獣医学部生執筆
生活環境が豊かになり、猫の平均寿命もだんだんと伸びています。感染症を予防するワクチンも普及し、いろいろな病気に対する治療法も進歩しました。その結果、猫にも老齢になってかかりやすい病気が増えてきました。癌もそのひとつです。
癌というのは、もともとは正常な細胞が、あるとき急に変化して異常な細胞を生じたものです。この異常ながん細胞は限りなく増えつづけ、正常な細胞が持っていたようなはたらきを果たせなくなります。そしてついにはまわりの正常な組織まで広がって害を及ぼしてしまうのです。
(増え続けるがん細胞のイメージ)
もし癌が見つかった場合、一刻も早く対応することが大切です。癌の種類によっては手術で切除すれば安心できるものも少なくないからです。猫の癌の原因はさまざまで、「ウイルス」、「遺伝」、「環境」、「栄養」、「ホルモン」など多くが関係すると考えられています。そしてどの場合にも、初期の治療がとても大切です。
猫の癌の中で代表的なものに、「リンパ腫」、「乳癌」、「扁平上皮癌」があります。このうち「リンパ腫」は老齢の猫に多く、「乳癌」は避妊手術を受けていないメスの猫、とくに年を取ってから出産した猫に多い病気です。また、「扁平上皮癌」は白い毛の猫におこりやすいといわれています。そのような特徴はありますが、癌はすべての品種の猫に起こりうる病気だといえます。
癌にはわかりやすく特有の症状というものがないため、発見が遅れることもめずらしくありません。しかし、癌のサインといわれる症状はあります。以下のようなサインがいくつか当てはまる場合、すぐに獣医さんにみてもらうようにしてください。
この他とくに、顔や耳の形が変わったり、乾いた咳が続いたり、おなかが腫れていたり、おしっこやうんちの様子がおかしいと感じた場合は危険性が高いため、急いで診察を受けてください。
癌の治療でもっとも良い効果をあげているのは、健康診断による早期発見と早期治療です。とくに体の表面にできた癌は、猫の体をなでたり触ったりする日常生活の中で早い時期にみつけることができます。猫が高齢になるにつれて癌を生じやすくなるので、7〜8歳をすぎたら定期的な検診を受けることが大切です。
癌が見つかった場合、詳しい検査をおこない、その診断結果によってもっとも適した治療法を選択します。また、治療した後にどのような経過をたどるかも検査から判断できます。
具体的な治療法としては、癌を手術で取り除くといった「外科手術」、抗がん剤など薬を用いる「化学療法」、放射線を当てて癌細胞にダメージを与える「放射線療法」などさまざまな種類があります。状況によってこれらを組み合わせて治療することもあります。また、癌の性質や進行状況によって回復をのぞめないときには、猫ができるだけ苦しまずに一日でも長生きできるような治療を目標におこないます。
※この記事は麻布大学獣医学部のご協力により作成いたしました。
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