動物看護士・トリマー執筆
執筆者:山之内さゆり先生
動物看護士・トリマー
鼻ペチャで短い脚とむっくりした体型が可愛らしいペキニーズですが、皮膚が非常にデリケートでちょっとしたことで指間炎にもなってしまいます。
もしペキニーズの指の間や足の裏が赤く腫れていたら、それは指間炎かもしれません。
今回はペキニーズの指間炎の予防法と治療法についてお話ししていきます。
指間炎とは足の指の間だけではなく足の裏も赤く炎症を起こし、足の大きさが倍近く腫れあがってしまうことがあります。
腫れるまではなくても執拗に舐めて指の間や足の裏が赤くなっていたら、それは指間炎になっている可能性が高いでしょう。
では、なぜペキニーズは指間炎になってしまうのか?その原因が気になりますよね。
原因にはいくつかありますが、多いものとしては次のような原因があげられます。
・お散歩で足裏が何かで傷ついた
・炎天下のアスファルトを歩かせ火傷
・足裏バリカンの際に傷がついた
・ストレスで執拗に舐めすぎた
・アレルギー
・足裏のムレ
いずれの原因も特別なものではなく、日常的に起こる可能性の高いものばかりです。
こうしたことが原因で指間炎になってしまわないように、普段からできる限りのケアをする必要があります。
ペキニーズが指間炎になってしまう原因はさまざまですが、普段から意識することで指間炎を予防することができるケースも少なくありません。
どうすればペキニーズの指間炎を予防できるのか、その方法をご紹介します。
犬は常に裸足でいる状態なので、お散歩に出るときは異物から足を守るために靴を履かせるのが有効的です。
犬に靴?!と驚かれるかも知れませんが、物理的にケガから守ることを考えるとぜひ活用してもらいたいところ。
特に災害時はガラスの破片など鋭利なものが落ちている危険性も高いため、靴を履かせることで指間炎だけでなく考えられる物理的な危険から守ることができます。
ただし、いきなり靴を履かせると抵抗を感じて動かなくなったり、嫌がって脱いでしまうといったことになるので、ある程度靴に慣れさせておくことが大事。
できれば子犬の頃から犬用の靴下などで練習しておくと、成犬になってからもスムーズに靴を履いてお散歩することができます。
ですが、成犬になってからでも毎日少しずつトレーニングすることで靴に慣れさせることはできるので、数分からでもいいのでトレーニングしてみるのもおすすめです。
夏場は特に気を付けなければいけませんが、お散歩の時間は人間がアスファルトを裸足で歩けるくらいの時間帯で行くようにしましょう。
「犬が裸足で外を歩くことは自然で当たり前のこと」というイメージから、つい気温や温度に対して意識が低くなってしまいがち。
確かに野生の世界では犬が靴を履くことはありませんし常に裸足で生活していますが、野生の世界では土の上や草の上を歩くことはあっても、炎天下の中アスファルトを歩くことはありません。
しかし、私たち人間と生活する中でアスファルトというのは日常的な道であり、そこは気温によって大きく温度が上下する環境です。
私たちは普段靴を履いているので気付きにくいのですが、日中のアスファルトはとても裸足で歩くことができない温度にまで上がっています。
そんな中を歩かせるというのは拷問のようなものですし、犬は平気な様子でも実は大きなダメージを受け肉球が火傷してただれてしまいます。
実際、温度が一番高い夏になると日中のお散歩による火傷で動物病院に来る子は非常に多く、病院側でもお散歩時間に対して注意喚起をしていました。
また、足裏の火傷だけでなく人間より低い位置に立っている犬にとって火の照り返しの影響はかなり大きく、生まれつきの毛皮もあるため常に高熱に囲まれている状態です。
人間でいうと炎天下の中で毛皮のコートを全身にまとい、そのままアスファルトの上で寝転がったり座ったりしているような状態。
火傷だけでなくそんな中にいれば熱中症になって命の危険にもさらされてしまうので、熱中症から身を守るためにも『人間が裸足でアスファルトの上を歩ける時間』にお散歩に行くようにしましょう。
トリミングに連れていくと足裏の毛をバリカンでキレイにカットしますが、急に犬が動いてしまったりトリミング技術がまだ未熟なトリマーにあたってしまうと、バリカンの刃が入り過ぎて傷をつけてしまうことがあります。
もちろん、トリマーも細心の注意を払って施術をしていますが、突然の動きに対しては経験が長いトリマーでも反応しきれないことも。
そうしてできた傷を気にして舐めてしまいそれが指間炎を発症するだけでなく、傷口からばい菌が入って二次感染を起こすことも少なくありません。
また、バリカンの刺激に対して敏感な子になると実際はケガをしていなくても、毛が剃られた感覚や違和感から舐めてしまうこともあるため、その場合はハサミで表面の毛だけをカットしてもらうとそうしたトラブルを防ぐことができます。
強いストレスを感じたり暇で仕方なかったりしたとき、犬は足の裏を舐め続けることがあります。
舐めている足を見たときに皮膚疾患とみられる症状がなければ、多くの場合はそうしたストレスなど心理的な原因でなめていることがほとんどです。
対策・予防法としてはできる限りストレスを感じないようにたくさん遊んであげたり、脳を使ったトレーニングなどを取り入れてあげるなどすることがおすすめ。
特にペキニーズは皮膚がデリケートな傾向にあるため、ストレスで足裏を舐めているだけでもそれが二次感染を起こし皮膚疾患を招くこともあります。
