獣医師執筆
公益財団法人 日本動物愛護協会
常任理事 獣医師 須田 沖夫
犬は種類、年齢、環境、そして飼い主の考え方、飼育法の違いによって病気の発生率等は違います。
仔犬においては環境、対応などによって栄養失調、寄生虫、細菌やウィルス感染の発生率が違います。
生後2か月前後に検便をして、適正な駆虫剤の投与と混合ワクチンの接種が病気の予防になります。
また、この間に犬の社会化として仔と母犬、仔犬同士、そして人間との関係を十分上手に対応していないと、将来問題行動を起こします。
ペットショップも同様の対応が必要で、一頭一頭のケージ飼育が一般的ですが夜間など仔犬同士で飼育すると社会化が出来、問題行動を起こす犬が減少します。問題行動も仔犬の時のしつけと甘やかし防止等が予防になります。
仔犬の販売時に、販売員は飼い主に十分な飼い方を具体的に教えてください。
飼い主は買い入れ時の状態で食事を与える人が多いので、栄養失調になる犬が見られます。犬の成長は早いので、毎日のように食事量少しずつ増加してください。また、動物病院に行き健康チェックしてもらい、検便やワクチン接種をすることで病気予防や早期発見ができます。
成犬では可愛がりすぎて運動や散歩をせず、食事や間食を多く与える人が増加しており、肥満体の犬が増加しています。肥満は運動器官や循環器官障害を起こしやすくなるので適正な対応をしてください。
外耳道炎は以前は多い疾患でしたが、現在は多種多様な薬が販売されており慢性症が減っていますが、汚れや臭気、そして耳振りなどあれば診察を受けてください。
皮膚病は感染症、アトピー、ストレスなど原因はいろいろあり、症状も多種多様です。ペットフードやシャンプーなど体質に適したものを使用することで、アレルギーなどの予防も出来ます。人用の食事等にも注意してください。
高齢犬については脊椎や関節の異常から歩行障害を起こします。肥満、運動不足や無理な動きが関与しています。
循環器系は早朝などの乾性の咳、血色が悪い、粘膜を押して離した時の戻りが遅い、呼吸が早い、腹部呼吸、動きが鈍い、四肢の浮腫、食欲減退、フセ状態ができない、などを起こします。これらのことが急激に起こった場合は短期間で亡くなる場合もあります。
これらの症状を見たら早期に病院に行き、経過、身体一般検査、聴診、心電図、レントゲン、エコーなどの検査をして、それに適した治療を開始します。早期発見、診断、治療が重要ですので、飼い主の健康チェックが大切です。
腫瘍は身体のどこの臓器にも発生します。若い時に発生する腫瘍もあります。生後半年くらいで去勢、避妊することで生殖器系の腫瘍が減少し、健康寿命を延ばします。
身体をよく触ることで、皮膚がんなど体の表面にできる表在性の腫瘍を早期に見つけることが出来ますので定期的に触れてください。
内臓器の腫瘍は犬ではなかなか症状を現さないので、発見が遅れます。食欲、便、尿、呼吸、血色、疲れ、痩せ方や運動など気を付けてください。
脳神経障害も増加しています。以前は10歳以上の日本犬主体の痴呆症が多く見られ、昼夜逆転、徘徊、ムダ吠え、狭いところに入って出られないなどが見られ介護が大変でしたが、予防法も見つかり減少しています。近年は洋犬にも見られ、苦労している飼い主も増加しています。
犬は人と同様少子高齢化になり循環器、腫瘍、脳神経や運動障害などの病気が増加していますので、飼い主は充実した対応をして、健康体を保って永く一緒に楽しく明るい生活をしてください。
*公益財団法人 日本動物愛護協会 常任理事 獣医師 須田沖夫先生 に記事を作成して頂きました。
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