮膚や被毛などにも影響が出ることがあります。
もし内分泌系疾患による脱毛であれば、ホルモン剤を使ってホルモン分泌をコントロールすることがまず第一です。
このように脱毛を引き起こしている元となる疾患(基礎疾患)を治療することで、脱毛を改善することができます。
トイプードルの脱毛症はアロペシアXであることが多く、その場合はそもそもの原因が不明なので、残念なことにこれといった治療法があるわけではありません。
しかし、原因が不明であってもさまざまな可能性からアプローチし、そのアプローチの結果状態が改善されることもあります。
アプローチの方法としては次のようなものがあげられます。
ホルモンの異常による可能性でアプローチするのであればホルモン剤の投与など、考えられる可能性に対して効果を期待する内服薬を投与します。
これによって状態が改善されればいいですが、もし改善されなければ他の可能性も視野にアプローチを変更していきます。
脱毛症を起こしている以上皮膚のコンディションや栄養状態などが乱れている可能性もあるため、それらのバランスを整えるためにも皮膚疾患に特化した療法食を与えるのもひとつです。
もし皮膚のコンディションバランスが乱れているのが原因であれば、食事療法で改善されていくこともあります。
ただし、食事療法をする場合はおやつや人の食べ物といったものは決して与えないようにし、最低1ヶ月は様子を見ることが大切です。
もしそれでも状態が改善されなかったとしても、特別な疾患がなければ皮膚トラブルの予防として食べさせ続けることもできます。
適切なサプリメントを使うことで皮膚のコンディションを整え、脱毛症を改善することができる場合があります。
サプリメントにもさまざまなものがありますが、基本的には動物病院の獣医師に相談して症状や状態によって適したものを選んであげるといいですね。
また、健康維持など日常的な抵抗力アップを考えたものであれば良質なアガリクスが配合されたサプリメントもおすすめ。
脱毛症に直接的に働きかけるかどうかは別問題になりますが、体全体の免疫力・抵抗力が高い状態であれば、生活していくうえでさまざまな病気に対して強い体質を手にすることができます。
トイプードルの脱毛症がアロペシアXであった場合、その原因が不明である以上ありとあらゆる可能性を考えてひとつずつアプローチをしていくしかありません。
そうしたアプローチをしていくなかでヒットするものがあれば症状が改善され、またもとのふわもこな毛を取り戻す可能性もあります。
しかし、脱毛した原因がアレルギーやなんらかの基礎疾患による影響であれば、それらの原因に対して正しい治療をすることで結果的に脱毛を改善することができます。
ですが、できるなら脱毛を引き起こす原因を抱えてしまう前にしっかりと予防してあげることが理想です。
そこで、トイプードルの脱毛を予防する方法としておすすめなのが身体の免疫力・抵抗力をアップさせること、アレルゲンとなる可能性のあるものをできる限り排除すること、保湿系シャンプー剤の使用です。
まず、免疫力・抵抗力をアップさせるという点についてですが、一見脱毛とはなんの関係もないような感じがしますよね。
しかし、体の免疫力・抵抗力が高い状態なのと低い状態なのとでは細菌やウイルスといった病気に対する反応がまず違います。
病気に対して弱い体だとそれだけ体のいろんな場所に影響を受けやすくなり、その影響が皮膚・被毛に出るということも少なくありません。
逆に免疫力・抵抗力が強い体であればそもそも病気になりにくく、病気になったとしても治りやすかったり病気の影響を受けにくくなることもあるのです。
そうした影響が皮膚・被毛に出る場合、免疫力・抵抗力が高い方が仮に脱毛してしまっても軽度で済んだり、脱毛するまでには至らなかったということだってあります。
こうした意味でも、脱毛を予防するならまずは体の免疫力・抵抗力をアップさせるところから始めてみるといいでしょう。
次に脱毛とアレルゲンの関係についてですが、まずアレルゲンとしてあげられるものには食べ物・ノミ・ハウスダストといったものがあります。
そして、現在特別なアレルギー体質ではないということであれば、アレルギー体質になってしまう前に少しでも予防してあげることで発症を防ぐようにしてあげるようにしましょう。
