獣医師執筆
森のいぬねこ病院グループ院長
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属
西原 克明(にしはら かつあき)先生
猫のエイズは、猫免疫不全ウイルス(Feline Immunodeficiency Virus : FIV)と呼ばれるウイルスによる感染症です。
名前の通り、FIVの感染・発症によって猫の免疫機能が低下し、様々な免疫異常を示したり、感染症にかかるようになり、それに合わせた症状を示すようになる病気で、最終的には死に至ります。
しかし、猫のエイズは、実際にFIVに感染しても、症状を発症するまでの間が数年かかるケースもありますし、中にはFIVに感染したけど、なんの症状もなく(発症せず)一生を過ごすケースもあります。
とはいえ、多くのFIVに感染した猫は、何かしらの症状に苦しむことが多いです。
このように猫のエイズは非常に厄介な病気なのですが、実は飼われている猫のうち、外に出る猫では、この猫免疫不全ウイルスの感染率が23.1%という非常に高いデータがあり、恐ろしい病気にもかかわらず蔓延してしまっている現状があります。
実際に動物病院でも、ウイルス検査で陽性(感染している)となるケースを多く経験します。
ちなみに、FIVが犬や人間に感染することはありません。
データ上は、純血種よりも雑種猫の方が、FIVに多く感染しているという報告があります。
しかしこれは、外に出る猫が圧倒的に雑種が多く、決して遺伝的な要因や品種特有の要因として猫のエイズにかかりやすいというわけではありません。
また、同じ理由で、メスよりもオスの方が、猫のエイズにかかっている割合が多いと言われています。
これは、基本的に猫のエイズはケンカ傷からのウイルス感染が多く、メスよりもオスの方がケンカする機会が多いため、その分FIVに感染する機会が多くなってしまうことによります。
猫のエイズは前述の通り、FIVというウイルス感染が原因です。
FIVの感染は、ほとんどがケンカによります。
FIVは主に、FIVをたくさん含む唾液が、ケンカ傷を通して猫の体内に侵入することにより感染します。
また母子感染といって、産道や母乳中に存在するFIVが、母猫から子猫に感染してしまうケースもあります。
(どのような症状がありますか?動物病院を受診するポイント)
猫のエイズの症状は、感染してから発症するまでの時期によって異なります。
ここでは、【急性期】【無症候キャリア期】【持続性全身性リンパ節症期】【エイズ関連症候群期】【エイズ期】に分けてご説明します。
FIVに感染して間もなくの頃に現れる症状です。
発熱とリンパ節の腫れが主な症状ですが、この時期の症状は数日で自然に改善してしまうため、飼い主の方も気づきにくく、また動物病院に来院されるケースもほとんどありません。
急性期の後のこの時期は、ほとんどなんの症状も見られません。
平均的にはこの無症候キャリア期は2年〜4年の間と言われていますが、数ヶ月で次のステージに移行してしまうケースもありますし、一方で一生、この時期で過ごすケースもあります。
しかし、この時期は症状がなくても、ケンカなどで他の猫に感染させてしまうリスクはあるため注意が必要です。
名前の通り、リンパ節の腫れが見られます。
しかしそれ以外の症状はほとんど認められず、やはり飼い主の方が気づかないことが多く、また実際に動物病院でこの時期の猫を診察することは多くありません。
無症候キャリア期やこの時期は、健康診断や別の要因で検査した時に偶然見つかることがほとんどです。
この時期になると、明らかなFIVの発症による症状を認めるようになります。
しかし、FIVは免疫力の低下を引き起こすだけで、直接、目に見える症状が出るわけではありません。
実は猫のエイズの症状のほとんどが、 FIVで免疫力が低下した結果、様々な免疫異常や感染などの病気にかかり、そのことによって、症状を示すようになるのです。
つまり、かかる病気によって症状の出方が異なり、非常にバリエーションに富んだ症状を示すようになります。
その中でも最も多く見られるものは、『口内炎』と『歯肉炎』です。
実際に動物病院に来院するエイズの猫のほとんどの症状がこの2つであり、さらにはデータ上でも、口の症状を持つ猫のうち、37%の猫がFIVに感染しているというものがあります。
この時期に見られるその他の症状には、咳やくしゃみ、目やに、目の充血、皮膚炎などがあります。
この時期なると、ほぼ猫の免疫機能はなくなっていて(免疫不全)、様々な感染症にかかっていきます。
病的な細菌感染やウイルス感染はもちろん、日和見感染と言って、もともと猫の皮膚などに存在し、猫にとって無害あるいは逆に有益に作用している細菌や真菌、あるいは毛包虫というダニの一種が、異常増殖して、皮膚炎など病的な症状を引き起こしてしまうようになります。
これらの日和見感染では、皮膚の症状はもちろん、体重減少、元気食欲の低下など全身症状が見られるようになります。
そして最終的には発作や昏睡状態など命に関わる状態に陥ることになります。
さらには、この時期には、腫瘍(がん)の発生も多くなることがあります。
また、赤血球や白血球、血小板など血液中の細胞成分が作られなくなり、貧血や内出血といった症状を示すこともあります。
(どのようにして治療しますか?手術、抗がん剤など)
猫のエイズの治療は大きく分けて、FIVを抑えるための治療と、様々な症状を改善させるための治療があります。
まずFIVを抑えるための治療ですが、今のところFIVを確実に抑え込む治療方法は確立されていません。
