動物看護士執筆
公益財団法人 日本動物愛護協会
相談室長 動物看護士 大橋志保
犬や猫が家族の一員として暮らすようになり、ライフスタイルも変化しています。それに伴い、私たち人間と同じような生活習慣病も増えてきました。
犬猫の死亡原因のトップは「ガン」ですが、犬で第2位、猫で第3位の心臓病について、心臓が悪くなってしまった愛犬、愛猫のためにできることを学びましょう。
心臓は酸素や栄養素を全身に運ぶ血液を送り出している臓器であるため、心臓病にかかるとさまざまな障害を引き起こします。犬猫にみられる主なタイプの心臓病は、慢性の心臓弁膜症(心内膜症)と心筋症です。
以下のような症状が出てきたら、病院で検査を
呼吸が苦しそう、息切れをする
乾いた咳をする
散歩や運動を嫌がるようになってきた
お腹の周りがふくらんできた
体重の急な増加 →体のどこかに水が溜まっている可能性が・・・
元気がなくなり、疲れやすくなったり、散歩時に立ち止まる
失神を起こす →排尿・排便時に注意(一時的に血圧が下がるため・・・)
イビキが前より大きくなる
食欲が落ちる
犬猫と人間では必要な栄養素と量が異なります。とくに心臓病の犬猫にはナトリウムの摂り過ぎは禁物です。手作りの食事やおやつには十分注意しましょう。
体内のナトリウム(塩分)の濃度が上がると、それを薄めようと体の中に余分な水分も一緒に蓄えられるようになります。水分が溜まるということは体液(血液)が増加することでもあり、その結果心臓は余計に多くの血液を循環させようと負担が増えます。
また当然のことながら肥満は確実に心臓に負担をかけます。肥満の改善のために毎日の食事の量やカロリーにも配慮する必要があるでしょう。
心臓病に用いられる食事療法食は、心臓病の進行度合いによって段階的にナトリウム(塩分)を制限し、心臓の働きのサポートをする栄養成分(タウリンなど)を配合しています。また心臓病とともに起こる傾向がある慢性腎臓病も考慮し、リンの量を制限しています。これらは獣医師の指示のもと使いましょう。
最も注意しなければならないのは、温度管理です。冬の寒さが心臓に負担をかけることはよく知られていますが、これからの季節にも注意が必要です。暑さに弱く、汗もかくことが出来ないので、暑くなると自ら呼吸を激しくさせて口から熱を放散させますが、それは心臓に大きな負担をかけることになります。
クーラーなどで冷え過ぎると外気との気温差で返って負担をかける結果に・・・エアコンを上手に使い、快適な生活ができるよう心がけましょう。
また、温度管理をする上で気を付けなければならないのは、シャンプーをする場合です。体力を消耗する上、ドライヤーは心拍数が上がっているとところに熱風を吹きかけるのですから心臓へ大きな負担となります。
呼吸が苦しければじっとしたまま動きたがらないでしょう。運動はあくまでも本人のペースで行い、散歩に行く場合もゆっくりと歩かせ、階段や坂道はなるべく避けましょう。
心臓の働き以上に体を動かしてしまうと、チアノーゼといって舌の粘膜が紫色に変色する症状がみられることがあります。その場合は安静にしてかかりつけ医の判断を仰ぐようにしましょう。
心臓病は初期の段階では症状が出ないことも多く、症状が出た時には病気が進行しているため、早期に発見することが大切となります。早期発見、早期治療で病気の進行を遅らせることができます。心臓病を早く発見するため、シニア期に入ったら定期的に健康診断を受けましょう。
特に具合の悪いところがなくても、若いころとは違います。元気そうでも心臓病は始まっているかもしれません。興奮させる状況やストレスは心臓に最も負担をかけます。平穏に過ごせるよう家族で工夫することで、まだまだ元気で長生きさせることは可能だと思います。
*公益財団法人 日本動物愛護協会 相談室長 動物看護士 大橋志保先生 に記事を作成して頂きました。
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