動物看護士・トリマー執筆
動物看護士 トリマー
山之内さゆり先生
キャバリアはすごく穏やかな性格で、わずかにウェーブのかかった被毛がエレガントさをかもし出してすごく品がありますよね。そして、キャバリアは人にはもちろん他の動物に対してもとても友好的に接することができる犬種です。
また、キャバリアはダブルコートなので年に2回の換毛期に合わせて抜け毛がひどい時期があります。普段からアンダーコートの抜け毛はありますが、春と秋の換毛期になるとその比ではありません。
しかし、日常的な抜け毛や換毛期とはまた違った抜け毛を引き起こすこともあります。そして、その抜け毛を引き起こす可能性がある皮膚疾患としてキャバリアに多くみられるのが、食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・脂漏症の3つです。
もともとキャバリアは皮脂の分泌の多い傾向にあることや、皮膚の弱い子が多い傾向にあるため、日頃から皮膚トラブルが起こっていないか注意しておく必要があります。
食物アレルギーは本当に多いアレルギー疾患ですが、キャバリアも例外ではありません。食物アレルギーは食べたものに対して反応するアレルギーなので、食物アレルギーと診断された場合は食事管理を気を付けてあげなければいけません。
食物アレルギーの症状は結構わかりやすいです。
・目の周り
・口周り
・お腹
・内股
・脇
・足の指の間や足裏
・耳
・お尻
こうした比較的皮膚の柔らかいような場所に炎症を起こして、かゆみから舐めたり掻いたりを頻繁にするようになります。皮膚が炎症を起こすということは、それだけ皮膚の働きも低下しているため抜け毛が増えたり、舐めすぎて脱毛してしまうこともあります。
また、食物アレルギーのアレルギー反応は皮膚だけではなく体内外で起こっているので、もう少し強い反応を示すようになると嘔吐や下痢といった消化器系の症状が現れる場合も少なくありません。
普段食べているフードでもいきなりアレルギー反応を起こしますので、かゆみや嘔吐など異常を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。
食物アレルギーが原因の皮膚炎や消化器系の症状の場合、かゆみ止めや下痢止め、吐き気止めといったものを使っても、すぐに改善されることはありません。
なぜかというと、アレルギー反応を起こすものを食べている限りは常に炎症が起こっているようなものなので、お薬でどうにかなるということができないからです。
食物アレルギーの治療は、アレルギー反応を起こす食べ物は与えず、食物アレルギー専用の処方食のみを与えることが最も有効な治療となります。
食物アレルギー専用のフードはペットショップにも売ってあるのを見ますが、本当にかゆみや嘔吐・下痢といった症状から解放させてあげたいのであれば、そちらはおすすめしません。
食物アレルギーに限らず、何かしらの疾患に対して与える専用フードというのは、動物病院で処方されるものでないと十分な効果を発揮することができないためです。
見た目だけだと同じようなフードや原材料に見えるかも知れませんが、製造過程の不純物レベルや材料を分子レベルで見たときに大きな違いが出るため、その違いが内臓や皮膚といったところに大きく影響してきます。
そのため、処方食だと少しお値段が…と最初は気になることもあると思いますが、改善させてあげたいのであればしっかり動物病院で相談しましょう。
キャバリアは皮膚が弱い子が多いこともあってか、アトピー性皮膚炎を発症する子も少なくありません。
アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が弱まっていたり、花粉やハウスダストなどアレルゲン物質となるものが体内に侵入したときに、体の中の免疫反応が過剰に反応してしまいアレルギー反応を起こします。
遺伝的にアレルギー体質の子が起こりやすいと言われているので、皮膚が弱い傾向にあるキャバリアは発症しやすいのかも知れません。
アトピー性皮膚炎になると湿疹やかゆみを引き起こし、かゆみから抜け毛が多く見られるようになることもあります。
・目の周り
・口の周り
・耳の内側
・脇
・お腹
・内股
・手足(特に膝肘から下)
こうした部位に赤みとかゆみがあったら、ひどくなる前に動物病院を受診しましょう。放っておくと脱毛だけではなく色素沈着で皮膚が黒ずみ、どんどん肌も荒れていくので二次感染の可能性もでてきます。
