獣医師執筆
森のいぬねこ病院グループ院長
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属
西原 克明(にしはら かつあき)先生
近年、ペットでも腸内細菌の研究が数多く報告されるようになりました。
ご存じのとおり、現在では腸内細菌と動物の健康は、切っても切れない関係です。ペットも人間と同じように、腸内細菌が健康維持や病気治療のために注目されおり、いわゆる「腸活」と呼ばれるような、ペットの腸内細菌をケアするペットフードやサプリメントも多くみられています。
しかし、ペットの中でも腸内細菌に関しては、犬の研究はあるものの、猫のものはあまり多くありません。
そこで今回は、筆者がわかる範囲ではありますが、猫の腸内細菌についてお伝えいたします。
そもそも腸内細菌といっても、動物の腸内にはものすごくたくさんの細菌が存在しています。例えば人では、諸説ありますが、500兆個から1000兆個の腸内細菌が、日々入れ替わりながら存在していると考えられています。
一方で、猫ではこのようなデータは報告されていませんが、人よりは小型とはいえ、相当の数が存在しているのは間違いありません。ちなみに、人間の細胞の数は約60兆個と言われていますので、体の全部の細胞よりも腸内細菌の数の方がはるかに多いようです。
また、腸内細菌の種類については、やはりこちらも諸説ありますが、人では約1000種類存在していると考えられています。猫でははっきりした報告はありませんが、同じように相当数の種類が存在していると思われます。
その腸内細菌の種類ですが、人では古くから、年齢に伴って腸内細菌の種類やそれぞれの細菌の割合が変化すると言われています。新生児から離乳後、青年期、成年期、老齢期のそれぞれの段階で、腸内細菌が変化します。
実は猫もこれと同じように変化することがわかっています。ただし、これらの変化が何によってもたらされ、実際の健康にどのような影響があるかまではわかっていません。
では、腸内細菌の種類は、猫や犬、人で違いがあるのでしょうか。
実は、人と犬は腸内細菌が似ていると言われていて、乳酸菌(乳酸桿菌)やビフィズス菌が存在し、体にとって役立つ善玉菌として多く存在しています。
その一方で、猫はそういった善玉菌よりも腸球菌と呼ばれる細菌の割合が多いことが報告されています。
また、人や犬では加齢と共に、乳酸菌やビフィズス菌の割合が減っていくのですが、猫の場合は腸球菌が減っていくことも知られています。
このように、猫は人や犬と比べて、腸内細菌の特徴が異なっています。その理由は不明ですが、個人的には食性の違い、つまり人や犬は雑食で、猫は完全な肉食動物であることが関係しているのでは、と考えています。
しかし、別の研究機関では、動物種としての食性だけでなく、ペットフードや生活環境(室内飼いか外に出るのかなど)にも大きな影響を受けていると推察しており、まだまだ解明は進んでいません。
このような猫に特徴的な腸内細菌が、実際にどのように猫の体に影響を与えているのか。やはりこれについてもはっきりしたことはわかっていません。一般的には、腸内細菌は、免疫に深く関わっていることがわかっています。
動物の免疫細胞は、そのほとんどが「腸」に存在していると言われています。そして腸内細菌は、それら腸内に存在している免疫細胞に直接的にも間接的にも大きな影響を与えています。
実際に人の研究では、アレルギーやリウマチ、自己免疫性疾患、ガンなど、免疫が深く関わっている病気では、腸内細菌が変化していることがわかっています。さらには自閉症や肥満といった、直接的には免疫細胞とあまり関係ないような病気でも腸内細菌の変化が報告されています。
また、免疫系だけでなく、腸内細菌はビタミンやアミノ酸など、体に必要な栄養成分を作ることができ、栄養学的な面からも重要な役割を担っています。
このように、腸内細菌は様々な病気との関連性がわかっています。逆をいえば、健康を守るためには、腸内細菌のケア(=腸活)が重要であると言えます。
腸内細菌を良い状態に保つためには、最も大切なのはやはり食事だと言えます。ある研究では、食事中の食物繊維や脂肪の量を変化させると、腸内細菌も大きく変化することが報告されています。また、筆者自身の研究でも、同じ犬でも食事の内容によって腸内細菌の種類や割合が大きく変化するという結果が得られました。
