動物看護士・トリマー執筆
執筆者:山之内さゆり先生
動物看護士・トリマー
子犬は免疫力が低くすぐに感染症にかかってしまいやすい体質。
中でも皮膚疾患である皮膚糸状菌症はなりやすく、シャンプーを使って治療する方法があります。
そこで、今回は子犬の皮膚糸状菌症におけるおすすめのシャンプーと使い方、そして皮膚糸状菌症は予防できるのか?についてお話ししたいと思います。
新しく家族に迎え入れた可愛い子犬が、ある日突然、皮膚糸状菌症に感染してしまったら焦りますよね。
皮膚糸状菌症はカビによる皮膚疾患で、リングワームと呼ばれるリング状の脱毛が起こります。
皮膚糸状菌症は患部に触れた場所からさらに広がり、子犬だけでなく人にも感染するため適切な対処・治療をすることが大事。
治療方法としては、外側から治療する方法と体の内側から治療する方法があり、内と外の両方からアプローチすることが完治の早道です。
そして、外側からの治療のひとつに薬用シャンプーを使った薬浴があるのですが、ここでおすすめする薬用シャンプーがマラセブシャンプーです。
マラセブシャンプーは皮膚糸状菌症やマラセチアといった特別な皮膚疾患の際に使われるシャンプーですので、必ず使用するには獣医師の診断・処方が必要となります。
使い方についても体重によって使用量も異なることと、禁忌事項などもあるので決して自己判断で購入・使用することだけはしないでください。
自己判断でマラセブシャンプーのような薬用シャンプーを購入・使用することは厳禁ですが、基本的には薬用シャンプーで薬浴をするときの方法は決まっています。
①38度程度のぬるめのお湯で全身を濡らし、適量のシャンプー剤をしっかり泡立てて優しく患部を洗い10分薬の成分を浸透させる。
②すすぎ残しがないようににしっかり洗い流す。
③優しく吸い取るようにタオルで水分を拭き取る(ゴシゴシすると皮膚がダメージを受けるので優しく優しくを意識!)
④冷風または温風がぬるく感じるくらいの距離からドライヤーをあてて、乾かし残しのないようにしっかりと乾かす。
⑤ドライヤーを当てない状態で毛の根元(皮膚まで指を入れる)を触って、冷たい感じがしなければOK!(冷たさを感じたり気持ちしっとりしてる?と感じたらまだ不十分です)
基本はこの方法でマラセブシャンプーなどを使った薬浴をしていくので、覚えておくと自宅でも薬浴するときに正しくケアできると思います。
また、子犬はまだ抵抗力が弱く皮膚病に限らずいろんな病気になりやすい状態にあるので、乾かし残しが原因で風邪を引いたり症状が悪化してしまわないよう、十分に注意しましょう。
子犬が皮膚糸状菌症になったら薬用シャンプーだけではなく、抗真菌剤といったような内服薬を使って同時にケアをします。
ここで使われる内服薬は錠剤であることがほとんどなので、嫌な思い出が強くなって薬を飲むのを嫌いになってしまわないように工夫したいところ。
では、どのようにしたら子犬でも簡単に錠剤を乗せることができるのか、その方法をご紹介します。
①フードの上に乗せる
フードが大好きでガツガツ食べる子であれば、フードの上に乗せて与えるとそのままごはんと一緒に食べてくれます。
もし、薬だけ避けて食べるようであれば薬の上にフードを1~2粒乗せて見えないようにすると、避けて食べる子も気付かずにそのまま食べることが多いです。
ただ、1つ注意することがあります。
フードの中に混ぜればいいとお皿の一番底に薬を入れたり、薬をぐっと中の方に押し込んでしまうと、見事に薬だけきれいに残る可能性が高いです。
薬をお皿の一番底に置いてしまった場合は、最終的にフードがほとんどなくなって薬が丸見えになってしまうため。
また、フードをお皿に入れて薬をぐっと中に押し込んでしまうと、食べ進めていく過程で薬がどんどん中に押しやられて、結果的に薬をお皿の一番下に置いたときと同じような状態にあるためです。
大事なのは、犬がガブッと食べるときの最初の一口目のポイントにうまく薬を潜ませること。
そこのポイントを押さえておけば9割成功します。
②好物のおやつの中に混ぜる(はさむ)
こちらの方法は好物のおやつを使った方法で、フードに混ぜる方法だとうまく食べてくれないという子におすすめ。
フードはあまり勢いよく食べてくれない子もおやつだったら食い付くという子は少なくありません。
そして、その勢いもフードよりも大きいためさらに成功率はあがります。
もし使うおやつが柔らかくて中に挟むことができるようなタイプであれば、その中にはさんで一口で口の中に入るようにするといいですね。
③ピルポケットを使う
グリニーズから出ているピルポケットという商品があります。
ピルポケットは薬を綺麗に包み込んで、確実に愛犬に食べさせることを目的に作られた
半生タイプのおやつのようなものです。
フード以外は極力与えたくない、おやつの質も考慮したい、アレルギーに配慮したい、といったさまざまな悩みに対処することができます。
アレルギーに関してはピルポケットアレルギーフォーミュラというものがあるので、そちらを選ぶといいですね。
また、アレルギー専用の方はアレルギーを持っていない子でも与えることもできます。
ピルポケットを使えばほぼほぼ確実に薬を飲ませることが成功できるでしょう。
