獣医師執筆
公益財団法人 日本動物愛護協会
常任理事 獣医師 須田 沖夫
今夏は天候不順で8月には台風が4回も本州に上陸し、北海道にも3回上陸し、これは記録的なことでした。
牧草地の草の成長が遅れ、刈り入れもうまく進まず畜産業も大変です。関東の海水浴場も人が少なく、早期に止めるところもありました。
天候不順が続くと気温の急激な上昇や低下、雨が急に降ったりして犬の散歩などの外出も減少し、体調不良や食欲不振を起こし、体重の増加や減少も見られます。
ストレスにもなりやすいので、ペットへの対応に気をつけてください。
飲水量と回数、首の脊部の皮膚をつまみ離した時にすぐ戻るか。被毛の光沢と抜毛状態、体重の増減、口腔の血色、動きの状態などよく観察することが、病気の予防や早期発見に対する飼い主の責任です。
動物は外敵などに攻撃されないように症状を隠すので、症状がはっきりしたらかなり進行した状態の可能性が高いので回復に時間がかかります。
今年の9月は残暑の可能性が高く、昼夜の温度差が大きくなるので充分気をつけてください。
秋に咲く花も多いので犬猫も花粉等によるアレルギー反応として皮膚の赤み、湿疹、脱毛と舐めこわし、鼻汁をたらす、乾性の咳などが見られます。アレルギー反応は花粉の種類、動物の体質等によって違うので、常識的な知識や経験では見落とすことがあるので、よく観察してください。診断も同様です。
9月は犬の皮膚病はよく見られます。急性湿疹やアレルギー皮膚炎、真菌性皮膚炎等で動物病院外来患者の10%くらいになります。また、マダニの寄生も4%以上あります。
下痢、胃炎や食欲不振や跛行、爪の外傷など運動障害も見られます。
10月になるとノミ寄生は8~9%になり、皮膚炎、急性湿疹、アレルギー性皮膚炎などで8~9%になります。胃炎、下痢は減っています。
11月にはノミは半減し、皮膚炎も8%くらいに減少しますが、膿皮症が目立ちます。
胃腸障害は減少します。寒くなると循環器障害がよく見られるようになります。
外耳道炎は1年中よく見られます。
季節の変動で気温も変動するので膀胱炎が多く見られますが、今年はストレス性の膀胱炎も見られます。
フィラリア、マダニ、ノミ、条虫、鞭虫等の寄生虫も見られますが、現在は駆虫剤を投与する飼い主が増えており、仔犬の頃から飼っている犬の寄生虫は減少していますが、ボランティア団体等からの保護犬を引き取るとフィラリア寄生虫犬が多く見られます。
林や草むらに入る犬猫はノミやマダニをつけてきます。これらは人にも寄生するので定期的に駆虫剤を投与してください。
各種ワクチン接種も定期的にお願いします。ワクチンメーカー等の資料では犬狂犬病の接種率は50%以下。混合ワクチンは30%以下で、猫は10%くらいです。症状が発症してからの治療は難しいので予防してください。
夏バテ対応、各種予防接種、駆虫薬の投与、そして各対応として栄養状態や環境変化への対応も実行してください。
人とペットの共生には病気予防と早期発見・治療が必須です。
*公益財団法人 日本動物愛護協会 常任理事 獣医師 須田沖夫先生 に記事を作成して頂きました。
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