愛玩動物飼養管理士執筆
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー
大谷幸代先生
アカラスという病気はニキビダニというダニの一種が原因で起こる脱毛症です。
ニキビダニ自体は犬にも人間にも一定数は寄生していて、健康な状態であれば特に気に掛ける必要はありません。
しかし妊娠授乳中の犬、生後間もない犬、老犬のように免疫力が低下している場合や親離れの為に極度のストレスがかかることでニキビダニが通常量より大幅に増殖することがあります。
この結果、全身に広がる重度の脱毛症が起こります。
アカラスの原因になるニキビダニはほぼすべての犬猫に寄生しているので、特定の犬種にだけ発症が偏る事はありません。
しかし実際には下記の犬種、猫腫での発症が多く見られています。
①ポメラニアン
②プードル
③ヨークシャテリア
④短毛種の猫
中でもポメラニアンの発症は他犬種の数倍以上の高確率で起こります。
ポメラニアンをペットショップやブリーダーから購入する際はアカラスの初期症状の有無や生活環境の衛生管理がしっかりと出来ているかを確認の上しっかりと考えましょう。
犬、猫がアカラスに感染する原因は、
①過度のストレス
②すでに発症している犬猫との接触
③ブラシやタオル、ベッドの共有
などが挙げられます。
例えば親犬がアカラスを発症している場合、誕生した子犬の親との接触を機に感染し、症状があらわれます。
子犬は親犬に比べ免疫力が弱いので症状も重症化しやすいものです。
またトリミングショップやペットホテルを利用することで、他犬から感染する可能性もあります。
本来トリミングショップではブラシや機器は使用の都度消毒処理をする、タオルや備品類は使用の都度洗浄し、消毒をする事が必須ですが、万全な予防策が難しい事も実状です。
散歩やドッグラン利用時には、脱毛症状の見られる犬との接触は避けるように注意する必要があります。
万が一、気がつかぬ間に触れ合ってしまっていた場合は早急に殺菌効果のあるシャンプーで洗ってあげましょう。
アカラスの初期症状は、眉間の辺りの脱毛から始まる事が多く見られます。
特にポメラニアンは生後50日頃の時点で眉間あたりの被毛が薄くなったり、目頭、目の周りの被毛が薄くなり皮膚が垣間見えるほどになる事があります。
アカラスの初期症状は、被毛が薄くなり皮膚がうっすらと見える程度ですが、症状が進むにつれて脱毛部位が全身に広がります。
アカラスが原因で被毛が抜けた部位は、皮膚がつるつるとした状態になり、産毛もすべて抜け落ちます。
一見脱毛が起きていないように思える部位もシャンプーをすると一気に被毛が抜け落ちます。
アカラスか生理現象の脱毛かの見分け方は、被毛の毛束を軽く指でつまみ、引っ張る事で見分けます。
アカラスの場合、ほとんど力を加える事なく、するっと抜け落ち、犬自身もまるで気にしないほどです。
生理現象の脱毛の場合、皮膚が引っ張られる上に、毛束すべてが抜ける事はありません。数本の抜け毛だけがまばらに抜けます。
子犬を購入するとき、薄毛が気になる場合は、薄い部位の毛束を軽くつまみ引っ張ってみると見分ける事が出来ます。
アカラスの治療法は長期に及ぶことが多いものの、適切な治療で必ず完治することができます。
治療法は
①服薬
②薬用シャンプーでの週3,4回のシャンプー
(シャンプーの頻度は症状や健康状態によって異なります)
③散歩などでの日光浴、健康的な生活
アカラスの治療中、シャンプーは非常に大切です。
使用するシャンプー剤は獣医師の処方に基づき殺菌効果があり、低刺激で頻繁なシャンプーでも皮膚に負担のかからない物を使用します。
シャンプーを行うと、体に残っていた被毛がすべて抜け落ちてしまうことがあります。この時、被毛の抜け落ちを考えシャンプーを控える必要はありません。
自然と抜け落ちる被毛は全て取り去る事も治療の一環です。健康な状態で生え揃った被毛はシャンプー程度では簡単に抜け落ちません。
軽く抜け落ちる被毛は感染している証と考え、すっきりと取り除いてあげましょう。
シャンプー後のドライヤーはブラシやタオルで皮膚をこすってしまわないように注意します。
被毛が抜け落ちた状態でのドライヤーは、熱風が皮膚に直接あたるので温度を低めに設定し短時間で済ませてあげましょう。
シャンプーを自宅で行う場合は、使用後のタオルの洗浄、ブラシの消毒、抜け毛の処理をしっかりと行いましょう。
アカラスは人間にも感染する可能性があり乳幼児や高齢者のいるご家庭では注意が必要です。
トリミングショップにシャンプーを依頼する場合、他犬猫への感染の可能性があるので必ず事前に相談をしましょう。
動物病院の場合、治療の為のシャンプーは比較的安価に引き受けてもらえる事もあるので、相談をしてみましょう。
アカラスの治療期間中は、全身の被毛が抜け落ち、回復期間中も被毛が生えそろっていないのでなかなか見栄えが悪いと気になるものです。
この時期の外出には薄手の洋服を着せてあげるとよいでしょう。
ただ日光を適度に浴びる事は皮膚の新陳代謝を促進させる効果もあり治療にも効果的です。
その為洋服の着脱は都度調整をしてあげましょう。
治療中は、皮膚の状態と合わせて爪切りもこまめに行いましょう。
皮膚が被毛で保護されていないので、足で掻いた時に皮膚を傷つけてしまうことがあるからです。爪は常に短めに切り揃えてあげましょう。
ポメラニアンのビビちゃんは、ペットショップで購入し、ワクチンを終え初めてのトリミングを利用された時にアカラスの発症が判明しました。
ペットショップの購入の時点で眉間の薄毛に気がついたものの、初めて子犬を家族に迎えるのでこの症状が病的なものか、子犬故の症状かは判断が出来なかったそうです。
特にポメラニアンは、子犬と成犬とでは被毛の量がまるで異なり、今後成長と共に生え揃うと考えていたのでまるで疑問に感じなかったそうです。
でも初めてのシャンプーで全身の被毛が半分以下にまで抜け落ち、アカラスの発症に気がつきました。
動物病院を受診して、薬用シャンプーの処方を受け、完治までは毎日シャンプーをする事という指示を受け、服薬もつづける事になりました。
毎日のシャンプーにトリミングショップを利用すると相当な費用が掛かってしまうという事で、この治療を機に飼い主さん自身がシャンプーの手順を覚え自宅でシャンプーに取り組むことになりました。
飼い主さんは慣れないシャンプー作業と日々抜け落ちる被毛に不安と悲しい気持ちが募り、家族に迎えてから2カ月ほどは症状が進行する一方でした。
でも3,4カ月と治療を続けるうちに、背中、後肢と次第に産毛が生え揃うようになり、生後一年を向かえるころにはほぼ完治することが出来ました。
3歳になった今では全身がふわふわしたたくさんの被毛に包まれ、ブラッシングの大変さが笑い話になるほどです。
アカラスの予防には、健康的な生活と免疫力の維持が効果的な方法です。
アカラスの原因となるニキビダニを完全に駆除することが出来ないので、症状を発症しないように心がけてあげる為です。
健康的な生活を送るには適度な運動と日々の散歩が効果的です。食事は良質なタンパク質を含むドッグフードがオススメで、年齢や健康状態に合わせてサプリメントなども積極的に活用しましょう。
*このコラムは大谷幸代先生に記事を作成して頂きました。
【大谷幸代先生】
愛玩動物飼養管理士
青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー
学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。
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