獣医学部生執筆
動物やわたしたち人間が生活している空間には、小さくて目には見えないたくさんの微生物が存在しています。そのほとんどは無害ですが、なかには有害な、あるいは病気を引き起こす微生物も含まれています。そのような悪い微生物が動物や人間の体の中に侵入してすみつき、増殖して体のはたらきにいろいろな異常を引き起こす病気を「感染症」といいます。
「感染症」の原因となる微生物には細菌、ウイルスなどがあり、いずれも肉眼では見ることのできない小さな生物です。この微生物が土や空気などの環境中から、鼻や口および傷口などを通じて動物に感染したり、または動物から動物へと感染したりして発症します。母乳を通じて母犬から子犬に感染することもあります。
動物や人間の体には、このような悪い微生物から自分のからだを守る「免疫」という仕組みがありますが、子犬はまだこの「免疫」が弱く、また高齢になるにつれて「免疫」は弱まっていきます。その他に、何かの病気にかかっているときや、飼育環境が悪いときも「免疫力」は低下します。このように「免疫力」の弱まっている犬は、まわりと同じ微生物に接していてもより感染症にかかりやすくなっており、また発症すると症状が重くなりやすいために注意が必要です。
「感染症」の症状は病原体の種類によって異なり、「発熱」や「食欲不振」、「元気が無い」、「嘔吐」、「下痢」、「息苦しい呼吸」など非常にさまざまです。症状が軽い場合は「かぜかな」と思う程度で見過ごしてしまうことも多く、免疫力の高い成犬などではそのまま治ってしまうこともあります。反対に、かなり激しい「下痢」や「嘔吐」、「息苦しい呼吸」などの症状が急に現れることもあります。
とくに免疫力が弱くなかなか病原体を撃退しきれないでいると、弱った体力につけこまれ、他の細菌などにも同時に感染されやすくなります。そしてそのように同時に複数の感染が起こると、症状は悪化し命に関わる事態にもなりかねません。このことからも、免疫力を維持することはとても大事だといえます。
原因となる病原体がウイルスの場合、そのウイルスをやっつけるために有効な治療薬というのはないことが多く、主に症状を抑えて回復を目指す治療と、食事や安静などに気をつけることが中心となります。
原因が細菌の場合、まずは抗生物質を用いて細菌を撲滅する治療と、あわせて輸液や栄養剤の投与がおこなわれます。症状が進んでいると治療が困難な場合もあり、早めの対処が肝心です。
「感染症」のなかには、犬の生命を奪うことになる重大な病気も少なくありません。また、犬から人間に感染して病気を引き起こすものもあります。愛犬を感染から守るためにも、できる限りの予防をすること、定期的に健康診断を受けさせることが大切です。
具体的な予防法として、ワクチン接種があります。ワクチンで予防できる「感染症」は多く、効果的なので忘れずに病院で接種するようにしましょう。基本的には生後2ヶ月で第1回、さらに1ヶ月後に2回目を接種して、以後毎年1回ずつの接種をおこないます。
また、外での感染を防ぐために、散歩中道に落ちている食べ物や他の犬の排泄物に接触させない、他の犬とけんかにさせないなどの注意をしましょう。そして普段から体の状態に気を配り、身の回りにより良い環境を保つように心がけることが予防につながります。
※この記事は麻布大学獣医学部のご協力により作成いたしました。
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