愛玩動物飼養管理士執筆
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー
大谷幸代先生
素朴な外見とまっすぐな愛情を家族に向けてくれる柴犬は誰からも愛される人気犬種です。ここ数年はSNSで話題となり、世界的な人気者となる柴犬も続々と登場しています。
一見体が丈夫で皮膚病とは無縁に思われがちな柴犬は、実はとてもデリケートで皮膚病を発症することが多いことも特徴の1つです。今回は柴犬がかかり易いとされる皮膚病についてご説明させていただきます。
柴犬はなんとも言えない素朴な外見と手触りのいい被毛が特徴的です。
柴犬の被毛を根元からしっかりと観察すると、長さの異なる被毛が2層構造になっているでしょう。
短い被毛は綿毛状で寒さや風の通り抜けから体を守る役目を果たしています。
表面の長い被毛は通気性を維持し、皮膚の健康を維持する役目を果たします。
被毛が2層になっていることからもわかるように、抜け毛が増える換毛期には想像以上に大量の抜け毛があるものです。
換毛期に抜け毛をとり切れずに残ってしまった場合、自宅シャンプーで生乾きを繰り返すことで皮膚の状態が悪化し、皮膚病につながることもあります。
柴犬は短毛種といってもこまめなブラッシングが欠かせない犬種であることをしっかりと知っておいてあげましょう。
柴犬は体が丈夫そうというイメージを持たれがちな犬種です。
一昔前までは屋外で番犬として暮らすことが当たり前であったことがその背景でしょう。
ただ屋外で暮らしていた犬種だからといって、決して体が丈夫な訳でも、皮膚病と無縁な訳でもありません。
柴犬が皮膚病を患った場合に見られる症状は
〇全身のかゆみ
〇脱毛、地肌が見えるほどの脱毛、円形脱毛
〇皮膚の黒ずみ、変色
などです。
かゆみは全身で起こります。特に散歩やシャンプーの後など代謝が向上したタイミングで激しいかゆみを訴えるでしょう。
足で掻く、体を噛む、壁や床、アスファルトに体をこすりつけるなど様々な方法で辛いかゆみを解消しようとします。
中にはかゆみが原因となり、いらだちを覚え、家族や同居犬に威嚇や攻撃的な態度を見せることもあります。
健康的な抜け毛と皮膚病による脱毛の違いは、地肌が露出するかどうかです。
健康的な脱毛、換毛期による脱毛の場合、抜けた被毛の根元には必ず新たな被毛が生え揃っています。抜け毛を取り除いたからといって、愛犬の外見が変ることはありません。
しかし皮膚病による脱毛の場合、被毛の根元には新たな被毛が生え揃っていない、産毛しかない、
地肌が見えている、指で軽くつまむだけで束になって被毛が抜けるなどの特徴があります。
愛犬に皮膚病の特徴がみられる場合は、動物病院を受診し、皮膚の検査を受けましょう。
皮膚病は早期発見、早期治療が効果的です。
発症の原因によっては家族や他犬に伝染することもあります。
原因と突き止め、適格な治療法で愛犬の辛い症状を軽減してあげましょう。
今やほぼすべての犬が何らかのアレルギーを抱えていると言われています。
柴犬も決してアレルギーとは無縁ではありません。
食物性アレルギー発症リスクの高い食材は
〇動物性タンパク質(牛、ラム、チキンなど)
〇動物性油脂
〇動物性副産物
〇トウモロコシなどの穀物類
などです。
中にはドッグフードに微量に含まれる原材料に反応し、症状が起こるレアなケースもあります。
食物性アレルギーは原因となる成分を摂取しないことで、症状を緩和することが出来ます。
ただし抜け落ちた被毛が完全に生え揃うまでには、長い時間がかかることも珍しくありません。
また食物性アレルギーが原因で起こる痒みや皮膚の露出から、皮膚に傷が出来たり、患部が化膿したり、皮膚の乾燥が起きたりと新たな症状につながることもあります。
不安や異変を感じた場合は、動物病院で検査を受け、原因物質の特定をしてあげましょう。
生後間もない子犬、ペットショップで購入した直後の子犬、老犬など免疫力が低い、不衛生な環境で暮らしていた、ストレスなどが原因でかかり易い皮膚病です。
