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ポメラニアンの皮膚・毛並みを良くする秘訣

愛玩動物飼養管理士執筆

ポメラニアン

愛玩動物飼養管理士

青山ケンネルスクール認定 A級トリマー

大谷幸代先生

ポメラニアンの皮膚・毛並みの特徴

ポメラニアン

ポメラニアンは愛玩犬種(ペットとしての飼育を前提に輩出された犬種)の中では珍しく、被毛の構造が2層で出来ています。体のラインを表す表面の長く、細く、艶のある被毛(外側の層)と寒さをしのぎ、体を保護する役目のある短い綿毛(内側の層)です。このような構造は、猟犬や寒さの厳しい環境で輩出された犬種に多く見られる特徴です。

 

ポメラニアンの生活環境では、日々の生活で寒さに耐える必要性がほぼありませんから、このような被毛の構造は単にその外見を特徴づけるためだけの意味を持っていると言えます。

 

ポメラニアンは特にオスの場合、メスに比べ格段と被毛の量が多く、外見も豪華な印象になります。

最近では、基本色のレッド(茶色)やクリーム(ホワイト)以外に、ブラックタンやブラック&ホワイトといった複数色の被毛も持つタイプも誕生し、益々人気が高まっています。

 

ポメラニアンは人気犬種上位でありながらなかなかペットショップで見かける機会が少ない、店頭に並んでも驚くほどに価格が高額で驚かれた事がある方も多いでしょう。

 

これは単に人気がある、外見が可愛らしい、被毛の色が希少だからではありません。ポメラニアンは小型犬の中でも特に出産頭数が少ないという特徴があり、一回の出産で1,2頭しか生まれないことが多い犬種です。その為、人気があるにも関わらず、子犬の数が不足してしまい高額設定になってしまうのです。

 

ポメラニアンによくある皮膚トラブルは?

犬、質問

ポメラニアンの非常に多く見られる皮膚トラブルに、子犬期の「アカラス」「真菌」といった病気があります。

これらの病気は、生後間もない時期、まだ免疫力が十分に備わっていない時期に多発する傾向があり、顔の脱毛が起きる事で発症に気がつく事が多い病気です。

感染初期は、目や口の周りの被毛が部分的に抜け落ち、皮膚が見えるようになります。その後次第に全身に脱毛が広がり、悪化してしまうと全身の被毛が抜け落ちてしまうこともあります。

 

アカラスの真菌の完治のために

・動物病院で処方された薬を必ず飲ませる事

・動物病院で処方される殺菌効果のある薬用シャンプーで、2,3日おきにシャンプーをする事

・ベッドやタオルなど愛犬が日々使用する物は、二次感染予防のために常に清潔に保つ事

が必要です。愛犬の健康状態や体質にもよりますが、数か月でほぼ完治する事が出来ます。

 

多頭飼いの場合は、他犬への感染を予防する為に、発症している犬は隔離した生活をさせ、直接的な触れ合いは回避する必要があります。

この病気は、免疫力が低下している時期に起こりやすく、子犬と合わせて老犬にも注意が必要です。

 

ポメラニアンの毛並みをキレイにする秘訣

犬の毛並み

ふわふわとした被毛が特徴のポメラニアンの被毛を綺麗に整えておく秘訣は

・丁寧なブラッシング

・毛玉を作らない工夫

・抜け毛をしっかりと取り除く

事です。ポメラニアンのボリュームのある被毛は、表面の長くしっかりとした被毛とその下に生える短い綿毛の2層構造で出来ています。この両方の被毛をしっかりとケアしてあげる事が可愛らしい姿を保つ上で欠かせません。

 

ブラッシングの方法

犬 ブラッシンング

被毛表面の汚れや絡まりを整え、全体の毛の向きを揃える事から始めます。この時は、「スリッカー」と呼ばれる細い針金状のブラシを使用します。このブラシは、細かい汚れや抜け毛をしっかりと取り除く事が出来ますが、強くブラシをかけてしまうと皮膚を傷つけてしまうこともあるので、力加減には注意が必要です。

 

どの程度の力加減がいいのか?と迷った時は、自身の手の甲をスリッカーで軽く梳かしてみるとわかりやすいでしょう。ちょうどいい力加減を把握する事が出来ます。

 

毛玉がある時は、このスリッカーを使用し、丁寧に毛玉をほどきます。毛玉になっている部分の被毛を引っ張らないように、毛玉に自信の手を添えスリッカーでほどいていきます。毛玉が大きい時、愛犬が嫌がる時は、毛が生えている向きと同じ方向になるようにハサミで毛玉に切れ目を入れると、ほどきやすくなります。

 

次にコームと呼ばれる平らな櫛を使用します。コームの役割は、被毛の絡まりや毛玉がないかのチェックをする事です。愛犬の首から尾に掛けてコームで梳かした時に、ひっかかりがなければ、その部分のブラッシングを終えてもよいというサインです。

 

コームがひっかかる時は、まだからまりや抜け毛が残っているサインですから、もう一度スリッカーで梳かします。

 

コームで梳かす時は、被毛の表面だけでなく、根元までコームが届くように注意し、根元に残っている綿毛の抜け毛もしっかりと取り除きましょう。

 

ポメラニアンの抜け毛や毛玉は、脇、内また、下腹部、耳の後ろ、尾の付け根にも目立ちます。ブラッシングをする時は、背中だけでなく、これらの部分も丁寧にお手入れをしてあげましょう。