指間炎だけでなくそうした皮膚トラブルを防ぐためにも、ストレス発散や暇な時間対策をとってあげるよにしましょう。
アレルギーにもさまざまなものがあり、ノミアレルギー性皮膚炎や食物アレルギー、アトピー性皮膚炎といったものがあります。
ノミアレルギー性皮膚炎に限ってはノミの駆除・予防を通年することで防ぐことができますが、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎といった体質的なものはさらに踏み込んだ予防・対策が必要です。
食物アレルギーであれば、アレルギー用の療法食と症状に合わせて薬を使うことで症状を落ち着かせることができます。
アトピー性皮膚炎であれば、肌のバリア機能が大きく低下しているため肌のバリア機能を高めるために保湿をし、湿疹や炎症を鎮めるために薬を使っていきます。
また、アトピー性皮膚炎にも軽度で食事とシャンプーを意識すればほとんど薬に頼らなくても大丈夫な子もいますし、逆に生涯薬でコントロールをしなければいけない子も。
ただ、どちらにしても皮膚のバリア機能を高めて刺激になるものを避けてあげることがとても重要なので、食事から生活環境に至るまで気を付けてあげましょう。
足裏は毛が密集しているため定期的に足の裏の毛をカットしてあげなければなりません。
できることなら表面だけではなく中の方もカットした方がムレの対策にはなりますが、先述したようにバリカンに対して敏感な子の場合は表面のカットにとどめておきましょう。
また、足裏のムレは毛のあるなしだけではありません。
お散歩から帰ってきたときや汚れたときに足を洗う飼い主さんもいますが、このときに乾かし方が不十分なために指間炎を起こすことがあります。
これは足裏に限ったことではありませんが、湿った状態が続くと雑菌が繁殖しやすく皮膚トラブルを引き起こすため、しっかりドライヤーで乾かしてあげることが大切です。
お散歩後の足裏については毎回洗うのも大変ですし乾かし残しにもつながりやすいので、足の表面だけを軽くタオルで拭いてあげるだけでも十分です。
どうしても気になる場合は、ウェットシートで足の表面を拭く程度にとどめて湿気がこもらないようにしましょう。
ペキニーズの足野良や指の間が赤く腫れて指間炎になってしまったら、症状にあわせて飲み薬や塗り薬を使って二次感染や炎症を鎮めます。
飲み薬であれば体の中からアプローチするため気にしなくてもいいのですが、塗り薬になると場所によっては舐めてしまうこともあるので、使用の際は次のことを注意して使ってください。
5~10分程度で薬は浸透するので、最低でも5分舐めないように抱っこしたり遊んだりして、薬から意識を遠ざけるようにしましょう。
また、薬を舐めても大丈夫なのか?といった心配の声もよく聞きますが、大量に舐めない限りは心配はありません。
ただ、もし薬を舐めたことで嘔吐や下痢・ぐったりしているなど異常が見られた場合は、動物病院へ連絡してすぐに連れて行くようにしましょう。
塗り薬を使うにあたって飼い主さん自身が犬の注意を引くことができない場合、エリザベスカラーを使って物理的に舐めることができないようにするのもおすすめです。
エリザベスカラーは動物病院で購入することもできますし、ネットで検索すると簡単に見つけることができます。
また、エリザベスカラーにもいろんな種類のものがでてきているので、使いやすそうなものを選ぶといいでしょう。
薬用シャンプーを使って外部からケアする治療法もあり、これは美容ではなく治療なので獣医師の診察と処方が必要です。
なぜなら、薬用シャンプーにもたくさんの種類がありいずれも皮膚状態の目的に合わせた成分を配合し、適切な使用方法があるからです。
また、ただシャンプー剤に薬用成分が入っているというだけではなく、成分によっては犬だけではなく人間に対しても十分な配慮が必要なものもあります。
そうした注意事項などを理解せずに自己判断だけで使ってしまうと、皮膚状況の改善が見られないどころか、皮膚とは関係ないトラブルを引き起こしかねません。
そのようなことを避けるためにも、必ず診察をしてもらい適切な薬用シャンプーでケアするようにしましょう。
ペキニーズは皮膚がデリケートな犬種だけあって、ちょっと足の裏を舐めたりするだけでもすぐに指間炎に発展することがあります。
そのため、ある日足の裏や指の間が真っ赤になって腫れている姿に驚く飼い主さんもいれば、逆に全然気づかずトリミングなどに出したときに教えられて気付くことも少なくありません。
ちょっとしたことで指間炎になりやすいペキニーズではありますが、普段からできるだけケガ・衛生面・食事に気を付け、ペキニーズがストレスや暇つぶしで足を舐めることを防ぐことができれば、かなり効果的に予防できるはずです。
もしそうしたケアをしているにもかかわらず、頻繁に繰り返したりする場合はキングアガリクスのサプリメントもおすすめなので、そうしたものも一度ぜひためしてみてください。
執筆者:山之内さゆり先生
トリマー、動物看護士
約10年間動物病院でトリマー兼動物看護士として勤務。
現場で得た知識と経験を情報として発信し、飼い主さんとペットが幸せに暮らせるためのお手伝いをしていきたいと思います。
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