獣医師執筆
公益財団法人 日本動物愛護協会
常任理事 獣医師 須田 沖夫
ストレスによる精神疾患など多くの病気が人には見られます。自覚症状がないものから、重症化し入院治療で長期化するものなど症状は広範です。
しかし人同士は直接面接し、会話もでき、各検査も可能なので医師の診断の確率性は高まります。さらに精神科専門医師も多数おり、カウンセリング等で信頼関係もでき、内面の気持ちや経過も分かり、診断、治療法が確立します。
一方で、自分のことを話さない患者は、完全な診断ができず長期化もよく見られます。
犬猫に関しても、患者である犬猫は獣医師と直接会話ができないので飼い主がいかによく観察し、状況変化をよく見て、正確に報告してくれることが大切です。直接症状のみの診断では治療が長期化し苦労することも多くあります。
室内猫が急に頻尿で赤い尿をするので来院したところ、尿検査で潜血反応と蛋白が少し出ました。沈渣では赤血球、白血球が見られ、結晶や細菌などは認められませんでした。急性出血性膀胱炎として治療したら数日で改善しました。
数週間後にも同様の症状で来院し、同様の尿検査結果で治療もし、改善しました。また、数週間で同じ症状で来院、来院曜日を見たら同じ曜日のため、その曜日に何か変わった事はないかと質問すると娘さんの夫が遊びに来るとのこと。猫とすれば家族外の人が来るのでストレスになり膀胱炎を起こしたと思われると話しました。猫はその後その夫にも慣れ、膀胱炎は見られなくなりました。
小型犬が左前肢を舐めるので毛がなくなり、皮膚炎になったので来院しました。食欲、元気はあります。皮膚炎部にスライドを当てて塗色後、顕微鏡で見ると上皮、角化細胞と共に赤血球、白血球(好中球)が見えたので化膿性皮膚炎として治療したら、患部の舐めが減り、赤味も減り、2週間後には毛が生えてきました。この犬は1ヵ月前に1人住まいの妹が入院したので兄宅で飼い始めたら、左前肢を舐めるので皮膚炎になったとのことでした。飼い主がおらず別の住宅であまり知らない人が世話するのでストレスになり足を舐めたので皮膚炎になったものと思われます。
ペットホテルに預けると初めての場所で、狭いケージに入れられ、知らない人が世話するので、犬猫の多くはストレスになり食事を摂らず、嘔吐、下痢や便秘を起こすことが時折見られます。
3~4日すると空腹になり、少しずつ食べだす犬猫も多いですが、1週間後に迎えに来ると毛ヅヤが悪く、毛も抜けて痩せている場合も時にあります。
これらは環境の変化、世話する人が違い食物も違うのでストレスの可能性が高いと思われます。
以前、犬猫を連れて病院や老人施設、学校等に訪問活動することが珍しいとき、ルールもしっかりしておらず、飼い主も犬猫もよく理解していないので、訪問活動を始めて10分くらいで犬猫が不安感を持ち、落ち着きがなくなり、入ってきたドアの方を気にしたり、ドアの近くに行き入居者など人の方を見なくなり、時に排尿し、毛が抜けやすくなる個体もいました。その後、訪問のためのルールをしっかり作り、社会化、しつけ、ワクチン、駆虫、シャンプー、トリミングなど十分にしている犬猫を参加させるようにしたところ。その後ストレスの犬猫は減少しました。
夏になると犬猫はカミナリや花火の光や音と臭気に反応し、恐怖心から逃げたり、隠れたりします。時には家から逃げ出し、交通事故にあったり家に戻れず迷子になり、警察や動物保護センターに保護・収容されたりします。その時、犬猫にマイクロチップが挿入され、AIPO(動物ID普及推進会議:窓口 日本獣医師会)等に登録されているとすぐに飼い主が分かります。また、テレビの地震速報の音等にびっくりして落ち着きを失って隠れてしまう犬猫もいます。
犬は嗅覚・聴覚が敏感で、猫は聴覚・視覚が敏感です。飼い主などの人の動きにも敏感ですので反応に注意しないと犬猫がより強く反応してストレスになります。
犬猫は出産後2ヵ月間以上は母子が一緒に生活し、本来の生態等を学習し、数人以上の人との接触で人との関係を学ぶことが新しい飼い主との正しい関係を作ります。犬猫も家族の一員とも言いますが、同列でなく上下関係をつくり、飼い主の指示で行動することがストレス防止に役立ち、人と動物との関係が充実し問題の少ない楽しく明るい生活ができます。
犬は数万年前から人との生活をしていますが、犬種や地域、飼い方によって個体差が大きいので、自分の経験のみに頼って行動しない方が飼い主はじめ人や犬猫のためと言えるでしょう。
*公益財団法人 日本動物愛護協会 常任理事 獣医師 須田沖夫先生 に記事を作成して頂きました。
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