 

自宅でシャンプーする場合

犬 シャンプー

自宅でシャンプーをする時は、愛犬の体を濡らす前に十分にブラッシングをし、汚れや絡まり、抜け毛、毛玉を取り除いておきます。

ポメラニアンのように短い綿毛がある犬種の場合、抜け毛などが残ったままの状態でシャワーをし、被毛を濡らしてしまうと、濡れた被毛がフェルト状になり固まってしまいます。フェルト状になってしまった被毛は乾燥後もほどける事がなく、毛玉になったり、皮膚が蒸れてしまったりとトラブルを起こしてしまうので注意が必要です。

 

こんなことで皮膚・毛並みがキレイになったミルクちゃん

ポメラニアン

ポメラニアンの男の子のミルクちゃんは、生後間もない子犬の頃から、被毛はボリュームがあり、ふわふわとした可愛らしい姿をしていました。ポメラニアンはカットが必要ない犬種なのでと、日々のお手入れは自宅で済ませ、トリミングショップを利用する事もありませんでした。

 

食事にはとても気を遣い、毎食手作りで用意していたにも関わらず、かゆみが目立つようになり始め、動物病院を受診した所、かゆみの目立つ部分は実は大きな毛玉になっていると説明されました。自宅でのお手入ればかりを何年も続けていたので、気がつかない間に、抜け毛が残ってしまい、その状態でシャンプーをしていたので固まった被毛同士が絡み合い、一枚のフェルトで体が覆われてしまっていました。

 

さらに冬の寒さ対策にと洋服を着せる事も多く、床暖房のある部屋で過ごしていたので、益々皮膚が蒸れてしまい、湿疹ができてひどいかゆみをもたらしていました。

 

そこで、まず皮膚の状態を整え、薬が直接浸透するように被毛を短くカットする事になりました。短く被毛をカットしたことで、どの部分の皮膚がトラブルを起こしているのかが明確になり、患部がよく見えるようになったので自宅での薬の塗布もスムーズに出来ました。

 

その後、数か月で被毛は元の状態に生え揃い、今後は抜け毛をしっかりと取り除けるようにと、ブラシを2種類買い揃え、シャンプー前にはしっかりとブラッシングを済ませるようにお手入れの方法が改善されました。

 

ポメラニアンの皮膚・毛並みのチェック法

チェック法

ポメラニアンは被毛の量が多い犬種なので、抜け毛も相当量あります。健康な状態であれば、抜け毛は全身くまなく抜けますが、もし部分的に皮膚が見える程脱毛している場合は、注意が必要です。

 

アカラスや真菌といった病気に感染している場合、脱毛部位の被毛を指で軽くつまみ、引っ張ってみましょう。この時、なんの抵抗もなく被毛が束で抜ける場合は、すぐに動物病院を受診し、原因菌の特定と早期に治療開始が必要です。

 

また、去勢避妊手術後にホルモンバランスが乱れ、過度な脱毛が起こることもあります。この様な場合は、投薬治療で早期の改善を目指すよりも、食事、運動を十分にさせ、健康的な生活をさせる事で自然の改善される事を待ってあげる方が愛犬への負担を少なくする事が出来ます。

 

ポメラニアンは、数ある犬種の中でも比較的アレルギー発症率が低い犬種です。また、長寿な事でも有名な犬種ですが、骨格が非常に華奢なので、骨折などの怪我には十分な注意が必要です。生まれ持っての愛玩犬気質で、飼い主もついその可愛らしさに夢中になってしまいますが、これこそポメラニアンと暮らす醍醐味ともいえるでしょう。

 

補足情報:トリマーさんに質問しました

質問

Q1.ポメラニアンの仔犬に【アカラス】【真菌】に関する病気が多いとありますが、これはポメラニアンの仔犬に特別多いのでしょうか?多い場合、もし理由などがあれば教えて下さい

 

A1.アカラスの発症に関しては、なぜポメラニアンに多いのか医学的に明確な理由は特定されていません。ただ初期症状は顔から始まる事が多いのですが、同じような顔のチワワやパピヨンにはアカラスはほぼ見られません。

ペットショップでは、ポメラニアンの仕入れはアカラスの発症の有無を厳重に確認したうえで行われています。ブリーダーからの仕入れの場合、半数以上が発症する事もあります。

万が一、仕入れ後に発症が確認された場合は、完治までに数か月かかり、販売機会を逃すためです。

真菌も同様で、なぜポメラニアンに多いのか医学的な根拠はありません。

ペット業界では、ポメラニアン独自の体質という事で認知されています。

 

Q2.ポメラニアンのブラッシングについて

ちょうどいい力加減=気持ちいい程度でいいのでしょうか?(それとも痛ギモチいいなど?)

 

A2.ブラシの加減は、人間の手の甲を犬の皮膚に見立て、痛みを感じない程度です。スリッカー自体の先端が細くとがった針金状なので、少しでも力を入れると痛みを感じます。

犬 喜ぶ

*このコラムは大谷幸代先生に記事を作成して頂きました。

トリマーさん

【大谷幸代先生】

愛玩動物飼養管理士

青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー

学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。

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著者⼀覧 Author

  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

  • 山之内さゆり先生

    動物看護士・トリマー

  • 國澤莉沙先生

    愛玩動物飼養管理1級

    ホームドッグトレーナー1級

    小動物看護士他

  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

    ペットアドバイザー