原因はアカラスと呼ばれるダニが原因です。
一旦発症すると、瞬く間に全身に症状が広がり、皮膚が完全に露出するほどの脱毛がおこります。
激しい痒みもあり、寝ている間でも飛び起き、体を掻いたり、噛んだりを繰り返します。
この症状は、家族や他犬への伝染もあるので、気になる症状は早急に動物病院を受診しましょう。
もし愛犬に
〇眉間のあたりの被毛が薄い
〇被毛を軽くつまむだけでスルリと抜け落ちる
〇軽く体を撫でただけで大量に被毛が抜ける
〇かゆみがある
このような症状がみられる場合は念のため、動物病院を受診しましょう。
アカラス同様に
〇免疫力が弱い
〇体力が低下している
〇過度なストレスを抱えている
〇不衛生な環境で生活をしていた
という場合にかかり易い皮膚病です。
原因となるのは、真菌と呼ばれるカビの一種です。
真菌は顔だけでなく足先や体の一部などの円形脱毛から症状に気が付くことが多くみられます。
最初は小さな脱毛部位もあっという間に全身に症状が広がります。
カビが全身に付着することで、患部が拡大するものの、目に見えないカビを完全に予防することが難しく、完治までに何度も再発を繰り返します。
ただ適切な治療と免疫力の向上で完治、改善することが出来るので、諦めずに治療に取り組みましょう。
また衛生的な生活を送っている場合でも、他犬から感染することもあるので、異変に気が付いた時は、早急に動物病院を受診しましょう。
病名の通りで、足の指の間の皮膚で炎症が起き、痒みや部分脱毛が起こる皮膚病です。
例えば
〇散歩後は足を洗う
〇自宅でシャンプーをしている
〇愛犬が足を頻繁に舐める癖がある
という場合に起こりがちです。
湿り気を帯びた皮膚に雑菌が繁殖し、炎症が起こります。
発症後は痒みが起こり、ますます愛犬は患部を気にしてしまうので、悪循環に陥ります。
足指の間の皮膚はとても薄くデリケートなものの、指の間は通気性が悪く、雑菌が繁殖しやすいと
皮膚病が悪化する条件が整っています。
ただこの症状は患部への薬剤の塗布だけでは完治出来ないことも知っておきましょう。
〇散歩後の足拭きは乾いた布を使用する
〇シャンプーや雨でぬれた場合はしっかりと乾燥させておく
〇足を舐めることを予防するためにエリザベスカラーを着用させる
〇ストレスや不安を解消できるよう生活習慣を見直す
これらも治療と合わせて取り組んであげると、症状改善につながります。
3歳を過ぎた柴犬に徐々にみられる症状の1つにホルモンバランスの乱れによる原因不明の脱毛があります。年齢があがるにつれ、発症数も増え、10歳を超えると脱毛だけでなく、皮膚の変色や変質も起こります。
ホルモンバランスが関係した症状は、薬剤の服用だけで完治させることは難しく、個々の体質や生活習慣、遺伝的な特徴をかんがみた治療や対処が必要です。
ただ原因の特定が難しい上に、効果的な治療法は確率されておらず
〇免疫療法
〇かゆみ止め
〇化膿止めの服用
といった対処療法が主流です。
日々の食事にサプリメントを取り入れ、不足しがちな栄養素を補うことや加齢による免疫力低下へのケアを行うことで症状が改善されるケースもあります。
柴犬は皮膚病にかかり、かゆみを覚えると過度な力で体を掻いたり、執拗に患部を噛むことが多々あります。その結果、体に傷が出来、化膿したり、新たなかゆみが起こってゆきます。
愛犬がかゆみや脱毛など、健康な状態とは言えない症状を見せている時は早急に動物病院を受診しましょう。
執筆者 大谷幸代先生
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー
学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。
ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。
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