愛玩動物飼養管理士執筆
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー
大谷幸代先生
柴犬といえば、洋犬種が人気犬種上位にランクインする中で、安定した人気を誇り、日本犬で唯一常に人気ランキング上位入りを果たす犬種です。
飼い主の大変忠実で、賢く、体のサイズも室内で共に生活するにはちょうどいいと幅広い世代から人気を集めています。
最近では、室内飼育世帯が増えたこともあり、本来の柴犬のサイズより小柄な柴犬も誕生しています。
最近では、その風貌と飼い主への忠実さ、落ち着いた性格が評価され海外でも人気を集め、話題になっています。
柴犬の皮膚、毛並みの特長といえば
・被毛は硬く、短く、定期的な被毛のカットは必要ありません
・抜け毛が多く、こまめなブラッシング欠かせない
・被毛の密集率が高いので、皮膚の状態を把握しにくい
という特徴があります。
柴犬は日本の寒暖差に耐え、屋外で生活が出来る様にと豊富な被毛で体を守っていました。
その為、夏には細く、硬い被毛で皮膚の風通しをよくする事、体温調節をする事、冬には綿のような下毛が生え揃い厳しい寒さに耐える体質が出来上がっています。
しかし、最近の室内飼育環境では、この豊富な被毛が飼い主の悩みの種にもなってしまっています。
柴犬を室内で飼い始めると、多くの方が
・想像以上に抜け毛が多くて、驚く
・自宅でシャンプーをすると、なかなか乾かない
・ブラッシングをしても、抜け毛を取り切れない
と感じるそうです。柴犬の飼い主さんであれば、この点はきっと共感出来る事でしょう。
しかし、柴犬にとって季節ごとに抜け毛をしっかりと取り除いてあげる事も大切な健康管理の一つです。
抜け毛を取り除く事で皮膚の風通しがよくなり、新陳代謝の促進にもつながります。
面倒な抜け毛ですが、上手な付き合い方を習得し、何とか乗り切ってあげましょう。
柴犬といえば「体が丈夫」「手がかからない」とついその外見からイメージをしていませんか?
しかし、実は柴犬も他犬種同様にアレルギー発症率が高い犬種と言われています。
柴犬がアレルギーと無縁な存在と思われていた理由には、これまで屋外飼育が当たり前だったので、飼い主が愛犬の不調に気がついていなかった事、アレルギーという概念が当時はまだ浸透していなかった事が理由に挙げられます。
しかし、共に室内で生活をするようになり、愛犬の些細な不調にも目が行き届くようになった事で、柴犬もアレルギー発症率が高い事が知れ渡ったのです。
その為、食事の管理は
・アレルギー原因を早期に特定し、極力除去する
・ドッグフードを切り替える時は、試食期間を設けて、体質に合うかをしっかりと見極める
・犬本来の食性にあった安全、安心な食生活をつづける
ように心がけてあげましょう。
また、柴犬の中には金属アレルギーを発症するケースもあります。
首輪などの金属やステンレスの食器などに反応する事もある事を知っておいてあげましょう。
柴犬のアレルギーの症状には
・かゆみ
・皮膚の荒れ
・湿疹
・脱毛
などが見られます。中でも、口の周り、目の周り、鼻の周りの被毛が集中的に抜ける症状がよく見られます。
このような症状が思い当たる時は、出来るだけ早期に動物病院を受診しましょう。
実は、飼い主さんの多くは顔に現れた症状をきっかけに愛犬の不調に気がつくそうです。
しかし、実は症状は顔だけでなく、全身に起きています。
柴犬は被毛が密集しているので、なかなか皮膚そのものの異常に気がつきにくいのです。
顔の口、目、鼻の周りは元々被毛が短いので、脱毛が起きるとすぐに異変に気がつけるというだけです。
アレルギーや不調は早期発見、早期対処が何よりです。
柴犬の被毛は健康状態のバロメーターの役割を果たしています。
健康で内臓機能も順調な時は、毛艶があり、やわらかく、手触りのいい感触をしています。
痩せすぎ、栄養不足、内臓機能の不調があると、撫でた時に手に刺さるような硬い感触の被毛になってしまいます。
柴犬のお世話は
・こまめにブラッシングをする
・月に一回程度を目安にシャンプーをする(抜け毛が特別目立つ時期は、月に2回程度のシャンプーがおすすめです)
・シャンプー後は被毛の根元までしっかりと乾かす
・抜け毛は全て取り除く
このようにしてあげましょう。
特に、抜け毛対策は大切なお世話です。
抜け毛が飛び散るからと洋服を着せる事もありますが、その時は脱がせた後にしっかりとブラシをかけ、被毛内に籠った湿気を取り除いてあげましょう。
・スリッカーと呼ばれる金属製ブラシを使用する
・シャンプー前にブラッシングをし、抜け毛を取り除いてからシャンプーをする
・首輪周り、尾の付け根、お尻周りは抜け毛が溜まりやすいので、特にしっかりとブラッシングをする
・綿の様な抜け毛は、出来る限りすっきりと取り除く
という方法が効果的です。
ブラッシングというと、つい背中など撫でやすい場所だけで終わってしまってはいませんか?
