動物看護士・トリマー執筆
動物看護士 トリマー
山之内さゆり先生
ふわもこでまるでお人形のような姿形をしたポメラニアンは、すごく活発で人懐っこくエネルギッシュな印象が強い犬種で、最近では茶色だけではなく白や黒といったいろいろなカラーのポメラニアンもよく見かけるようになってきましたね。
ふわふわでサラサラした毛のポメラニアンは、見た目だけだとあまり抜け毛がないようなイメージをもたれがちですが、実はダブルコートなので抜け毛が多い犬種でもあります。
こまめなブラッシングと定期的なトリミングを疎かにしてしまうと、すぐに毛玉ができたりアンダーコート(下毛)が抜け切れずに根元に密集してしまい、皮膚と勘違いしてしまうような毛玉のコート状態になってしまいます。
しかし、そうした日常的な抜け毛ではなくさまざまなことが原因となって起こる病的な抜け毛があり、ポメラニアンに目立って見られる疾患として、アロペシアX、皮膚糸状菌、アカラス、があります。
まず、ポメラニアンに特に発症しやすいと言われているものが、アロペシアXです。アロペシアXは脱毛症Xとも言われているのですが、実は何が原因となっているのかわからない原因不明の脱毛症です。
そのため、偽クッシング症候群や副腎性ホルモン欠損症などさまざまな呼び名がありますが、ホルモンバランスの乱れが関係しているのではないかと言われています。
アロペシアXの症状は、頭と手足以外の毛が異常に抜けて、かゆみがないのが特徴です。
最初はただの抜け毛時期なのかな?といった認識しかないのですが、あまりにも抜け毛が続きしかもその量がすごいので「おかしいのでは?」と思って診察に来られるパターンがほとんどです。
アロペシアXの治療法は、その原因がはっきりしていないために特定の治療法というものがありません。アロペシアXだと診断がでた場合は、ホルモンバランスを整えるような薬や推奨されるサプリメントなどを試してその反応を見ます。
しかし、それでも反応がない場合もありますし、食事をスキンケア系のフードに変えることで改善する場合もあるなどさまざまです。
幸いにもかゆみがないため、生活する上でストレスを感じさせずに済むのが救いではありますが、落ち着かなければふわさらとはほど遠いスカスカな状態になってしまうので、可能性のあるものは試していくといいでしょう。
次に皮膚糸状菌症です。皮膚糸状菌症を引き起こす原因は真菌(カビ)です。真菌は土にいたり寝床が不衛生だったりしても発症しますし、真菌を保有している動物に接触した場合も感染します。
特に免疫力が低下していると感染しやすいため、他の動物と接触する機会がなかったとしても、生活環境が不衛生な状態だと皮膚糸状菌症になる危険性が高くなるため、清潔にしてあげるようにしましょう。
皮膚糸状菌症の症状は、かゆみと一緒に背中や足などに丸い脱毛が見られます。周りにうっすらとカサカサのようなものができるため、患部がドーナツ状の脱毛に見えたりもします。
皮膚糸状菌のカビは人にも感染するため、もし疑わしい症状が出たり実際に感染していた場合は、必ず触った後は石鹸で手を洗いその子が触れたものは消毒をするなど、徹底した管理が必要となります。
皮膚糸状菌症の治療は、抗真菌剤を注射あるいは飲み薬を投与して、合わせて真菌を抑える薬用シャンプーを使って患部を薬浴し、内側と外側から治療をしていきます。
アカラスはニキビダニ症とも言われています。というのも、アカラスの原因はもともと皮膚の毛包に存在している、ニキビダニの異常繁殖によって起こるためです。
アカラスもポメラニアンの免疫力が低下していたり、子犬のような若いポメラニアンの場合だと、免疫力がまだ強くないがために引き起こしてしまうことがあります。
アカラスの症状、体や手足など全身を対象に、かゆみ・赤み・黄色いかさぶたなどが出てきます。ひどい場合だとあまりにもかゆくてかきむしってしまうため、それが痛みへと変わり触れられるのを嫌がるようになります。
アカラスはニキビダニが原因となっているので、駆虫薬を注射したり飲み薬を投与することで治療していきます。また、適した薬用シャンプーを使って定期的に薬浴することで、内側と外側から治療をしていきます。
皮膚糸状菌症もアカラスも注射や薬とは別に薬浴が可能ですので、薬浴をしながら皮膚も一緒に清潔に保つことができます。治療後もできるだけ皮膚がいい状態を維持できるように、定期的なトリミングをしてあげるようにしましょう。
