愛玩動物飼養管理1級執筆
執筆者:國澤莉沙先生
愛玩動物飼養管理1級、ホームドッグトレーナー1級、小動物看護士
動物病院の受診理由として、皮膚炎は愛犬が抱えやすい問題の一つです。特に日本犬である柴犬は人気犬種ですが皮膚炎にかかりやすい傾向にあります。
皮膚炎には様々な原因がありますが本記事では、総合的に柴犬が特にかかりやすい皮膚炎とその対処方法・主な治療法について紹介します。
これから柴犬を飼育したいと思っている方や、愛犬の皮膚炎にお悩みの方の参考になれば幸いです。
柴犬は、私たち日本人なら一度は見たことのある犬種ではないでしょうか?日本原産の土着の犬であり、昔から猟犬として人間の良きパートナーであった柴犬は忠誠心があり、 賢い犬種です。
立ち耳とクルンと巻いた巻き尾が特徴で身体つきは筋肉質であり、運動能力に優れています。性格も勇敢で忠誠心にあつく、飼い主に一途に従う従順さとしつけのしやすさが魅力です。
そんな柴犬は日本犬の中で唯一の中型犬であり、10キロ前後にしか成長しないことから日本の家庭でも飼育しやすく、人気があります。
また、ふわふわの密集した毛並みは触り心地もよく、見た目の愛くるしさも際立ちます。しかし一方で、他の犬種よりも被毛が密に生えている事から湿気がこもりやすく、皮膚トラブルが多いので注意が必要です。
早速、次項目より柴犬がかかりやすい皮膚炎を紹介します。
柴犬は皮膚トラブルが多い犬種であると冒頭で紹介しましたが皮膚炎の特徴をあらかじめ知っていると、早期発見にもつながります。愛犬に異常が見られた場合には早めに獣医さんの診察を受けましょうね。
柴犬がかかりやすい皮膚炎としてアレルギー性皮膚炎が挙げられます。人間にもアレルギーは身近なものですが犬にもアレルギーの症状が見られ、皮膚にアレルギー症状がひどく出てしまうとアレルギー性皮膚炎に発展します。
「原因」
アレルギー性皮膚炎の原因は食物やダニ、ハウスダストや花粉などのアレルゲンに触れたり、摂取したことが原因で起こります。個体によってこのアレルゲンは様々であり、症状にも多少の違いが見られます。
身体の中に異物が入るとそれを除去しようと免疫機能が働き、身体を守ろうとしますが本来身体には無害なはずの物質を異物と認識してしまい、身体の免疫機能が過剰に反応してしまうとアレルギーを発症します。このアレルギー反応が皮膚に起きることをアレルギー性皮膚炎と呼びます。
「症状・治療方法」
一番のアレルギー性皮膚炎の症状は激しいかゆみです。また、アレルゲンにふれてから短時間のうちに症状が現れます。手足や顔まわり、目の周りに赤く発疹ができることもあります。
また、激しいかゆみからかき壊してしまい、出血や傷ついてしまう危険もあります。かき壊してしまうと感染症にかかってしまい、新たに皮膚炎を併発する恐れもあるので注意が必要です。
主な治療方法はアレルゲンを徹底的に除去して触れさせないようにします。血液検査を行うことでアレルゲンの特定が可能であり、アレルゲンを早期に特定することが症状を悪化させないためには重要です。
かゆみなどの症状が強い場合には、抗ヒスタミン剤の投与や重度な場合には、ステロイドを併用してかゆみを沈静化させながら治療を行います。
ステロイドの使用には抵抗のある飼い主さんもいるかと思いますが正しく使えばステロイドは効果が大きいです。獣医さんと相談してみると良いでしょう。
また、感染により患部から出血などが見られる場合には抗生物質入りの外用薬や内服薬を用いて治療を行います。
また、食物アレルギーがある場合にはアレルゲンを除去したアレルギー用のドッグフードへ切り替えが必要です。最近ではアレルゲンになりやすい穀物類を使用していないグルテンフリーのドッグフードや低アレルゲン食材として注目されているラム肉を主原料としたドッグフードなど、アレルギーに配慮した商品が多く販売されていますので、獣医さんと相談してうまく取り入れることもポイントです。
柴犬がかかりやすい皮膚炎としてアトピー性皮膚炎があげられます。アトピー性皮膚炎はアレルギー性皮膚炎の中でも主にハウスダストやダニなどによって引き起こされる皮膚炎です。
「原因」
ハウスダストやほこり、ダニやノミなどを取り込んでしまうことにより起こる皮膚炎です。アレルギー性皮膚炎と原因が酷似していますが、菌類などを吸引することで起こります。また遺伝する可能性もあるので、親犬がアトピー性皮膚炎を持っている場合には、将来発症する可能性があります。アトピー性皮膚炎を起こしている物質を早期に特定することが大切です。
「症状・治療方法」
アトピー性皮膚炎になると患部の脱毛が見られ、皮膚の硬質化や黒く変色してカサカサするなどの症状が見られます。また、フケなどもでるため全体的に乾燥したような皮膚になります。かゆみを伴う場合にはかき壊しによる二次感染に注意が必要です。
好発部位は顔まわりや脚の付け根、鼠蹊部やお腹、耳の後ろなどにみられます。また、全身の脱毛が見られる全身性のアトピー性皮膚炎も見られます。
主な治療方法はアレルギー性皮膚炎同様、アレルゲンの除去が中心になります。さらにかゆみや傷などがある場合には、抗ヒスタミン剤やステロイドを投与してかゆみを沈静化させて抗生物質などの投与により、皮膚の再生を図ります。