食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・ノミアレルギー性皮膚炎といったアレルギーは、いずれも強い痒み・炎症・脱毛といった症状を引き起こし、強いストレスに見舞われてしまいます。
ですから、もし特定の処方食を必要とする疾患を抱えていないのであれば、食事もアレルギーを起こさない原料を使ったものにしてあげる、ノミ・ダニの駆除予防を定期的に通年続ける、こまめな掃除でハウスダストを減らす、といった方法で予防してあげることができると理想です。
特にノミ・ダニの駆除予防については夏場だけ意識はするけど、秋~春くらいにかけては予防しなくても大丈夫と思っている飼い主さんが非常に多いです。
しかし、これは大きな罠であくまでも夏場にノミ・ダニが大量に発生しているので目立っているだけであって、ノミ・ダニは一年中存在はしているということを知らなければなりません。
もし、夏が終わったから予防はやめた!室内だから大丈夫!といったことをしていると、思いもよらないところから感染し大量に繁殖してしまう危険性があります。
例えば、ノミの卵は道を歩けばどこにでも落ちていて私たちの靴の裏や洋服のすそなどにくっついてしまうことも。
それを知らずに家の中に持ち帰ってしまい、居心地のいい温度設定のされた室内で卵が孵化して感染するといったケースもあるのです。
当然、散歩に行けば犬の毛や足の裏など直接くっついてしまうので、それを持って帰って孵化すればどうなるかは想像できるでしょう。
そうならないためにも、夏場だけではなく通年ノミダニの駆除・予防をするようにしましょう。
トイプードルは月に1~2回のトリミングを必要とする犬種ですが、その際に使用するシャンプー剤を保湿系のシャンプー剤にしてあげることで脱毛予防にもつながります。
もし、現在何らかの皮膚トラブルを抱えているのであればもちろんそれに適した薬用シャンプーを使用する必要がありますが、もしそういったことでなければアミノ酸やセラミドを主成分としたようなシャンプー剤を選ぶことで、皮膚のコンディションを良好に保つことが可能です。
皮膚のコンディションが良好であれば乾燥を防ぐことができるので、乾燥による痒みを防ぎかゆみによる脱毛を防ぐことができます。
また、保湿系のシャンプーを使うことで皮膚はもちろん被毛も保湿されるので、静電気を起こしにくく毛もつれにもなりにくいというメリットも。
もちろん、日頃のブラッシングをしなければ毛もつれや毛玉はできてしまいますが、保湿系のシャンプー剤を使った場合とそうでない場合と比較すると、保湿系のシャンプーを使った状態の方がいい状態をキープしやすくお手入れもしやすいのでおすすめです。
トイプードルの脱毛症の原因はアロペシアXといって、原因不明の脱毛である場合もありますが、何かしらの疾患が原因となって脱毛を引き起こしている場合もあります。
もし、アロペシアXであった場合は考えられる可能性にひとつずつアプローチして様子を見ながら治療をし、場合によっては改善が全く見られないといったことも。
しかし、アレルギーや内分泌系疾患といった原因となっている疾患があればそれを治療することで改善できますし、そもそもそうした病気にならないように予防することで脱毛症になる可能性を減らすことができます。
ひとつでも多く予防をすることができれば、それだけ脱毛になる可能性を低くすることができますし、もし脱毛を引き起こしてしまった場合でも可能性の特定を絞りやすくなります。
予防の方法としてサプリメントの利用や食事管理、アレルゲンの除去や保湿系シャンプーの使用といったものがありますが、いきなり全部をするのは大変だと思いますので、ひとつずつ可能なところから取り組んでみてください。
執筆者:山之内さゆり先生
トリマー、動物看護士
約10年間動物病院でトリマー兼動物看護士として勤務。
現場で得た知識と経験を情報として発信し、飼い主さんとペットが幸せに暮らせるためのお手伝いをしていきたいと思います。
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