獣医師執筆
公益財団法人 日本動物愛護協会
常任理事 獣医師 須田 沖夫
正常な免疫反応は、外部から侵入してくる生物や組織、物質等から動物(宿主)を守る非常に重要な役割を受け持っています。しかしながら、通常は動物を守る働きをするものがある状況において動物にとって有害な反応をすることがあり、これをアレルギー反応や過敏症と言います。自己免疫疾患は動物の組織が動物自身の免疫反応によって傷害を起こします。
犬猫の免疫力につい ては、一般的にはワクチン接種の時に獣医師から説明を受けることが多いと思います。
多くの犬猫の新生児は、母体より各種免疫を受けます。母体が各種のワクチン接種を定期的に受けていなかったり、ウィルス感染後治癒していないとウィルス抗体を持っておらず、免疫として子供に伝播させることができず、ウィルスなどに感染し、発病すると死亡することが多いです。多くの場合、仔犬・仔猫は母体の初乳からウィルス感染の免疫抗体を受け、生後2~4ヵ月で減少して免疫力が消失し、その後感染すると発病して死亡することが多いです。
そのため、生後2~4ヵ月の間に免疫力を高めるために2~4回の予防接種をすることで、抗体を作り、免疫力を高めるので、その後ワクチンに入っているウィルス感染に対して発症予防ができます。ウィルス感染症治療の特効薬がないので、飼い主は確実な予防接種をすることが必須です。数回のワクチン接種後抗体価が高くなりますが、1年位で減少し免疫力も低下するので、毎年のように愛犬・愛猫に予防接種をすることが大切です。
ワクチンは改良され、新しい疾患も含まれているので毎年のように接種しましょう。狂犬病は法的に毎年の接種が義務付けられています。
犬猫の免疫系は、時に自己の組織を異物として認識し、特定の標的臓器や組織に対して液性および細胞性免疫反応を引き起こします。これによって臓器や組織に臨床的な障害を発生させるので、免疫介在性疾患と言い、またこれを自己免疫疾患とも言っています。これらは突発性あるいは原発性に起こるアナフィラキシー、細胞障害性抗体免疫複合体病、細胞性免疫反応、過敏症と免疫不全症、腫瘍なども免疫系に異常を起こします。
薬物療法中やワクチン接種直後に発生します。これらは犬の方が猫より発症頻度が高いようです。
免疫介在性瀉血貧血、多発性関節炎、糸球体腎炎、全身性後紅斑性狼瘡、皮膚炎、多発性筋炎や発熱などいろいろ発症します。
免疫系は液性、細胞性、食細胞性の3つがあり、検査も血漿、血清、組織などを使用しているが確定診断が難しく、症例の病歴や臨床病理的情報など慎重に評価することで診断を行っています。
病因とは免疫学的要因、遺伝的要因、ホルモン、内分泌要因、ウィルス感染など考えられ、症状や診断、治療もいろいろあり対応が大変です。
免疫は自己を健康に保つための機能なのですから、愛犬・愛猫のためにワクチン接種はもとより日常の健康管理に気をつけましょう。
*公益財団法人 日本動物愛護協会 常任理事 獣医師 須田沖夫先生 に記事を作成して頂きました。
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