獣医学部生執筆
動物の体の働きのほとんどは、神経系およびホルモンによってコントロールされています。そのうちホルモンは、体の決まった部分で作られ、血管やリンパ管によって運ばれます。そしていろいろな器官を刺激し、それらの器官が特定の働きをするようにしむける化学物質です。ホルモンは神経系に比べてゆっくりと体の働きを調節したり、成長や成熟をコントロールしたりする役割を持っています。
糖尿病は、このようなホルモンの中で、膵臓(すいぞう)から分泌される「インスリン」と呼ばれるホルモンの異常によって起こります。
「インスリン」は、体の細胞が糖分を吸収するのを助ける働きを持っています。そのため、「インスリン」が不足したり、十分に作用しなくなったりすると、体の細胞は糖分を吸収しにくくなり、体にさまざまな不調があらわれます。この病気になると尿から糖が見つかることから、これを糖尿病と呼びます。
糖尿病の原因は遺伝的な要因がつよいと考えられています。またその性質がよりつよくでるのは、主に犬が太り過ぎになったときともいわれています。適切な体重を維持できるように心がけましょう。糖尿病を治療せずに放っておくと、命に関わる病気に進行することもありますので、注意が必要です。
犬の糖尿病は200頭に1頭の割合でみられますが、そのうちの大部分は6歳以上の犬です。そして老齢になると、メスがオスの4.5倍もかかりやすくなることがわかっています。
犬種別で見ると、小型犬ではダックスフンドやトイプードルでよく発症します。大型犬ではゴールデン・レトリーバーやジャーマン・シェパードで多くみられます。
糖尿病になると、大量に水を飲み、おしっこの量が増えます。また多くの場合、食べ物をたくさん食べていても体重が減ってしまいます。肝臓がふくらむため、おなかが大きくなることもあります。症状が進むと目には白内障があらわれます。
血糖値を何回かくり返し調べて、その値が高い場合には糖尿病を疑います。
治療には、「インスリン」の投与と「食事療法」をおこなうのがふつうです。「インスリン」は、獣医さんの指示に従って適切な量を飼い主さんが毎日注射します。注射といっても、慣れれば簡単にできるものなので安心してください。「インスリン」の効果は注射してから18~24時間ほど続きます。
毎日の運動量もあまり変えないようにしましょう。よく運動した日には注射する「インスリン」の量をいつもより減らすなどして、調整することができます。獣医さんに相談してみてください。
食餌は決まった時間に、毎回同じカロリーの食べ物を与えるようにします。これは糖尿病に限ったことではありませんが、ほしいままに食べ物を与えてしまうとさまざまな病気の原因を作ることになるので気をつけましょう。食餌は、量よりもカロリーが問題となります。そのため食べ物をたくさんほしがる場合は、カロリー源にならないような野菜を多く与えるなど、工夫してあげてください。
※この記事は麻布大学獣医学部のご協力により作成いたしました。
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