猫ではこのような研究報告はまだまだ少なく、はっきりしたことは言えませんが、人や犬、あるいはマウスなどの動物ではいずれも食事による腸内細菌の変化が報告されていますので、猫でも同じなのは間違いありません。
そして、食事の中でも最も重要なのが、主食となるキャットフードあるいは手作りごはんです。例えば腸活に役立つサプリメントを摂っていたとしても、主食が乱れていると、それは決して良い腸活にはならないのです。
キャットフードの選び方については、ここではテーマが異なりますので詳細は別の機会に譲りますが、原材料の品質や割合、添加物の種類と量、製造や流通過程での品質管理などが大きく影響しています。
また、近年は猫でも手作りごはんを作るケースが増えているように思います。手作りごはんは、それぞれの猫に合わせたレシピに調整したり、栄養バランスを調整したりすることができます。さらには消化性については、キャットフードよりもはるかに良いため、腸活に有利になるものと思われます。
しかしその一方で、猫と人間との栄養バランスは全く異なりますので、猫専用に設計する必要があること、必要に応じてサプリメントが必須になること、手間とコストがかかることなどのデメリットもあります。
いずれにしても、猫の主食は、一頭一頭の健康状態をチェックしながら、なるべく良いものを選んであげてください。
また、猫の腸活には、主食以外にもサプリメントが非常に重要です。
特にキャットフードでは、今でこそさまざまなコンセプトのものが市販されていますが、正直なところ、そこまで猫の腸活に著しく役立っているキャットフードは、本当にごくわずかしかありません。個人的な意見にはなりますが、ほとんどのキャットフードは、腸活だけでなく猫の健康全体から見ても、十分なものとは言えず、何かしらのサプリメントは必須だと考えています。
しかし、人や犬の腸活サプリで有名な乳酸菌やビフィズス菌サプリメントは、それらの菌よりも腸球菌が豊富な猫にとって、どこまで有利に働くかははっきりとは分かりません。そこで、特定の腸内細菌よりも、もともと腸内にいる菌を活性化するようなサプリメントを取り入れることをお勧めします。
例えば、キングアガリクスは、直接腸内細菌に働きかけることがわかっています。また、キングアガリクスは猫でもさまざまな体の不調に役立つことがわかっていて、腸内細菌に良い影響があることは明らかだと言えます。
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また、猫のサプリメントは、キャットフードよりも選び方がさらに重要です。つまりより高品質なものを選ばなければならないのですが、キングアガリクスは、原材料の品質はもちろん、添加物や品質管理の視点からも、猫のサプリメントの中でも最高級の製品であるのは間違いありません。
猫の腸内細菌の研究はまだまだ発展途上です。しかし、筆者が獣医師として日々診療する中で、やはり猫の健康や病気に関して、腸内細菌が重要なのは間違いなく、さらには猫には猫の腸活が重要だと実感しています。これからは、猫の腸内細菌についても徐々にさまざまなことがわかってきますので、より猫の健康維持や病気管理に役立つ腸活法が確立されると思われます。
猫の腸内細菌は、人や犬と大きく異なっていることがわかっていて、さらに年齢によって変化することもわかっています。しかし、それらがどのように猫の健康維持に役立っているのか、あるいは猫の病気に関わっているのかはわかっていません。しかし、実際の獣医療の中では、猫でも腸内細菌をケアすることで、健康維持に役立っているのは明らかです。猫には猫の腸活を取り入れることで、より健康的な生活を送ることができると考えられます。
執筆者
西原 克明(にしはら かつあき)先生
森のいぬねこ病院グループ院長
帯広畜産大学 獣医学科卒業
略歴
北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。
所属学会
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会
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