子犬が皮膚糸状菌症になってもならなくても、サークルやベッドなど消毒液で拭いたり掃除機をかけたりして、人間が住む環境だけではなく子犬の生活スペースも衛生的に保つことは大事です。
しかし、皮膚糸状菌症になってしまったら通常の掃除だけでは不十分になるので、カビが今以上に広がったり人間にも感染したりしないよう、次のような徹底消毒をする必要があります。
①使ったタオル・おもちゃ・ケージなど塩素消毒
塩素で薄めた消毒スプレーを作り、おもちゃ、ケージ、食器など子犬の使用後は必ず隅々までスプレーして拭き取るようにします。
また、消毒に使ったタオルや子犬に使ったタオルなどはバケツに塩素を薄めた水(塩素1:水10)に30分以上浸けてから洗濯しましょう。
②新たな皮膚糸状菌症の感染を防ぐために必ず石鹸で手を洗う
皮膚糸状菌症のカビは、石鹸でしっかり手を洗うことで洗い流すことができます。
爪の中までしっかり洗えるように念入りに泡を立てて、患部に触れたとこはもちろんその周囲も含めて洗うようにしましょう。
普段から触れたものは塩素を薄めたスプレーで消毒をし、犬を触ったら必ず隅々まで石鹸で洗うことを徹底していれば、皮膚糸状菌症自体を予防することにもつながります。
先述したように日頃から生活環境を消毒し清潔に保つことができれいれば、皮膚糸状菌に感染する確率はかなり下げることが可能です。
しかし、どんなに消毒・手洗いを徹底していたとしても子犬の抵抗力がために感染・発症してしまうことも否定できません。
そこで、消毒・手洗いにプラスアルファでぜひ取り入れて欲しいのが子犬の抵抗力の強化です。
免疫力・抵抗力をアップするための基本としてまずあげられるのは、毎日の食事を良質な原料からできたものにすること。
しかし、食事だけでは限界があるためさらにサポートする役割として、アガリスクのサプリメントを利用する方法があります。
アガリクスには体の細胞を元気にして免疫力・抵抗力を上げる力かあることが知られており、QOL(生活の質)を高めるためにも積極的に取り入れてほしいもののひとつです。
毎日の食事にプラスしてあげることで、ごはんと一緒に食べているだけなのに体がどんどん強く元気になっていきます。
消毒・手洗いを基本にこうした内側からのケアをしてあげることができれば、抵抗力が低いせいで皮膚糸状菌症になってしまった…という可能性をかなり低くすることができるので、ぜひアガリクスを取り入れてみてください。
子犬が皮膚糸状菌症にならないようにするために、日頃から消毒・低洗いを徹底し合わせて体の免疫力・抵抗力をアップしてあげることが大切だとお話ししました。
しかし、どんなに飼い主さんが気を付けていたとしても出先でカビをもらってきてしまうケースがあり、その可能性が非常に高いのが不特定多数の犬・猫を預かっている場所です。
不特定多数の犬・猫を預かっている場所というと、動物病院・ペットショップ・ペットサロンといったところがありますよね。
当然そうした場所ではプロが取り扱っているため、当然何の心配もいらないと思うかと思います。
ですが、実はそれが落とし穴で意外と消毒や手洗いを怠るケースが多いのです。
もちろん、すべてのペット業界がそうだとは限りませんが動物病院でさえ診察台以外の消毒を怠るところさえあります。
つまり、トリミングで使う道具や犬・猫を預かっているお部屋など、忙しいからといって見た目で汚れが目立たなければ消毒を怠ることがあるのです。
さすがに、ちゃんと消毒しているかどうかというのを確認することは難しいですが、トリミングやホテルなどでお預けするさいは「必ず他の子のいたお部屋に入れるときや他の子に使っていた道具をこの子に使うときは消毒してください」と一言伝えておくと、ある程度の対策にはなるかと思います。
また、診察室やトリミング室を待合室や外から覗くことができる空間なら、必ずスタッフは他の動物を触った後手洗いをして、台を含めて使った道具は消毒しているか?というところをチェックしておくのもいいですね。
それをできている場所であれば、「必ず消毒手洗いしてください!」なんて言わなくても、スタッフ全員が徹底して感染予防に努めていると言っても間違いはないかと思います。
子犬の皮膚糸状菌症にはマラセブシャンプーのような、抗菌作用をもった薬用シャンプーで殺菌してあげることがおすすめです。
しかし、薬用シャンプーは必ず獣医師の診察の上処方してもらう必要があるため、決して自己判断でネットなどで購入しないようにするのだけはNG。
使用の際は必ず用法・用量を守り正しくシャンプーをして、すすぎ残し・乾かし残しのないようにしてください。
そして、日頃から皮膚糸状菌を予防するためにも生活環境の消毒・手洗い・アガリクスを使った免疫力強化をして、まだまだ弱い子犬をしっかり守ってあげましょう。
執筆者:山之内さゆり先生
トリマー、動物看護士
約10年間動物病院でトリマー兼動物看護士として勤務。
現場で得た知識と経験を情報として発信し、飼い主さんとペットが幸せに暮らせるためのお手伝いをしていきたいと思います。
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