私自身、使用経験はありませんが、人間のエイズウイルス(HIV)の治療薬を応用することで、多少の効果が得られている報告はあります。
それによると、FIVによる口内炎などの症状が改善したケースがありますが、その一方で、副作用として血液中の細胞成分が作られなくなったり、あるいは治療薬が効かなくなる耐性が問題にあることがあります。
そのため、FIVを直接治療する方法は、一般的にはほとんど行われていないようです。
その一方で、様々な症状に対する対症療法は、積極的に治療が行われています。
猫のエイズで最も多く見られる口内炎や歯肉炎に対しては、痛み止めや抗生物質を用いて直接的に症状を改善させる治療、あるいは消炎効果のある不飽和脂肪酸のサプリメントや、インターフェロンやアガリクスなどのβグルカン、ラクトフェリンといった免疫増強作用のあるサプリメントを使った治療などがあります。
さらには、一部あるいは全ての歯を抜歯することで口内炎と歯肉炎を改善させる治療もあります。
もちろん、抜歯には全身麻酔が必要で、それなりのリスクを伴いますが、抜歯により症状が改善できると、猫自身の生活がかなり楽になります。
そして私の病院では今はほとんど使っていませんが、ステロイドによって炎症をコントロールする治療もあり、おそらく今でも多くの病院では実際に行われている治療だと思います。
しかし、これらの治療に対する猫の反応は様々で、薬が効果的な猫もいれば、サプリメントが効果的な猫もいます。
また抜歯によって「治ったんじゃないのか?」と思えるくら元気になる猫もいれば、残念ながら抜歯をしたとしても口内炎が改善しない猫もいます。
そのため、多くの動物病院では、複数の治療方法を組み合わせて実施することが多いと思われます。
また、抜歯のようにリスクを伴う治療、あるいはステロイドやその他の薬のように副作用のリスクがある治療では、治療の効果も比較的即効性が期待できます。
その一方で、不飽和脂肪酸やβグルカンなどのサプリメントを用いた治療は、副作用などのリスクが少ない分、効果が現れるまでに時間がかかることが多い傾向があります。
私の病院では、口内炎など猫のエイズを疑う場合に検査をさせていただくことはもちろん、基本的には全ての猫に対して、不妊手術や健康診断の時にも、必ずウイルス検査をさせていただいています。
というのも、FIVに感染する機会がなければ検査の必要はないのですが、正確にその機会があったかどうかがわかる猫はほとんどいないためです。
そして実際に、なんの症状もない猫が、無症候キャリア期の猫だったという診断することもあります。
その場合は、飼い主の方にもよりますが、アガリクスなど免疫調整作用のあるサプリメントの導入をお勧めしています。
また、症状を伴うケースでは、やはり実際に診察するのは口内炎や歯肉炎といった症状がほとんどです。
このような場合、食事もできないほどの痛みに対しては、お薬による対症療法や抜歯など、即効性の期待できる治療をお勧めしています。
その一方で、見た目に口内炎や歯肉炎が明らかでも、食事も摂れて、そこまで辛い痛みが見られない場合は、不飽和脂肪酸やアガリクスなどのサプリメント、もしくはインターフェロン療法をお勧めしています。
また、ほとんどの場合、私の病院では猫のエイズに対してステロイドを使うことはありません。
以前は私も猫の口の痛みに対してステロイドを使用していましたが、あくまでステロイドは対症療法であり根治療法ではないため、止めることができず、かなり長期間ステロイドを使うことになりました。
そしてそれにより副作用が出てしまう猫も多く経験しました。
しかし、今ではステロイドを使わなくても、症状を軽減できる良い薬が使えるようになったので、ステロイドはほとんど使用していません。
(普段からどんなことに注意して飼ったらいいですか?)
猫のエイズはFIVによる感染症ですので、まずは感染しないようにすることが重要です。
日本では外で暮らす猫のFIV保有率は高いと言われていますので、基本的には外に出さないようにすることが一番です。
また、FIVの感染はケンカ傷からの感染がほとんどですので、オスの猫は去勢手術をして少しでも攻撃性を減少させることも有効かもしれません。
一方、FIVに感染してしまった場合は、他の猫に感染させないためにも、やはり外に出さないようにすることが重要です。
また、FIVに感染しても無症候キャリア期であれば、日常生活はなんら問題なく過ごせます。
ですので、この時期(無症候性キャリア期)にアガリクスなど免疫調整作用のあるサプリメントを導入することは、少しでも発症リスクを下げられる可能性がありますので、個人的にはお勧めしています。
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それ以外にも、他の病気にかかってしまうなどのリスクで、猫のエイズを発症させてしまう可能性がありますから、日常生活の中でのこまめな健康チェックや定期的な動物病院での健康診断もお勧めしています。
執筆者
西原 克明(にしはら かつあき)先生
森のいぬねこ病院グループ院長
帯広畜産大学 獣医学科卒業
略歴
北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。
所属学会
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会
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