獣医学部生執筆
犬のウンチは健康のバロメーターです。ウンチの状態を毎日観察することで、胃腸の病気だけでなく全身の健康状態をチェックすることができます。観察のポイントは、ウンチの「固さ」、「色」、「におい」、「1回あたりの量」、「1日の回数」などです。
健康な犬のウンチは、ティッシュペーパーでつまめるくらいの固さで、色は黒かったり血が付いていたりしない茶色、いつもと同じにおいで、毎日一定の量であることが理想的です。うまくつまめないほど柔らかいときは、下痢と考えましょう。犬が下痢になる原因には、「食べ物の与えすぎ」、「脂肪分の多い食べ物」、「腐った食べ物」、「感染症」、「ストレス」などがあります。
下痢といってもウンチの状態はさまざまですが、その中でも急を要するものには、水のように流れてしまう液体状の「水様便」、表面に赤い血の付いた「血便」、白い粘液の付いた「粘液便」があります。これらのウンチが見られた場合、原因として「感染症」などの病気が考えられ、急激に悪化して命に関わる可能性もあります。すぐに動物病院に連れて行ってください。
その他に、地面に痕跡が残るような柔らかい「軟便」、黒く変色した「タール便」、どろりとしたカレー状の「泥状便」が見られるときは1日注意深く様子をみてあげてください。もしそれでも下痢が続いたり、元気が無い、よだれを垂らしている、おなかを触ると極端に嫌がるなど他の症状を感じたりするようであれば迷わず動物病院に連れて行きましょう。下痢が治まり元気もいつも通りあるようなら、ひとまずは大丈夫です。
病院に連れて行く際、できればウンチを持参して検査してもらうのがスムーズです。採取したウンチは、ビニール袋やアルミホイルなどに包んでおきます。ティッシュペーパーなどに包むと、水分を吸ってしまうため検査しにくくなります。また、夏は細菌が繁殖しやすいため保冷剤や氷で冷やして保存しておくとより良いでしょう。
ウイルスや寄生虫などの「感染症」が原因の場合、原因となっている病原体の種類に応じた抗生物質や駆虫薬を用いた治療に加えて、体力の回復をはかる治療が中心となります。保温と安静を保ち、下痢がひどく脱水を起こしている場合には輸液をして改善を目指します。
「食べ物」が原因の場合、食事内容や与え方に気をつけましょう。おやつを与えすぎない、古い食べ物を与えない、適切な量を守ることはもちろんですが、特に手作りの食事は栄養バランスが偏りがちなので注意が必要です。栄養量の調整されたドッグフードを与えるのが一番ですが、手作りが良い場合は脂肪分や塩分が多くならないよう、ドッグフードをベースに消化のいい野菜や肉などを加えるのが良いでしょう。下痢をしやすい犬のために配合された、整腸作用があるフードも売っています。
「ストレス」が下痢の原因となることもあります。引っ越しや新しいペットのお迎えなど環境の変化には敏感に反応してしまう子もいますので、安心して快適に休むことのできる居場所を確保してあげるなどの環境づくりを今一度心がけましょう。
※この記事は麻布大学獣医学部のご協力により作成いたしました。
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