愛玩動物飼養管理士執筆
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー
大谷幸代先生
ラブラドールレトリバーの皮膚、被毛の特徴は実は抜け毛が非常に多く、細く短い被毛が年間を通じてよく抜け落ちます。
短毛種の場合、お手入れが楽そう、抜け毛がすくなそうと思われがちですが、元は水辺で仕事をする猟犬です。
冷たい水に入っても体温が低下してしまわないように十分な量の被毛で体を守っています。
本来の体質では春と秋の換毛期に抜け毛が目立ちますが、最近はラブラドールレトリバーも室内で暮らす事が多く、年間を通じて気温が管理されている環境にいるので、春と秋に限らず抜け毛があります。
ラブラドールレトリバーのように短い、硬い被毛は指でつまみ取り除く、粘着ローラーで巻き取る、掃除機で吸い取るという方法が効果なく、掃除の手間がかかります。
抜け毛は床に抜け落ちる前にシャンプーやブラッシングで先に取り除いておく方がよいでしょう。
ラブラドールレトリバーに多い皮膚トラブルはアレルギーです。
これは短毛種ならではの体質で、意外にもデリケートで、子犬の頃から食事の内容には十分配慮してあげる必要があります。
出来れば、子犬のうちに血液検査を受け、アレルギーの原因となる物質を特定しておいてあげる方法がお勧めです。
アレルギーは特定の物質に反応する体質を持っているだけなら支障はありません。
特定の食べ物を事前に除去し、アレルギーとして発症させなければ、生涯薬を使わずに過ごす事も出来ます。
でも一旦発症させてしまうとその後は食事療法、薬の投与など生涯を通じて対処に追われます。
成長後のラブラドールレトリバーを連れての定期的な通院は決して楽な事ではありません。
事前にどの物質が危険なのかを把握しておいてあげましょう。
ラブラドールレトリバーのアレルギー症状はかゆみ、脱毛、湿疹、赤みなどがあります。
被毛の密集度が高いので、初期の症状を発見しにくいこともあります。
日ごろ、愛犬を撫でる時、遊ぶ時、シャンプーをする時は、内股や脇、耳など皮膚、被毛が薄い部分をしっかりと確認してあげましょう。
皮膚、被毛が薄い部分は比較的症状を確認しやすい部分です。
短毛種特有のデリケートさをもつラブラドールレトリバーの毛並みをキレイに保つ秘訣は、
①週に1,2度はマッサージを兼ねたブラッシングをする
②抜け毛をしかりと取り除き、新陳代謝を活発にする
③異変があった場合は早期発見、早期治療を心掛ける
④症状の悪化をふせぐために、患部をしっかりと保護する
短毛種の場合、ついブラッシングの必要性がないように考えてしまいがちですが、定期的にブラッシングをしてあげる事で、体に残った余分な抜け毛が取り除かれ、皮膚、被毛の通気性がよくなり、適度な刺激で新陳代謝も向上します。
ブラッシングにはラバーブラシと呼ばれるゴム製の柔らかいブラシを使用し、全身をくまなく梳いてあげましょう。
大きい犬の場合、ついブラッシングがつい背中だけで終わりがちですが、抜け毛が残り易い部分は、首や脇、下腹、お尻です。
これらの部分をしっかりとブラッシング出来ていると、抜け毛のお悩みから解放されます。
ラバーブラシは抜け毛が静電気でブラシに絡みつくので、お手入れがとてもスムーズに済む優れモノです。
レイラはもう13歳になるラブラドールレトリバーです。
若い頃からアレルギーがあり食事療法をつづけつつ、季節の変り目の症状が強まる時期は一時的に洋服やサポーターを着用し、患部の悪化をふせぎ日々、調整をしています。
レイラのようにアレルギーがある場合、自宅でシャンプーをした直後に強いかゆみがあらわれ、掻き壊したり、壁に体をこすりつけたり、時には出血をする事もあります。
高齢になった事で皮膚はますますデリケートになり、ちょっと掻いただけでもすぐに悪化してしまいます。
このような状態のレイラにはあえてブラッシングをしない事、シャンプーは天気のいい日に低温のシャワーで済ませ、ドライヤーもごく短時間で済ませるようにお手入れをしています。
アレルギー症状は血流がよくなる事、皮膚を刺激する事で一時的に症状が強まる事があります。
高齢になったレイラは特にその傾向が強く見られます。
その為、体を清潔に保ちつつ、極力刺激を与えない方法がベストなのです。
お手入れの方法は愛犬の健康状態や体質、年齢によって都度見直してあげる必要があります。
若い頃に使っていたシャンプーがシニアには刺激が強い事もあります。
愛犬に出きる限り負担にならないように工夫をしてあげるとよいでしょう。
ラブラドールレトリバーの皮膚、毛並みのチェックにはこまめに全身をチェックする事が必要です。
ラブラドールレトリバーのように体が大きい犬種の場合、飼い主が触れる部分が実は限られています。
撫でるのであれば頭や背中に無意識のうちに限定されています。
当然抱き上げる事もないので、下腹や首、脇、内股などの体の下方の異変に気がつきにくいものです。
(小型犬の場合、抱き上げる機会が多いので、脱毛や湿疹などの部位に手触れ早期発見につながる事が多いものです)
①全身をくまなく触り、湿疹や脱毛などのトラブルがないかを確認する
②毛艶や毛量の変化に注意する
③皮膚の黒ずみ、かさつきが無いかを確認する
④シャンプー後、数日でフケの発生がないかを確認する
特に、イエローと呼ばれる毛色のラブラドールレトリバーの場合、脱毛やフケなどの異変が目立ちにくいので、つい見落としがちです。
日ごろからこまめに全身に触れ、体調チェックをしてあげましょう。
ラブラドールレトリバーは、とても甘えん坊な性格で、飼い主に構ってもらう事、触れてもらう事が何よりの楽しみです。
ぜひ全身を撫でる事をコミュニケーションとして、遊びの一つとして取り入れてあげましょう。
ブラッシングもお手入れと考えると義務感が生じ、負担になります。
愛犬とのくすぐり遊びと考え、ぜひ楽しく、気軽に済ませてあげましょう。
*このコラムは大谷幸代先生に記事を作成して頂きました。
【大谷幸代先生】
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー
学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。
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