アトピー性皮膚炎は完治することは難しいです。ですが、季節の変わり目や夏や梅雨のように特定の時期だけに発症する子など、症状の出方に違いはあります。
いずれにしても治療法としては、症状を緩和させるためにかゆみ止めを使ったり、皮膚のバリア機能を高め傷ついた皮膚を修復するような専用のシャンプーを使ってケアしていくことになります。
キャバリアは皮脂分泌が多い犬種にもなるので、どうしても脂漏症のような皮脂分泌が影響する皮膚疾患にかかりやすいとも言えます。脂漏症には大きく分けて油性脂漏症と乾性脂漏症の2種類が存在しますが、キャバリアは比較的、油性脂漏症が多いように感じます。
どちらの脂漏症でも、基本的には基礎疾患が原因となって新陳代謝が異常をきたすことで発症することがほとんどですが、なかには遺伝的なものもあります。
脂漏症の症状は独特なので気付きやすいと思います。
・皮膚被毛がベタつく
・フケがある
・脂っぽいニオイ
・黄色っぽい薄皮の塊のようなものがある
・かゆみ
・炎症
・脱毛
皮膚被毛のベタつきは油性脂漏症に見られる症状ですが、共通する症状としてはフケと脂漏臭です。脂漏臭といわれてもピンとこないと思いますので、フケと一緒になんだか臭うなと感じたら動物病院で診てもらうことをおすすめします。
症状が進行していくとかゆみがひどくなり脱毛を起こし、皮膚が黒ずんでかわいそうなことになるので、様子を見過ぎないようにしましょう。
脂漏症の治療は出過ぎている脂を洗い流し同時に皮膚を保湿する方法と、フケを取り除き乾燥を防ぎながら新陳代謝を正常にする方法とがあります。
油性脂漏症の場合は前者で乾性脂漏症の場合は後者です。そして、もし症状がひどく強いかゆみを伴っている場合は、かゆみを抑えるために抗炎症剤を合わせて使用します。
当時2歳だった男の子のシルクちゃんは、いつも食べているフード以外は何も与えていないのに、突然体を痒がり出すようになったといって来院されました。
最初はただ体がかゆいだけなのかな?と飼い主さんも思っていたらしいのですが、かゆがりだして2週間は経過しお腹や目の周りも赤くなっているため、これはおかしいと思ったそうです。
シルクちゃんの食事状況と生活環境から、食物アレルギーの可能性が高かったため2ヶ月間の除去食試験を試すことになり、いろいろ与える飼い主さんではなかったことと症状もひどくはなかったので、その効果は比較的すぐに現れました。
食物アレルギーの症状改善には多くの場合、2ヶ月は様子を見る必要があるのですが、シルクちゃんは1ヶ月経ったあたりから赤みが治り、かゆみもほとんどなくなったため、以来食物アレルギー専用の処方食だけを食べていい状態を維持しています。
アトピー性皮膚炎や脂漏症など体質的なものは完全に予防したり完治することは難しいですが、少なくとも食物アレルギーなら処方食で改善・予防することができます。
もちろん、処方食をやめてしまうとまたぶり返してしまうので一生のお付き合いと言えばそうなるのですが、薬を使わず食事でコントロールすることができるのは嬉しいですよね。
また、食物アレルギーでなくてもアトピー性皮膚炎や脂漏症をできるだけ抑えることは不可能ではありません。
・毎日のブラッシング
・月1〜2回の専用シャンプーでのケア
・スキンケア系のフード
こうしたことをしてあげるだけでも、皮膚のコンディションを健やかに保つことや、できるだけ最善の状態に整えることはできるので、症状がでても軽くで済ますことができますし早く治すこともできます。
キャバリアは毛深い犬種ではないため、抜け毛がひどく脱毛までしてしまうと目立ちやすいですし、毛が伸び続ける犬種でもないため脱毛すると元に戻りにくい場合もありますので、早期発見早期治療を心がけて、日頃からスキンシップの中で観察してあげましょう。
*このコラムは山之内さゆり先生に記事を作成して頂きました。
【山之内さゆり先生】
トリマー、動物看護士
約10年間動物病院でトリマー兼動物看護士として勤務。現場で得た知識と経験を情報として発信し、飼い主さんとペットが幸せに暮らせるためのお手伝いをしていきたいと思います。
PS. キャバリアの皮膚・毛並みが良くなりました↓
毛艶がUPして、体力も戻ってきたようです 体力が戻ってきたので、運動量も少しずつ増やせ 食事制限以外のダイエットも始められるのがありがたい…
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