さらには薬用シャンプーを用いて薬浴することにより、皮膚の落ちてしまったバリア機能を修復することも有効です。薬用シャンプーなどはネット通販などでも簡単に購入できますが、自己判断で行うと悪化する可能性があります。必ず獣医さんの指示通りに行うようにしましょう。
マラセチア菌という真菌の一種が原因で起こる皮膚炎ですが、犬の皮膚炎としとはポピュラーであり、柴犬もかかりやすい皮膚炎になります。酵母菌でもあるマラセチア菌によって、独特のにおいがある皮膚炎のため発見しやすい側面があります。
「原因」
真菌の一種である酵母・マラセチア菌が皮膚上で異常繁殖することによりかかる皮膚炎です。マラセチア菌はもともと犬の皮膚にいる常在菌であり、健康な犬の場合にはなにも問題はありませんが、なんらかの理由で皮膚のバリア機能が低下してしまうとマラセチア皮膚炎になります。
バリア機能が低下する理由は免疫系の病気である甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症や腫瘍、老化などがあげられます。そのため普段から栄養バランスのとれた食事を摂取するようにして抵抗力のある身体づくりをすることが大切です。
「症状・治療方法」
主な症状は脱毛や皮膚のベタつき、フケなどが見られます。また、酵母菌の一種であるマラセチア菌が繁殖することで独特の発酵したにおいがします。かゆみも強いため愛犬のかき壊しによる二次感染に注意が必要です。
好発部位は全身に症状が現れますが、頭部や背中、お腹や四肢に多く見られます。また、目の周りに発症するとかいた時に目を傷つけてしまうことがあるので、エリザベスカラーの使用が推奨されます。
主な治療方法はかゆみが強い際にはステロイドなどでかゆみを抑えつつ、薬浴による殺菌と皮膚の菌バランスを整える治療を行います。患部に炎症が見られる場合には先に抗生物質などを使用して、炎症を鎮めてから薬浴をします。
また、甲状腺機能亢進症などが原因の場合にはホルモン剤などを投薬して根本の病気の治療を並行して行います。また、マラセチア皮膚炎は一度なると繰り返すことの多い皮膚炎です。特に梅雨時期や夏場などは被毛に湿気がたまりやすいため菌が繁殖しやすくなるので、注意が必要です。
柴犬がなりやすい皮膚炎について紹介してきましたができればこれらの皮膚炎を未然に防ぎたいものです。皮膚炎を全体的に予防するための対策を紹介します。
皮膚炎にならないためには免疫力の強い身体づくりが大切です。そのためには適度な運動と栄養バランスのとれた食事が大切ですが、普段の食事からは摂取しづらい栄養素を補うためにはサプリメントが有効です。
身体の免疫力をアップさせる食材として、「アガリクス茸」を使用した商品は栄養価も高く丈夫な身体作りにはオススメです。アガリクス茸には老廃物を吸着して身体からの排出を助ける効果が高いとされています。
また、身体に必要なビタミン・ミネラル・酵素が豊富に含まれており、免疫力の向上に効果が期待できます。人のサプリメントにも使用されているアガリクス茸の豊富な栄養素はわんちゃんにも有効です。
被毛に湿気がたまると菌が繁殖しやすくなります。また、毛玉やフケ、皮脂は菌のエサでありこれらのエサが豊富にあると余計に皮膚炎を発症するリスクが高くなります。
ブラッシングはマッサージ効果もあり、皮膚の新陳代謝を高めてくれるので、被毛の生え変わりを手助けしてくれます。また、古い被毛を取り除くことで被毛が清潔な状態をキープできるのでバリア機能の向上につながります。
何よりブラッシングは愛犬と飼い主さんのコミュニケーションとしても大切です。日頃から身体をさわることに慣れさせておくことで動物病院などの診察をスムーズに行うことができ、愛犬の健康チェックもできるので、異常の早期発見につながりますよ。
飼育スペースが汚いと抜け毛やエサカス、排泄物などをエサにしてアレルゲンや菌が繁殖しやすくなります。特に愛犬の寝床やトイレは常にキレイにするようにチェックしましょう。飼育スペースを清潔にすることで様々な病気の予防につながります。
飼育スペースの掃除には次亜塩素酸水がオススメです。次亜塩素酸と水しか使用していないため、分解力が高い物質ですが犬が舐めても安全です。また、高い消臭効果が期待できます。
柴犬がかかりやすい皮膚炎について紹介しました。柴犬は被毛が密集しつているため、特にブラッシングをこまめに行い被毛の換気に努めるのがポイントになります。
また、飼い主に一途な柴犬はなによりも飼い主さんとのふれあいに喜びを感じますので愛犬とのふれあいを楽しみながら皮膚のケアができれば良いですね。
執筆者:國澤莉沙先生
愛玩動物飼養管理1級、ホームドッグトレーナー1級、小動物看護士等の資格を所持。
つくば国際ペット専門学校・ドッグトレーナーコースを卒業後、つくばわんわんランドの飼育員として5年間勤務。現在は主婦として、育児をしながら動物系の記事を執筆しております。猫・犬ともに大好きです。
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