実は、犬の抜け毛は身体の後方や下部にたまりやすいものです。
犬は日ごろ、オスワリをしている事、フセている事が多いのでお尻やお腹周りの被毛が圧迫され、抜け落ちずにそのまま生えている被毛に絡まってしまうからです。
ブラッシングの時には、あえてこの場所をしっかりとケアする事で、各段と室内に抜け落ちる抜け毛量を減らす事が出来ます。
(ももちゃん)
慢性的にかゆみがあり、湿疹もできやすいと通院を続けていたももちゃんですが、抜け毛対策の方法を工夫しただけで、ずいぶんと改善する事が出来ました。
いつも、夜は家族と同じ布団で寝ているので、布団に抜け毛がつかないようにと、足首まで覆える洋服を毎晩着せていました。
その上、春秋の抜け毛の量の多さに、日々の掃除には手がかかり、家族の洋服にもたくさんの抜け毛ついてしまうと日中も洋服を着せ、散歩に出る時にだけ洋服を脱がせるという生活を送っていました。
ももちゃん自身、洋服を着る事をまるで嫌がらないので、まさかこの事が不調の原因だとは家族の誰もが思いもしなかったものです。
でも、このことが原因で本当であれば抜け落ちるはずの抜け毛がそのまま体に残り、洋服や布団で湿気がこもり、皮膚が常に蒸れた状態になってしまっていたのです。
そこで、毎日少しずつブラッシングをする事、抜け毛が多い時期はトリミングショップを利用し、しっかりと抜け毛を取り除いてもらうこと、室内では出来る限り洋服を着せない事と生活を見直したところ、徐々にかゆみも治まり、健康的な状態に皮膚、被毛が改善されました。
柴犬の皮膚や毛並みから健康状態をチェックするときは、横たわった姿勢に寝かせてから
・内股
・首
・脇の下
などの部位を確認してみましょう。
この部位は比較的被毛が薄いので、皮膚そのものをしっかりと確認する事が出来ます。
健康な状態の皮膚は薄いピンク色をしています。
しかし、加齢とともに色は黒みがかりますが、紫に近い黒、湿疹やあかみがある場合は不調のサインです。
この様な時は、体の他の部位にも異常が起きている可能性もあります。
食事や健康状態で気になる事があれば、早期に動物病院を受診してあげましょう。
柴犬は日本犬特有の忍耐強さがあるので、多少の不調を感じていても、あまり態度には表しません。
また、体が丈夫な犬種という飼い主さんの先入観も重なって、不調の早期発見のタイミングを逃してしまうこともあります。
シャンプーやブラッシングのタイミングで、皮膚、被毛のチェックも同時に済ませるように、心がけておいてあげましょう。
*このコラムは大谷幸代先生に記事を作成して頂きました。
【大谷幸代先生】
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー
メディカルトリマー
学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。
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