動物看護士執筆
公益財団法人 日本動物愛護協会
相談室長 動物看護士 大橋志保
春はスギやヒノキの花粉が飛ぶ季節。花粉症の方にとっては辛い時期です。実は犬や猫も花粉症になることを皆さんはご存知ですか? 愛犬・愛猫が、毎年、春や秋など同じ季節に皮膚を痒がったり、体調不良になる場合は花粉症を疑ってみるのも一つです。今回は犬や猫の花粉症についてご説明します。
1995年にアメリカで確認された犬の花粉症。医療が進歩している昨今ですが、まだまだ最近の話で、飼い主さんの半数が気づいていないようです。実際のところ、我家の愛犬は年間を通して皮膚の痒み等があるので、花粉症であっても気がつきにくい・・・しかも、くしゃみを連発。アレルギー検査をするべきかもしれませんね。
人間の場合は「くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみ」が花粉症の4大症状と言われていますが、犬や猫の場合は呼吸器や鼻炎の症状よりも「皮膚、耳、目の周りのかゆみ」といった皮膚炎の症状を示すことが多いようです。もちろん、中には人間と同じような症状が出る場合もあります。
犬猫の皮膚は人間よりも薄く、デリケートにできているので、花粉によって体のあちこちが痒くなるのも納得できます。症状として皮膚に赤みがでてきたり、腫れぼったくなったり、痒がりだします。痒がる仕草として、手足でかく、激しく舐める、咬む、壁や床に体を擦りつけたりします。
人間と同じように動物病院で血液検査等の「アレルギー検査」を行います。アレルギー反応は花粉だけでなく、様々なアレルゲンが原因となります。ハウスダストや食物による場合もあり、それぞれ対処や治療、予防が異なりますので、気になることがあればかかりつけの獣医さんに相談をしてみましょう。
花粉症と診断されたら、花粉をなるべく遠ざけることが大切です。家でできる対策は私たち人間と同じで「花粉を持ちこまない」ことです。室内で過ごす猫にとっては、飼い主さんが花粉を持ち込まないことが重要となります。
24時間365日の連続運転が理想です。夜間や留守中に停止にしていると、空気の流れがないため、室内に浮遊していた花粉や埃が床に落ちて溜まりやすくなります。そんな床に愛犬・愛猫が寝そべったりしては逆効果です。
また花粉の侵入が多くなりそうな帰宅時や洗濯物を取り込む際は、大きな風量で運転しましょう。
設置場所は人やペットが集まり、在室時間の長いリビングが最適です。
一般的に花粉の飛散はお昼頃から15時頃までがピークと言われています。この時間を避けたり、晴れて気温の高い日や空気が乾燥して風が強い日、雨上りの翌日などは花粉の飛散量が多いため注意が必要です。犬猫はマスクやゴーグルをつけるわけにもいきません。
花粉がつきにくい素材の洋服や花粉付着防止スプレーなどを上手に利用しましょう。洋服は帰宅したら脱がせ、室内に花粉を持ち込まないようにし、散歩後は濡れタオル等で優しく体を拭きましょう。肉球の間や顔もお忘れなく!
花粉等のアレルギー物質が部屋中に溜まります。
空気清浄機は優秀ですが、ほとんどの犬猫は清浄機よりも目線が低く、床に近いところに顔があり、床に落ちてしまった花粉等については威力を発揮しにくいため、濡れた布での拭き掃除が有効です。
花粉アレルギーのある犬は、果物や野菜に対してアレルギー反応を起こしやすい特徴があります。スギ花粉に対してアレルギー反応陽性の犬が「トマト」を食べることで、同様のアレルギー反応を起こしたという報告があります。これは抗原となる花粉と構造上似たもの(交差抗原)をとったことで起ってしまうこと(口腔アレルギー症候群)によります。
スギ花粉とトマトのほか、ブタクサとスイカやセロリ、ヨモギとニンジンなどが交差抗原であることが知られています。花粉にアレルギー反応がある場合は、食事内容にも注意が必要かもしれません。
私たちは、痒い! 辛い! と言葉で症状を訴えることができますが、ペットの場合はただ飼い主さんによく見てもらい、気がついてもらわなければ、ずっと痒い! 辛い! まま過ごすことになります。どんな時でもペットには飼い主さんしかいません。頼りにしています。
*公益財団法人 日本動物愛護協会 相談室長 動物看護士 大橋志保先生 に記事を作成して頂きました。
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