かゆみや赤みがあり、しかも普通ではない脱毛の仕方をしているのであれば、様子を見るよりは気付いた段階で動物病院を受診することをお勧めします。
アロペシアXの場合は異常なのかどうかがわかりにくいのですが、もし異常な抜け毛でなければブラッシングをしていると、だいたい抜け毛が落ち着いてきます。
一方、異常な抜け毛だとブラッシングをいくらしても抜ける量が変わりません。ブラッシングをすればするほど薄くなっていくため明らかにおかしいので、そうした場合も一度、動物病院に相談してみるようにしましょう。
ポメラニアンだからこそなってしまう可能性の高いアロペシアXですが、実際にアロペシアXになると本当に一体何が原因なのかがわからないので、検査や消去法によって可能性を絞り最終的な診断にいたります。
ただ、元気食欲も変わりなく毛が抜けるということ以外は異常が見られないため、その点では少しの安心もありますが、どうしてあげればいいのかわからないため、やっぱりすごく心配になるものです。
私が出会ったポメラニアンは黒い毛の女の子で、子犬の頃からずっとトリミングなどで来てくれていました。ある時トリミングでカウンセリングのときに、「やけにスッキリなっているなぁ、痩せたのかな?」と思ったのでダイエットでもしたのか聞いてみたんです。
ですが、別に急激なダイエットをしているわけではないことと、実際体重計で体重を測っても体重の変化はなく、単純に毛量が少なくなっているだけだとわかりました。
6年間ずっと来てくれていたので変化にはすぐ気付きましたが、かゆみも赤みもなかったため、ただいつもよりも抜け毛が多かっただけなのかな?とも思ったのです。
しかし、実際にトリミングを始めたときにブラッシングをしてもいつまでもいつまでも毛が抜け続ける…シャンプーをしたらごっそりと毛が抜ける…ドライヤーで乾かしているときも異常なほど毛が抜ける…。
これは絶対おかしいと思い診察をした結果、もしかしたらアロペシアXの可能性があるということで、食事を先に変えてみることにしました。
もともと乾燥肌で保湿性のシャンプーとトリートメントでトリミングをしていたので、食事を変えることでなんらかの反応があるのではないかという決定でした。
これがアレルギーとかなら1~2ヶ月で状態がわかるのですが、アロペシアXの場合はどのくらいで反応が見えるのかは、はっきりとわかりませんでした。
ただ、2ヶ月は皮膚の生まれ変わりの関係もあるので様子を見ようということになり、本来はアレルギー食として使っているフードを試してみました。
アレルギー食はアレルゲンをカットしてあるだけでなく、皮膚の免疫力を高める働きがもあるため、皮膚の健康力を高める意味でも試してみたのですが、幸いこの選択がその子にはあっていました。
3ヶ月したあたりから徐々に脱毛量が減り始め、逆に今まで抜け過ぎていたせいか、抜け毛が全くないと言っていいほどピタリと止まりました。
それ以来ずっとそのフードを食べ続けていますが、それでも時々すごく抜けることがあります。ですが、以前のようにずっと抜け続けるわけではなくすぐに治るので、この子にとってはフードで安定することができているようです。
ポメラニアンのふわさらの毛を脱毛から守るためには、皮膚と被毛の状態を常に清潔にしてあげることが何よりの予防法になります。
そのためにも、ブラッシングを定期的にしてあげたり、質のいい食事を与え、ストレス発散にお散歩をしたり思いっきり遊んであげるなど、心身ともにできるだけ健康を維持してあげることが大事です。
基本的なことかも知れませんが、いかにひとつひとつの予防法を質のいいものにしてあげるか、それによってまた結果は違ってくるので、可能な限り清潔にそして健康的に生活できるようにしてあげましょう。
*このコラムは山之内さゆり先生に記事を作成して頂きました。
【山之内さゆり先生】
トリマー、動物看護士
約10年間動物病院でトリマー兼動物看護士として勤務。現場で得た知識と経験を情報として発信し、飼い主さんとペットが幸せに暮らせるためのお手伝いをしていきたいと思います。
PS. ポメラニアンの皮膚・毛並みが良くなりました↓
病院のサプリメントや薬を処方してましたがこんなに劇的な変化なかったんです。
と、いうか、ほとんど変わりない状態だったから、、、でも今は、フサフサふわふわぁ~~~
【PR】ペット用キングアガリクス100
皮膚・毛並みが気になるワンちゃん、ネコちゃんに対する飼い主様満足度82.5%、獣医師の満足度84.6%
© 2024 ケーエーナチュラルフーズ株式会社