愛玩動物飼養管理士執筆
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー
大谷幸代先生
ゴールデンレトリバーは長く細い表面の被毛と短い綿毛状の被毛の2層構造をしています。
春と秋は換毛期と呼ばれる季節で、被毛の抜け変わりがありいつもの数倍もの抜け毛があります。
背中側の抜け毛は自然と抜け落ちるのですが、お尻やお腹、後ろ脚の抜け毛は身体に残りやすく、そのまま放置してしまうと毛玉や皮膚トラブルの原因にもなります。
健康な状態の抜け毛は全身の被毛がまんべんなく抜け落ち、生え揃いますが、病的な抜け毛の場合、一部分だけがすっかりと抜け落ちてしまいその後生え揃わない、生えそろっていても地肌が見える程に毛量が少ない、束になったまま被毛が抜け落ちる、かゆみを伴うなどの不調が見られます。
ゴールデンレトリバーの病的な抜け毛の原因として、以下があります。
①アレルギー
②ホルモンバランスの乱れ
③ホットスポットと呼ばれるゴールデンレトリバーに多く見られる病気
アレルギー性の脱毛の場合、強いかゆみを伴い自ら噛み、被毛を引き抜いてしまう事もあります。
ホルモンバランスの乱れから起こる脱毛症の場合、一見異常が無いようにも思えるのですが、胸からお臍にかけて被毛がとても薄くなる事があります。
かゆみも伴わず、食欲などの変化も見られない事が多く、病気と認識されにくい症状ですが、体の一部分だけが特別薄毛になる事は何らかの不調を抱えているサインですから、動物病院を受診し原因を突き止めてあげましょう。
そして、ホットスポットと呼ばれるゴールデンレトリバーに多く見られるトラブルにも注意が必要です。
ホットスポットは急性湿性皮膚炎という病気で初期症状は小さな傷口が出来ているようにも見えます。しかし数日で同じような傷口が数か所出来、患部は被毛が抜け、出血を伴う事もあります。
ホットスポットの原因は細菌で、突発的に発症し、その後は繰り返し発症する事が多い病気です。
単なる傷と勘違いし放置してしまうと、患部が炎症を起こしたり、化膿する危険があるので注意が必要です。
脱毛が気になる時は、必ず早期に動物病院を受診し、その原因を突き止めてあげましょう。
かゆみを伴う脱毛の場合、アレルギーが原因の場合が多く大抵は食事療法で対処が可能です。
一時的にかゆみを抑える薬を使用する事もありますが、食事療法が定着し、体調が落ち着くと次第に脱毛の症状も改善されます。
ホルモンバランスの乱れによる脱毛は、繁殖期を過ぎたメスによくみられ、苦痛に感じる症状はあまりありませんが、特効薬もありません。
ホルモン剤を使用し、不調と整える方法もありますが、完全に被毛の状態がもとに戻るほどではありません。
このような症状がある時は、過度に色々な治療を試みるよりも良質な食事と適度な運動で健康的な生活を維持するよう心掛けてあげる事がベストな方法です。
ホットスポットを発症している場合、殺菌効果のある薬用シャンプーで週に1回程度シャンプーをし患部を清潔に保ち、化膿止めの薬を飲ませてあげましょう。
ただしシャンプー後に被毛が生乾きの状態になってしまうとかえって症状を悪化させてしまいます。
必ず全身の被毛を完全に乾燥させましょう。自宅での乾燥が難しい場合は治療期間中だけでもトリミングショップを利用すると安心です。
脱毛症が起きているときは、まずはしっかりとシャンプーをし、患部がどこまで広がっているのか把握してあげましょう。
シャンプーをする時は、指の腹を使って地肌からしっかりと洗い、抜け残っている抜け毛もすべて取り去ってあげましょう。
シャンプーはリンスをせずに最低限のケアで済ませ、乾かし残しの無いように完全に乾燥させます。
患部がはっきりとわかる状態で、動物病院を受診し、症状を確認してもらいます。動物病院では症状に合わせた薬用シャンプーの処方を行っているので、使用頻度、シャンプーの方法など指導を受けましょう。
シャンプー後のドライヤーは、スリッカー(針金状のブラシ)を使用すると皮膚を傷つけてしまう可能性があります。
ゴム製の柔らかいブラシの使用がおすすめです。脱毛症の原因が細菌やカビなど感染性がある場合は、使用済みのタオルやブラシは十分に消毒をしましょう。
水遊びが大好きなゴールデンレトリバーのポポちゃん7歳は、子犬の頃から自宅の庭にビニールプールを出し、水遊びをするのが日課です。
プールの後はテラスに寝ころび、日向ぼっこをして体を乾かし、夕方には家に入るという生活を何年も続けていました。
でも、先日体にまるで大きなニキビがつぶれたかのような傷あとがあり、かさぶたがかゆいのか、家族が目を放すと自分で強く噛んでしまっていました。
数日様子を見たところ、傷跡はどんどん増えて、全身に広がっています。
最初は、ドッグランで怪我でもしたのかと思っていましたが、これは単ある怪我ではないと病院を受診した所、ホットスポットという診断を受けました。
これまで何度もプールと自然乾燥を続けていましたが、ポポちゃんもシニアになり、代謝や免疫力が低下した事で、このような症状が起きたのではとの事でした。
何の前触れもなく、突然傷口が出来、背中は何か所もハゲが出来、見るに見かねる状態になっている事、ポポちゃんは暑さが苦手な事もあり、まずは全身を短く切り揃え、薬を付けやすい状態にし、皮膚に通気性を改善し、プール遊び後は簡単なタオルドライで済ませる事が出来るように工夫をしました。
傷口は1週間程エリザベスカラーを着用し生活をする事で次第に改善し、抜けてしまっていた被毛も徐々に生えそろってきています。
ゴールデンレトリバーはとても繊細な犬種です。年齢に合ったケアを都度考えてあげたいものです。
健康的な抜け毛か病的な抜け毛かの判断は、被毛の密集度で見極めます。
健康な状態のゴールデンレトリバーは2層の被毛が密集していて、地肌が見えにくい状態です。でも脱毛症を患っている場合、ただ仰向けになっただけで腹部の地肌が見える事もあります。
また、被毛を軽くつまむとスルッと束になって抜け落ちる、地肌に黒い小さな点がある、地肌が赤くまだらになっているなどの症状も病的な脱毛症のサインです。
ゴールデンレトリバーはとても繊細な体質の犬種です。
食事は良質な動物性タンパク質を十分に接取し、適度な運動をこなし、体は常に清潔に保ってあげましょう。
自宅でのシャンプーの後は自然乾燥にせず、ドライヤーを使用し全身をしっかりと乾燥させてあげましょう。
被毛が長いので、皮膚や被毛の異常になかなか気がつかない事もありますが、不調に気がついたら、出きる限り早期に動物病院を受診してあげましょう。
*このコラムは大谷幸代先生に記事を作成して頂きました。
【大谷幸代先生】
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー
学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。
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