獣医学部生執筆
猫エイズとは、猫免疫不全ウイルス(FIV)によって引き起こされる感染症です。人の後天性免疫不全症(HIV)と同じ仲間ですが、人のエイズが猫に、猫のエイズが人に伝染することはありません。エイズウイルスはいろいろな動物が持っており、猿などでは感染しても何の症状もありませんが、人のもので一番症状が重く、猫は人の次に重いといえます。
ウイルスが猫の体に侵入すると、体が本来持っている「病気に負けない反応」、つまり「免疫反応」を弱らせてしまいます。この状態を「免疫不全」といい、その結果、健康であればかからないような病気にまでかかってしまうようになります。日本での感染率は、野良猫を中心に2割ほどといわれています。
猫エイズは、感染している猫から咬まれることにより、感染猫の唾液に含まれるウイルスが、咬まれた猫の傷から体内に入ることで感染します。また、感染している母猫が子猫を舐めたときや、同じ食器を使ったときにも唾液を通して感染する場合があります。
特にかかりやすい猫種はありませんが、オス猫や自由に外出している猫、感染している母親から生まれた猫でかかりやすいといえます。
ウイルスに感染してから「免疫不全」状態になるまでは以下の3段階に分けられます。
感染直後や初期には、「軽い発熱」や「食欲の低下」、「全身のリンパ節が腫れる」などの症状が数週間みられます。
いったん症状が消える「無症状潜伏期」となります。この間にもウイルスは体の中に潜伏し続け、数年間経ってからまた発症します。
「免疫不全」状態といわれるのがこのときです。「口内炎」や「食欲不振」、「鼻炎」、「結膜炎」、「発熱」、「体重の減少」、「下痢」、「貧血」などのさまざまな症状がひとつまたは複数組み合わさって現れます。症状は、強くなったり弱くなったりしながら悪化していきます。
飼い主さんは、病気がかなり進行した「第三期」になって異常に気づくため、残念ながら診断のわずか数ヶ月後に死亡してしまうこともよくあります。そのため、なによりもウイルスをもらわないことが大切となります。
今のところ、FIVを退治してしまう薬は存在しません。そのため、症状を抑える薬を使った治療が中心となります。症状が重く進行している場合は、入院が必要になることもあります。
猫エイズには残念ながらワクチンがないため、完全に予防するには、感染している猫との接触をさけるしかありません。猫を自由に外出させず、完全に部屋の中で飼育することがいちばんです。また、外出させる場合にも、避妊・去勢の手術をすることで闘争心を減らし、ケンカなどに巻き込まれないようにしてあげましょう。
※この記事は麻布大学獣医学部のご協力により作成いたしました。
【PR】ペット用キングアガリクス100
皮膚・毛並みが気になるワンちゃん、ネコちゃんに対する飼い主様満足度82.5%、獣医師の満足度84.6%
© 2024 ケーエーナチュラルフーズ株式会社